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ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー的な世界で愛を知る?-  作者: 漆沢刀也
【第三章:流浪剣士編】
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第43話:言えない言葉

 剣術大会まで、もう一週間を切ってしまった。

 これまでに逢瀬を重ねる毎に、リオンとの距離は縮められたと思う。彼に対して、よい印象を与えられたと思う。

 だが、ソルの心中は穏やかではなかった。何故なら、リオンと結ばれるための決め手が、どうしても考えつかないからだ。


 これだけやっても、リオンに告白したその時になって、断られる可能性があるというのは、悩ましい。

 いつの時代、どこの誰でも、告白して男女場結ばれるときには、そんな確実な話なんか無くて。それでも勇気を出して言うからこそ、尊いものだ。なんて、リュンヌは分かったように言ってくれているが。

 当人としてみれば、堪ったものではない。


 隣で、リオンが美味しそうに食べるにつれて、差し入れが減っていくのを眺めながら。ソルは切なさを感じる。

 腹ごなしの休憩も終われば、もう今日はソルがここにいる口実は無くなってしまう。つまりは、刻一刻とリオンと一緒にいられる時間が無くなっているのだ。

 いつまでも、こんな時間が続いてくれればいいというのに、残酷にも時の流れは止まってくれない。

 伏し目がちに、ソルは俯いた。


「ねえ? ソル? 少し、訊きたいことがあるんだけれど、いいかな?」

「え? ええ。勿論ですわ。何かしら?」

 ソルは顔を上げる。

 その視線の先には、リオンの不安そうな顔があった。


「うん。私の気のせいだったらすまない。でも、気になるんだ」

「何がですの?」

 躊躇いがちに、リオンは続けた。


「さっきもだけれど、私には最近、時折ソルが物思いに耽ったり、気分が沈んだりしていることがあるように見えるんだ。だから、ひょっとしてなんだけれど。悩み事とか、あったりするのかな?」

 ソルは首を横に振った。

「そんな。悩み事だなんて。そんなこと、ありませんわ」


「じゃあ。私と一緒にいて、退屈だったりとか、するのかな? それなら、気にしなくていいよ。私は、見ての通り剣一筋に生きてきて、女性にはどんな話をすれば楽しんでくれるのかもよく分からない男なんだ。これまでの差し入れでも、私は十分すぎるほどお礼をして貰ったと思っているから、無理に――」

「なっ!? 何でそんな話になるんですの? 私は、そんなこと全然思っていませんわっ!」

 聞いていれば、まるで自分がリオンのことを避けているかのように思われていたような話を言われ、ソルは慌てた。


 自分はこんなにもリオンのことが好きだというのに、どうしてそんな発想になるのか? 全く訳が分からない。

「私は、リオンさんと一緒にお話出来るこの時間をとても楽しい時間だと思っていますの。それが、どうして分かって下さらないんですの? とんでもない思い違いですわっ!」

 激しい剣幕で捲し立てると、リオンは目を丸くした。


「そ、そうかい? それなら、いいんだけど」

 少しだけ安堵したと、リオンは小さく笑みを浮かべた。

「でも、もしも本当に。何か悩んでいることがあったら、どんな小さな事でも言ってくれると嬉しいかな。私は、ソルに相談に乗って貰って本当に助けられたと思っている。だから、ソルに悩んでいるようなことがあったら、どんなことだろうと。力になりたいんだ」


 はっきりと、真っ直ぐな感情が伝わってくる。

 だからこそ、ソルの心は揺れた。

 しばし、押し黙る。

「そんなにも、私は何かを悩んでいるように見えるんですの?」


「気のせい。かも知れないけどね。でも、さっきも言ったけれど、ときどき辛そうな顔をしているように見えることがあるから。何か、あったんだろうかと。そう思ったんだ。先日も寝込んだし、心配なんだよ」

 ソルはリオンから目を背けた。

 囁くように、白状する。


「ただ、名残惜しいって。そう、思っているだけですわ」

「それは? 一体どういう?」

「私は、リオンとこうして一緒にいられる時間が、本当に楽しいんですの。けれど、剣術大会までもうあと一週間も切ってしまいましたわ。ですから――」

 そこまで言うと、リオンはハッとした表情を浮かべた。

 一方で、ソルもまた、言い過ぎたと後悔する。


「ごめんなさい。リオンを困らせるつもりは無いんですの。ただ、そのときを今から考えてしまって。ダメですわよね。まだ、日はあるというのに。それなのに、私ったら、そんな顔していたなんて」

「ソル。ごめん。つまり私が、君を悩ませてしまっていたんだね。そんなことにも気がつかないなんて、私の方こそ。本当に馬鹿だ」

 リオンは俯き、肩を震わせた。


「ソル。いや、ソル=フランシアさん」

 固い決意。途方も無く真剣な想いを込めた声が、リオンの口から出てくる。

 あっ。と、言う暇も無く、リオンに両肩を掴まれる。


「もしも私が、今度の剣術大会で優勝出来たなら。そのときは、是非ともあなたに聞いて欲しい言葉があるんだ。それを聞いてくれますか?」

 それは、つまり?

 ソルは声が出せなかった。ただただ、胸が痛いほどに締め付けられる。

 胸を両手で押さえながら、何度も何度も頷いて。そうして、掠れた声で「はい」と言えた。

リュンヌ「あーあ。リオンさん死亡フラグっぽいこと言っちゃいましたね」

ソル「そんな? リオンの命を狙おうとする輩が出てきますのっ!?」

リュンヌ「いや、ただの冗談ですから。本当に死んじゃったりとかはしませんよ。……多分?」

ソル「リオンは、私が守りますわ。たとえ相手が神だろうと、作者だろうとっ!(物凄くヤバい薬を取り出す)」

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