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ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー的な世界で愛を知る?-  作者: 漆沢刀也
【第二章:学友編】
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第13話:邪魔者

ソルちゃんの学校にも中間試験の時期がやって来ました。

 学校が始まって、春も半ば。

 中間試験が迫ってきた。

 成績如何によっては、よりよい就職。あるいは進学といった立身出世の可能性も拓ける。とはいえ、それも狭き門のため、多くの学生にとっては関係の無い話だが。

 だが逆に、良い家柄に生まれた者にとっては、それこそが家柄を支える要素の一つだ。人の上に立つ宿命を背負った身として、少しでも良い成績を残せるように励む者もまた、少なくない。


「今更なんですが少しだけ、意外ですね」

「何がですの?」

 夜。机に向かいながら、ソルは明日のテストに備えて復習を行う。念入りに、漏れなく授業で学んだこと。あるいはそれ以上のことを確認する。


「いえ、日頃から前世の知識もあって、勉強なんて余裕綽々といった態度を取っている割には、いつもこう勉強熱心といいますか。努力家ですよね。ソル様って」

 ふん。と、ソルは鼻を鳴らした。


 リュンヌは、彼に頼んでおいたホットミルクと菓子を机に置く。

 毎晩、というわけではないが、割と頻繁に彼にはこうした頼み事をしている。単純に疲れを癒やしたいというのもあるが、少しは気分転換にもなる。


「勉強、お好きなんですか?」

「別に? そういう訳ではありませんでしてよ?」

「にしては、根の詰めすぎではありませんか? ソル様なら、そこまで勉強に励まなくても、優秀な成績を取れると思いますが?」


「でしょうね。それだけの自信はありましてよ」

「では何故?」

 冷ややかに、ソルはリュンヌに視線を返した。


「その油断に、足元を掬われるつもりはありません。ただ、それだけですわ。僅かな油断が身を滅ぼした例など、歴史に多くありましてよ?」

「いや、たかが中間試験に大袈裟すぎやしませんかね?」

 リュンヌは半眼を返してくる。

 ソルは嘆息した。まあ、所詮言っても分からないだろう。何事も、疎かにする者は、それ故に道を拓けない。凡夫にその志を分かれという方が無理か。


「ひょっとして、飛び級進学でも狙っているんですか? 確かに、王都とかにいる人達に近付くには、その方が早いとは思いますけど」

「そうね。それも少し考えているわ」

 ソルは首肯する。


「けれど、それ以前に知らしめておくべきだと思うのよ」

「何をですか?」

「この学校の、誰が最も優秀な者なのかっていうことをね」

 ソルはにたりと笑みを浮かべた。

 リュンヌは呆れたように、額に手を当てたが。


「いやだから、なんでこう。あなたはそういう、正ヒロインが絶対やっちゃ駄目な顔をするんですかね?」

「五月蠅いですわね。そういうリュンヌの方こそどうなのよ? そんな顔して、実は隠れて滅茶苦茶勉強していたりするんじゃありませんの?」

「してませんよ。まあ、流石にあまりに酷い成績にはならない程度には、ちゃんと勉強してますけど。ソル様には負けますって」


 そう言ってリュンヌは苦笑を浮かべる。

 そんな彼に対し「本当に本当なんでしょうね?」と、ソルは疑いの目を向けた。

 試験前の「自分は勉強してないから」という奴ほど、信用ならないものだとどこかで聞いた気がする。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 中間試験の結果発表。

 結果を眺めるソルは、拍手に包まれていた。


「流石ですわソル様」

「凄いですわソル様」

「ソル様って、本当に頭が良いんですのね」


 取り巻き達に祝福されているが、その声はどこか遠くに聞こえた。

 結果は、二位。

 ほぼ、満点の成績だった。しかし、僅差でその上がいた。


 名前は、アプリル=ナシア。

 聞き覚えはある。ただ、興味が無かった名前だ。自分とろくに接点の無い、有象無象に埋もれた一人。

 無表情に、ソルは彼の姿を探した。そして、見つける。


 遠巻きに、彼は結果を眺めていた。

 如何にも農村で生まれ育ったという見窄らしい姿を晒しながら。


「ソル様、どうしたんですか?」

 町長の娘が訊いてくる。

 ソルはにこりと微笑んだ。


「いいえ、何でもありませんでしてよ」

 アプリル=ナシア? 次は無いと思いなさい。

 ソルは決意を心の奥底に深く刻み込んだ。

リュンヌ「二位じゃダメなんですか?」

ソル「そんな弱気な根性で、勝ち残っていけるかあっ!!」


ソル「よしんば私が世界二位だとしたら?」

リュンヌ「世界……一位です」

ソル「……(むふ~っ!)」

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