第11話:初めての学校
今回から、恋愛対象攻略(?)に入ります。
まあ、まずは学校の様子からですが。
2025/09/09
イラストを入れました。
ソレイユ地方の長い冬も終わった。
ちらほらと雪が舞う日もあるので、終わったとは呼びきれないかも知れないが、雪かき以外の活動に大きくリソースを費やせるようになったのは間違いない。
そして、学校に行くことになった。
前世では、学校に通うということは無かった。少年少女の学びの場として、国は用意していたが、それは主に平民や下級貴族が学ぶための場所となっていた。
禁じられているわけではないが、公爵令嬢だった頃の身では、家庭教師によって知識を学んだ。同等の身分の者には、相応の格式の学舎に通ったという者もいたが。このような地方に、そんな格式ある学舎もあろうはずが無い。
馬車に揺られながら、学校へと向かう。馬車の中には、ソルの他にリュンヌ、そして弟のユテルと妹のヴィエルも乗っている。
弟のユテルは、何かと工作用の部屋に引き籠もるところは変わっているが、基本的には物静かな少年だ。話をすると友好的な返事は返してくれるが、少し距離感も感じる。性別が違うのもあり、弟というのはそういうものなのだろうか。両親に訊いたら、「あの子は昔からこんな感じだ」と言っていたが。
妹のヴィエルはユテルとは反対に、何かと姉様、姉様と引っ付いてくる。自分にくっついてきて何が楽しいのか分からない。不快感は感じないが、正直どう接していいのか分からず、少し困る。自分でも悪い気は、していないと思うのだが。
ただまあ、冬の間に屋敷の中で過ごすうちに、少しは彼らとの付き合い方も慣れたと思う。どうにも、この生温さが、かえって居心地悪さを感じて仕方ないけれど。
目の前に座るユテルは無言で、窓の外から街並みを眺めている。
彼の隣に座るヴィエルは、何が楽しいのかニコニコと笑みを浮かべていた。
ただ、リュンヌも一緒に登校するというのは、少し意外だった。側仕えとしても、自分達と一緒に行動した方が都合が良いというのは、分かると言えば分かる話だが。
ソルは小さく溜息を吐く。
せいぜい、退屈しない場所であって欲しいものだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
この、街にある学校は周辺の村々にいる子どもも通っている。そのため、数十人を一クラスとしたクラスが、一学年に複数ある。学年の子どもの数によって、クラスの数は異なるが。
そして、進級する毎に、人間関係が固定化しないように、縁を広げられる機会を与えられるようにと、均等に入れ替えられる。
そのため、教室の少なくない割合の人間が、初対面だったり、あるいは数年ぶりに同じクラスになるという具合のため、まずは各自の自己紹介をすることになった。
ちなみに、リュンヌとは別のクラスに分かれることとなった。
ソルは自席から立ち、教室にいる面々を眺め回した。
唇を吊り上げ、笑みを浮かべる、
「ソル=フランシアですわ。このソレイユ地方を治めるエトゥル=フランシアの娘でございます。この私に近付きたいという者がいれば、私は拒みませんわ。歓迎致しましょう。これから、よろしくお願い致しますわね」
優雅に、ソルは頭を下げた。
このような有象無象に頭を下げるのは、少し不愉快だが。それは心の奥に仕舞う。ある意味、施しをくれてやっているのだと思えば、我慢ならないほどではない。
やるべき事の優先順位は、間違えてはいけない。
優先すべき事は「敵を作らないこと」と「使える人間を味方に招き入れること」だ。学校という空間は初めてだが、人が群れている場所である以上、その反応はどこも大して変わりはしないだろう。
「領主の娘」という肩書きによるものか。教室がざわめく。そのざわめきは、心地よい。
顔を上げる前に、小さく、ソルはほくそ笑んだ。
ソル「ただの人間には興味ありませんわ。この中に王位継承権の保有者、大企業の子息、大物政治家の子息、天才的軍略家がいたら私の前に来なさい。以上!」
リュンヌ「いる訳ねえだろっ! つか、ネタ古いですっ!」
なお、作者はこの作品についてはこれくらいしかネタ知らない模様。