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ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー的な世界で愛を知る?-  作者: 漆沢刀也
【第四章:肖像画家編】
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第73話:届いて私の想い

 いよいよ、リュンヌ攻略作戦は最終段階を迎える。

 手応えはある。ソルは勝利を確信した。

 セリオがリュンヌにマドレーヌを作って贈る約束をしてからも数日、数回に渡って段階的にミッションは実行された。なるべく自然に、あの手この手でセリオはリュンヌと接触し、その度に彼女は彼に癒やしを与えていった。


 セリオの報告を聞く限り、彼女は勇気を出し、堅実にミッションをこなし、成果を出している。

 リュンヌの反応は、ソルが見た限りでは、一見するとこれまでと全く変わらないようにも見えるが。セリオの存在を知っている人間から見れば、彼女を意識している反応が隠し切れていない。

 放課後、告白の聖樹の近くで、セリオとソルが落ち合う。あと、数刻もすればリュンヌがここに来るはずだ。


「セリオ? 大丈夫ですの?」

 訊くと、彼女は首を何度も横に振った。

「ダメです。もう、さっきから心臓が痛くて」

 セリオは項垂れ、胸に拳を当てる。

 そんな彼女の両肩をソルは掴んだ。


「しっかりしなさい。大丈夫ですわ。きっと、上手くいきましてよ。だって、あなたはこんなにも頑張ってきたんですもの」

 告白の場に立ち会うなどというのは、少々野暮も知れないと、ソルは元々はここに来るつもりは無かった。けれど、セリオが勇気が欲しい。近くにいて欲しいと言うので、付き合っている。


 そう頼まれたら、これまでアドバイスを与えてきた人間としては、最後まで結果を見届けたいという思いもある。

「そう、ですよね。私、やるだけやったんですよね?」

「ええ、その通りですわ」


 今のセリオは、昨日にソルが分けた頬紅と口紅も使っている。軽くさした程度ではあるが、セリオの持ち味は決して殺さず、それでいてほんの少しだけ大人びた印象を引き出していると、ソルは思っている。

 この印象の変化は、彼女のまた別の魅力として、リュンヌの心を刺激することだろう。


「自信を持ちなさい。セリオ? あなたは、誰が見ても、可愛い女の子ですわよ」

「ありがとうございます。そう言って貰えて、ほんの少し、自信が付きました」

 セリオが顔を上げる。そして、ぎこちなく、はにかんだ笑顔を向けてきた。

 それに応えるように、ソルも大きく頷き、笑顔を返す。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 大樹に背中を預け、ソルは目を瞑る。

 足音が近付いてくる。リュンヌのもので、間違いない。

 穏やかに、ソルは恋の成就を祈った。我ながら、らしくない真似だとは思うが。たまにはいいだろう。今は、そんな気分だ。


「リュンヌさん。来てくれたんですね。ありがとうございます」

「うん」

「リュンヌさん。私、マドレーヌ焼いてきたんです。先日、約束したものです。食べて、欲しいです」

「うん。ありがとう。喜んで頂くよ」


「リュンヌさん。私は、前にも言いましたけど。本当にあの日、助けて貰って嬉しかったんです」

「うん。そうなんだね」

「私、今日はちょっと背伸びして、お化粧してみたんです。どうでしょうか?」

「うん。とてもよく似合っている。可愛いと思うよ」


「ありがとうございます。リュンヌさんにそう言って貰えて、本当に嬉しいです。私、男の人からはどう見えるのかなって不安に思っていたんですよ?」

「自信を持っていいよ。君は、優しくて素直で、可愛い女の子だから」

 セリオの笑い声が聞こえてきた。うんうんと、ソルは首を縦に振る。


「私は、リュンヌさんにどうやってお礼をしようかって、ずっと悩んでいたんですよ。だから、リュンヌさんとお話出来るようになって、それも本当に嬉しかったんです」

「そうなんだね。僕も、セリオと話をしていると楽しいよ」


「よかったあ。私も、リュンヌさんとお話ししていて、とても楽しいんです。愚痴を聞くことくらいしか出来ていないですけど。それでも、リュンヌさんの役に立っているんだって思ったら、それだけでも嬉しいんです」

「うん」

 そこで、会話が途切れた。


 ここがどういう場所なのか、リュンヌが知っているかどうかは、ソルは確認していない。けれど、告白されたことも多いようだから、リュンヌも今がどういう話なのかは、流石に見当は付いているだろう。


"リュンヌさん。私は、リュンヌさんの事が好きです。どうか、お付き合いしては貰えないでしょうか?"


 静かに、けれどはっきりとした声でセリオは愛を告白した。

今週はちょっと話の区切り上、短いので次話は来週の水曜あたりに投稿予定です。

忘れたりしなければ(汗)。

予約投稿という手もあるんですが、一応はtwiterも使っているので。

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