表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー的な世界で愛を知る?-  作者: 漆沢刀也
【第五章:年下の男の子編】
92/190

第79話:綺麗なお姉さんは好きですか?

 明日から夏休みというその日、ソル達が学校から帰ると、ルトゥは屋敷に来ていた。

 居間に集まると、気恥ずかしそうに、彼は立っていた。

 ユテルより一つ年下という話だが、去年の今頃のユテルと比較しても線が細い印象をソルは感じた。


「うん。みんな集まったようだな。先日に説明したと思うけれど、いつまでという話は決まっていないが、我が家でこの子。ルトゥ=クォーメットと一緒に暮らすことになった。新しい家族だと思って、仲良くして欲しい」

「初めまして。ルトゥ=クォーメットです。これから、お世話になります。どうぞ、よろしくお願いします」


 おっかなびっくりといった様子だが、ルトゥは折り目正しく頭を下げてきた。

 そんな彼を見て、ソルは笑みを浮かべる。やっぱり実物を見るとより可愛いなあとか思う。リュンヌが言う「正ヒロインが絶対にしてはいけない顔」はしないように自重する。


「それじゃあ、順番に子供達を紹介するよ。まず、この子がソルだ。歳は17歳。俺達が言うのも親馬鹿だと思うけど、勤勉で特に薬学や商才に秀でている。本当に誰に似たんだと思うほどに出来が良い子なんだ」

「よろしくね。ルトゥ。仲良くしてくれると嬉しいですわ」

「はい。よろしくお願いします」

 微笑みを返してくるルトゥに、ソルは好印象を与えることに成功したと確信した。


「そして、この子がユテル。君の一つ年上のお兄さんだ。物作りが趣味で、大抵はこの屋敷の隅にある工作室に籠もっていることが多い。ソルの頼みで、薬作りの道具とかも作っていることが多いな。あと、その道具を知り合いとかにも配って、薬の量産にも一役買っているんだよ」

「おかげで、なかなか本命の研究に本腰入れられないんだけどね。まあ、その分資金には困らなくなったから、僕としても姉さんからの依頼は、ある意味で助かっているけど」

「本命の研究?」


「馬車での事故を減らす方法が無いかってね」

「馬が、好きなんですか?」

 ルトゥの質問に、ユテルはしばし押し黙った。


「うん。そうだね。馬は好きだよ」

 そして、彼は静かにそう答えた。

 この一年半、ソルは勿論、弟とも一緒に過ごしていた。本命の研究がそれだとは聞いていたが、馬が好きという情報は初めて聞いたとソルは思う。


「それから。この子がヴィエル。ルトゥ。君の少し年下だ。この子は、人と仲良くなる事が得意なんだ。知り合いも多くて、ソルが開発した薬の話とかを広めているんだ。それで、ユテルが作った道具を使った内職作りをする人も増えたり、薬を欲しがる人も増えているんだ。需要に対して供給も追いつかなくなってきたから、去年に新しく任じた騎士の領地では、薬の材料の栽培を頼むようになるほどだよ。騎士の奥さんは、妊娠中はそれで内職していたりもしていたし」


「最近はね? 化粧品とかに興味を持つ人が多いの。私は、単純にお姉様のことを自慢していただけなんだけど。何故か、こんな事になっちゃった」

 そう言って、ヴィエルがはにかんだ笑みを浮かべる。


「俺としても、これは結構注目していてね。地方の片田舎で、産業らしい産業も無かったけれど、ひょっとしたらこれでこの地方を豊かに出来るかも知れないって思っているんだ」

「そうなんですか」

 ルトゥは、ぎこちなく笑みを浮かべた。


「みんな。凄いですね。流石は、本家の人達だと思います」

 視線を落とすルトゥの肩に、エトゥルは手を置く。


「何、気後れすることは無い。この子達は、単に好きなことを一生懸命にやっているだけだよ。君は今、少し自信を無くして、自分を見失っているだけなんだ。自分が何が好きで、どうなりたいのか? 何をしたいのか? それをゆっくりと考えて、見つけていけばいい。そうすれば、結果は後から付いてくる」

「そうですか? そう、だといいな。そうしたら、父上も僕を認めてくれるでしょうか?」


「勿論だ。それこそが、君のお父さんの望みだよ。もし、彼が君を認めなくても、俺達が君を認める。君自身が、君を認められるようになる。今はまだ、そうは思えないかも知れない。けれど、いつかきっと、君が道を踏み外さない限りそうなるから、安心していい」

「はい。有り難うございます。エトゥル様」

 ルトゥの声が震える?


「ルトゥ? 泣いているの?」

「なっ!? 泣いてないよ?」

 ヴィエルの言葉に、彼は慌てて反論した。そんな彼を見て、ソル達は笑みを浮かべる。


「さて、最後にリュンヌ。リュンヌ=ノワールだ。この子は俺達とは血は繋がっていない。元々は修道院にいたんだけれど、当時の神父やシスターが老齢だったため、彼らに頼まれて引き取ったんだ。それからは、ソル達の側仕えとして、住み込みで働いて貰っている。真面目で素直な良い子だよ。勇敢だしね。ソルが出かけるときには、護衛も頼んだりしている。色々と頼りになるから、何かあったら遠慮なく頼み事をすればいい」


「よろしく。ルトゥ様」

「はい、よろしくお願いします。リュンヌさん」

 恭しく、リュンヌはルトゥに頭を下げた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 その後、自室にて。

 ソルはリュンヌを召喚した。


「――と、いう訳でどうすればあの子と仲良くなれるか教えなさい」

「何が、という訳ですか。全く、ご機嫌な顔をして」

 深く、リュンヌは溜息を吐いてきた。


「そりゃあ? 直に可愛い男の子の姿を見ることが出来たら、目の保養にもなるってものですわ」

「ああはい。そうですか」

 やれやれと、リュンヌは肩を竦める。


「何ですの? さっきからその態度。もう少し、やる気を出しなさいよ」

「いや? やる気出せとか言われても? 別に本気で攻略したいとかいう話でもないんですよね? というか、ソル様のキャラ崩壊が酷すぎて、僕の精神力がごりごり削ぎ落とされているんですけど?」

「私の何がキャラ崩壊だっていうんですの?」


「前に、ソル様はベリエが描いた肖像画に相応しい淑女であり続けようとしているとか何とか仰っていませんでしたっけ? 今のソル様、とてもそんな風には思えないんですけど? あの決意はどこに行ったんですか?」

 そんなリュンヌをソルは鼻で嗤った。


「リュンヌ? あなた、もう少し女というものを理解した方がよろしくてよ?」

「はあ?」

「女にはね? 色々な貌があるものなんですの。あれは、その一面に過ぎませんわ」

「そういう問題じゃねえよっ!?」

 天井を見上げ、リュンヌは吠えた。


「ああもう、つべこべと五月蝿いですわね。いいから、あの子と仲良くなれる方法を教えなさい。どうすれば、仲良くなれるんですの?」

「ああはい。分かりました。それはまあ、考えましたけど。そうですねえ。やっぱりあの年頃の男の子だと、年上の優しくて綺麗なお姉さんには、憧れを持つものだと思いますよ?」

 ほほぅ? と、ソルは頷く。


「だから、まずはそういう素敵なお姉さんアピールとして、何か困っていることが無いか相談に乗ったり、面倒を見て差し上げれば宜しいのではないかと思います」

「なるほどねえ」

 ソルの貌に笑みが浮かぶ。


「絶対に、その『でゅふ❤』っていう笑顔をルトゥの目の前でしたらダメですからね?」

 即座に、リュンヌからツッコミが入った。

リュンヌ「最近は、化粧品の開発と販売にも力を入れたんですね」

ソル「ええ。我ながら、良い出来だと思いましてよ」

リュンヌ「ソル様って化粧も上手ですよね。男の僕にはよく分からない世界ですけど。化粧をされると、やっぱり、少し違うと思います」

ソル「私が化粧で盛っているって言いたいんですの?」

リュンヌ「そうは言っていないですっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ