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ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー的な世界で愛を知る?-  作者: 漆沢刀也
【第三章:流浪剣士編】
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第41話:抑えきれない想い

前回の後書きにも書きましたが、カンセルには子供はいません。

設定ミスの修正残りがあったため、前回は少しそこを修正しています。

 その日、ソルは朝からベッドの中で涙を流していた。

 傍らでは、呆れ顔のリュンヌが立っている。


「よりによって、こんなときにっ!」

 悪態を吐きつつも、全身が痛くて重くて仕方ない。熱も出て頭がくらくらする。とてもじゃないが、身動きが取れない。なので、仕方なく寝込んでいる。

 恐らく、風邪だろうと思うが。こんな暑い時期に罹るなんて考えもしなかった。何か悪いものを食べた記憶も無い。


「リュンヌ? これ、すぐに治るんですのよね?」

「そうですね。ゆっくり休めばすぐに回復すると思いますよ? 流石に、今日一日は出歩かない方がいいと思いますけど」

「それじゃあ、今日はリオンに会えないじゃありませんのっ! 何とかしなさいよっ!」

 悲痛な声で訴えるが、リュンヌは首を横に振った。


「何ともなりませんよ。それに、その様子を下手にリオンに見せたら、幻滅されるかも知れませんよ。酷い顔になってますから」

「誰が不細工ですって?」

「そんな事言ってません。相当にやつれて見えるって言っているんです。目の下の隈も凄いし、顔色も悪い。よくもまあ、たった一晩でこうも変わるものだなって、ある意味感心しますよ」


「あなたねえ」

 精一杯に呪いを込めた視線をリュンヌに向ける。

「まったく。何で私がこんな目に遭わなければなりませんの? 神は私を虐めて楽しいの? ええ、楽しいんでしょうね。今頃この有様を見て大笑いしているに違いありませんわ。絶対に思い知らせてやりますわっ!」


「神が見ているか、ましてや笑っているかどうかは知りませんが。倒れた原因は全部ソル様にあると思いますよ?」

「何ですってえっ!?」

 リュンヌは嘆息した。


「ええとソル様? ちょっとお聞かせ願いたいのですが。最近、眠れてます?」

「ちょっと眠りが浅かったり、なかなか寝付けなかったりするわね。ついつい、リオンのこと考えて」

「ちなみに昨晩はどうでした?」

「徹夜よ。全く眠れなかったわ」


「何を堂々と、誇らしげに言っているんですか」

「リオンのことを考えていたら、おちおち眠って何ていられませんの。眠る時間の方が勿体無いですわ」

「ああそうですか。で? ちなみに、リオンの考えると、どんな気分になります?」


「幸せ一杯な気持ちで胸が締め付けられるような思いよ。いいわね。こう、恋しているっていう感覚」

 ほぅ。と、ソルは甘い吐息を吐いた。

「でも、どうすればリオンと両想いになれるのかって考えると、どれだけ考えても、考えが整理出来ないんですのよね。焦りが募って、そこは苦しいんですの」

「それで紙に頭の中にあるものを書き出そうとしても『好き』しか書けないってのも大概ですよね。紙一面に『好き』しか書いてないとか、これ他の人が見たら恐怖ですよ」


「あ、あなた見ましたのっ!?」

「『ちょっと自分でも書き出して考えてみる』って言ったきり、話がありませんでしたからね。で、ゴミ箱を見たら丸めて捨てられた紙があったのでつい、少しは相談の参考になるかと。すみません。さっきはああ言いましたが、僕もドン引きしました」

 回復したら、絶対に後で思い知らせてやる。この無神経野郎。

 ソルは固く誓った。取りあえず、ちょっとヤバめの薬の実験台を10回分くらいやってもらおうか。


「流石に他の人に見付かったらマズいと思うので、あれは僕の方で焼却処分しておきました」

「それはどうも」

 獰猛な笑みをリュンヌに返す。


「で、ここまで話をしたら、ソル様にも自ずとどうしてこうなったのか、原因はお分かりかと思いますが」

「全然分かりませんわ」

「おい、待てやこら」

 リュンヌは頭を抱えた。


「要するに。ソル様は今、言うなれば恋の病が相当に重症化しているんです。リオンのことを想いすぎて、精神的な負担に耐えられなくなってしまったんですよ。だから、もう限界だ休ませろって、体が悲鳴を上げているんです。ですから、ここは大人しく休んで寝ましょう。いや、本当にまさかと思いますが、恋の病をこじらせすぎて寝込む人とか、初めて見ましたよ。昔話の中だけだと思ってました」

「そんな事言われても、仕方ないじゃありませんの」

 拗ねた口調が漏れた。


「そうですね。仕方の無いことかも知れませんね。それだけ、好きになってしまったというんですから」

 リュンヌが、静かに柔らかい口調で言ってくる。

 さっきまでは小馬鹿にしていたような言い方だったくせに。


「リオンには、僕から伝えておきます。安心して下さい。悪いようには言いませんから。差し入れは、今からだとお茶くらいしか用意出来ないと思いますが」

 どうあっても、今日はリオンに合わせるつもりは無いらしい。

 沈黙を許可と受け取ったのか、リュンヌが踵を返す。


「ねえ、リュンヌ?」

「何でしょうか?」

「今日、私が行かなくて、リオンは怒ったりしないかしら? 約束を破ったって思ったりして、それこそ嫌いになったりしないかしら?」

 それが、恐くて仕方ない。


「大丈夫ですよ。リオンはそんなことで、絶対にソル様を嫌いになんてなったりしません。むしろ、これはいいチャンスになるのかも知れませんよ?」

「チャンスって?」


「リオンの性格上、恐らくソル様の容態の方を気に掛けるでしょう。あと、ソル様に会えないことで寂しいとか思ったりもするんじゃないですか? 恋愛ものにもよくあるパターンじゃないですか。会えない時間が、想いを募らせていくだとか、相手のことをどう思っているのか気付く切っ掛けになるとか」

「そ、そうね? きっと、そうですわよね?」


「はい。だから、安心してお休み下さい。ソル様。早く元気な姿をリオンに見せてあげるためにも」

「そうね。分かったわ」

 ソルは気を落ち着かせる香の準備をリュンヌに頼んで、目を瞑ることにした。

 リュンヌの言葉に、少し安心する。

リュンヌ「(それはそうと、夏風邪って馬鹿が罹るものらしいですよ?)」

ソル「何か思いまして?(ギロリ)」

リュンヌ「イイエナニモ?(汗)」

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