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ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー的な世界で愛を知る?-  作者: 漆沢刀也
【第二章:学友編】
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EX6話:ソルとお金

ソルがどうして視察とかしていたのかという、その説明です。

時期としては、学校が始まった頃ぐらいの話となります。

 それは、冬も明け春が訪れつつある、ある日のことだった。

 手にしたノートを閉じ。よし、とソルは頷く。


「リュンヌ。来なさい」

「はい」

 即座に、リュンヌが呼びかけに応じて自室へと姿を現す。


「ちょっとね。あなたに頼みたいことがあるのよ」

「はい。何なりと」

 恭しく頭を下げるリュンヌに、ソルは満足げに、にんまりと笑みを浮かべた。


「リュンヌ。私にお金を貸しなさい」

 途端、リュンヌは半眼を浮かべてきた。思いっきり、疑わしいと視線が訴えてくる。


「何ですの? その目は?」

「いえ、色々と言いたいことはあるんですが。お幾らくらいでしょうか?」

「あなたの全財産よ?」


「巫山戯たこと言わないで下さいっ!」

「私は大真面目よっ!?」

「尚更、質が悪いですっ!」

 やれやれと、ソルは肩を竦めた。


「リュンヌ? こんな格言を知っていまして?」

「何ですか?」

「『あなたの物は私の物。私の物も私の物』」

「正ヒロインが言っていい台詞じゃねえっ!?」


「五月蝿いですわね。貯め込んでいるんでしょ? この家を出てからもやっていけるように、積み立てているんですのよね? つべこべ言わずに出しなさいっ!」

 リュンヌは、食事や学費などはそのまま屋敷から出ているが、それとはまた別に、自立するための資金として幾ばくかの給金が出ている。


「だ、誰からそんな情報を?」

「情報源は明かしませんわよ? そんな馬鹿な真似。この私がすると思いますの?」

 リュンヌが呻き声を上げた。


「いやでも、そのお金は僕にとって迂闊に手を付けられないお金なんです。ましてや全財産なんて、そんな無茶苦茶――」

 ん? と、リュンヌが眉をひそめた。

「というか、ソル様、お小遣い貰ってますよね? この地方の学生にしてみれば、かなり裕福な額だったと思うんですけど」


 ソルは鼻で嗤った。

「全然、足りませんわ」

「ええ~? そんな大金、何に使うつもりなんですか?」

「まだ決まってませんわよ」

「『まだ?』」

 ソルは頷いた。


「リュンヌ? 金は力よ」

「それは否定しませんけど」

「『金があれば何でも出来る。何でも買える』。などと、言うつもりはありませんわ。けれど、お金があれば買えるものの方が、世の中圧倒的に多いんですのよ? お金は幾らあっても、困ることはありませんわ」

「それも否定はしませんけど」


「お金があれば、選べる選択肢が増える。打てる手が増える。お金さえあれば解決可能な問題に直面したとき、お金が足りない為に窮するなど。あってはならないのよ」

「そうそう、この世界でソル様の身にそんなことが起きるとは思えないんですけど?」

「しかし、万が一ということがありますわ」

 リュンヌは虚空を見上げた。


「ああ、なるほど。要するに心配なんですね。これも、前世のトラウマが絡んでいそうなことだけは分かりました」

 ソルは拳を握りしめた。唇を噛み締める。

 思わず、前世の記憶の端々が蘇った。


「ええそうね。色々とあったんですのよ。色々と」

 無論。敵はすべて叩き潰し、やり返してやったが。それでも、そこに至るまでに舐めた辛酸までが消えて無くなるわけじゃない。


「まあ、心配しなくても大丈夫よ。こういうのは、自慢じゃありませんけど、手慣れているんですの。私に全部任せなさい。大丈夫、大丈夫。絶対大丈夫だから、全部私に任せなさい。倍にして返しますから」

「うわぁ。全然、安心出来る台詞じゃない」

 こんなにも大丈夫だと言っているのに、何故かリュンヌは引いた。失礼な奴だとソルは思う。


「で? 一体、何をなされるおつもりなんですか?」

「投資と買収ですわ」

「投資と買収ですか」

 ソルは頷いた。


「お父様のところに上がっていく報告書とか、学校で拾った話から、この地方の大凡の経済状況は分かりましたわ。実際にこの目で視察に行く必要もあるでしょうけど、どこが有望株なのかは目星が付きました」

「まあ、適切な投資は地域の活性化にも繋がるので、悪いことではないと思うんですけど」


「とはいえ、私のお小遣いと貯金だけじゃ。その一歩を踏み出すのも難しいんですのよ」

「あれ? ソル様も自腹を切るんですか?」

「そうよ」

 だから、リュンヌにも協力を頼んでいるのだ。


「ひょっとして、計画とかってもうあるんですか?」

「ありますわ。確認します?」

「まず、最初にそっちから見せて下さいよ」

 ソルは計画を記載したノートをリュンヌに渡す。

 受け取ったリュンヌはパラパラと中身を確認していくが。


「真面目に考えて、勝算があるのならお金を貸すのは吝かではないですけど。ご家族には報告されるんですか? 出所不明のお金がソル様に流れているって知られたら、絶対に面倒なことになりますよ?」

「そうね。そこは、きちんと父と母に報告するわよ」

 ソルは、もうちょっと説明すればリュンヌが折れる気配を感じ取った。

ソル「金は力だ!」

リュンヌ「どこのゲームのキャッチコピーですかと」


BGM:ロマサガ3より『トレード』


ソル「『自社資金を出す』」

 ジャラジャラ(お金が積み上がる音)

ソル「『駆け引きをする』」

ソル 「根回し」

ソル 「スマイル」

ソル 「おもてなし」

ソル 「時代の風」

ソル 「席を立つ」

ソル 「悪い噂を流す」

ソル 「偽情報を流す」

ソル「『同盟からの資金』」

ソル 「北森の絆よ来たれ」

 ジャラジャラジャラジャラ(お金が積み上がる音)


リュンヌ「だからこれ、そういうゲームじゃねえからっ!?」


ちなみにソルちゃん、設定練りとかキャライメージを掴むために、この連載のプロトタイプ書いていたら。

信長の野望を始めやがりましたからね?

各地域の人口、食料生産量、兵力などの情報を纏め上げて。どうやって国を征服するかと戦略練って。

王子と結ばれたいために、国盗り始めるヒロインとか何なのさお前と。これ、そういうゲームじゃねえからと。

それに比べれば、大分大人しくなってくれたと思います(遠い目)。


あと、私用により明日は自動投稿やってみます。その次からは章が変わるので、2~3日ほど投稿休みます。自動投稿だと、章管理まではやれない気がするので。

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