表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー的な世界で愛を知る?-  作者: 漆沢刀也
【第二章:学友編】
21/190

第16話:相手を知る

 勝つにはどうすればよいのか?

 まず、相手を知ること。

 そして、己を知ること。

 そうすれば、百戦しようと負けることは無い。


 「この言葉で、本当に大切なのは『己を知ること』なんですけどね」と、リュンヌは付け加えていたが。

 ともあれ、戦いにおいて相手を知ることが大事というのは、確かだ。

 これまで、アプリル=ナシアのことは何も知らなかった。情報不足、分析不足。その上で戦おうとしていたのだから、負けるのは不思議ではない。


 だから、今度は知るのだ。アプリル=ナシアという少年のことを。

 それとなく、ソルはアプリルの情報を周囲に聞いてみたり、観察してみることにした。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 その晩、ソルはむくれた。

 ベッドの上に座り、枕を抱きかかえながら、リュンヌを睨み付ける。


「ダメじゃないですのっ!」

「いや、何がですか?」

「あなたの策のことですわ。今日一日、あの男の情報を集めてみましたけど、全然使えそうなものがありませんでしてよ?」


「アプリルのことですか? そんな、一日やそこらでそんな事言われても。というか、『使える情報』って、どんなものを期待していたんですか?」

「カンニングの疑惑とか、教師への賄賂とか、そういうものですわ」

 リュンヌが半眼を向けてくる。

「そんなもの。あるわけないでしょうが」


 チッとソルは舌打ちをして歯がみする。

「おかしいですわね。あんな凡夫風情が。不正の一つや二つ、やらなくてどうしてあの成績なんですの?」

「おかしいのは、ソル様の頭の中じゃないでしょうか?」

「何ですってっ?」


 衝動的に、枕をリュンヌに投げつける。

 彼には、余裕な態度でそれを左手で受け止められたが。

 軽く肩を竦めて、リュンヌが枕を投げ返してくる。


「ちなみに、実際にどうやって勉強しているのかとか、そういう話を直接、彼に聞いてみたりはしたんですか?」

 ソルは唇を尖らせる。

「別に、それはしていませんけど」


「それじゃあ、何も分からなくても仕方ないんじゃないですか? だってそうでしょう? これまでも、ソル様が興味を持った相手は、直接確認していたんでしょう?」

「まあ、そうなんですけど」

 他人の評価、何てものはあくまでも他人の評価だ。参考情報には成り得ても、最終的な判断を下すのは自分である。自分の目こそが、自分にとって最も確かな情報源だ。


「ひょっとして、恥ずかしいんですか?」

 にやりと、リュンヌが煽るような笑みを浮かべてくる。

「別に、そういう訳ではありませんわ」


 ただ、ちょっと。他の人間に見られて、変な詮索されないかと、そういうリスクが気になっただけだ。

 それだけだというのに、今まさにおかしな邪推をされるというのが、うざったい。

「ああもう、分かりましたわよ。直接、聞いてみますわ」

 これが、リュンヌの煽りにまんまと乗った形だと分かってはいたけれど。

リュンヌ「ソル様。何を見返しているんですか?」

ソル「今日一日、アプリルを観察した内容ですわ」

リュンヌ「ちょっと、見せて貰っても?」

ソル「まあ。いいですわよ?」


〇○時〇〇分:クシャミをした。

〇○時〇〇分:頬杖をついた。

〇○時〇〇分:●●と話をしていた。

〇○時〇〇分:トイレに行った。

〇○時〇〇分:トイレから戻って来た。

〇○時〇〇分:自分で自分の肩を揉んだ。

〇○時〇〇分:伸びをした。

〇○時〇〇分:目を指で押さえて疲れを取っていた。


リュンヌ「恐っ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ