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ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー的な世界で愛を知る?-  作者: 漆沢刀也
【第一章:転生編】
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EX5話:ヴィエル=フランシア

 今生での妹の名は、ヴィエル=フランシアといった。

 リュンヌにも説明されたが、10歳だそうだ。見た目は、母であるティリアが子どもだった頃は、こんな感じだったのだろうという、そんな見た目だ。髪質は父を受け継いでいるのか、自分の髪よりもやや赤みが強く明るい。そして、癖が無い。


 この妹はユテルとはまた違った意味で、どう付き合ったものか悩む。

 人物評価としては、父や母と同様に、とりわけ目立った何かを感じるものは無い。

 年相応に、如何にもあの両親から愛情を受けて育ちましたと言わんばかりに、恐れを知らず、愛情を疑わずに快活に振る舞っている。


「お姉様。一緒に遊びましょうっ!」

 遊戯盤を抱えて、ヴィエルが自室を訪れた。

 時間帯は決まっていないが、一日一回はこうして、昼から夜のどこかのタイミングで、構ってくれと寄ってくる。

 悪い娘ではない。謀略や悪意とは無縁の精神をしているのだろう。


 そして、そんな娘が何が楽しいのか自分に懐いているようなのだ。こっちは、精神性が違いすぎて、理解が出来ないというのに。

 何というか、調子が狂う。


「そう。今日は、何をして遊びたいのかしら?」

 邪険にする理由は無い。しかし、乗り気という訳でも無い。

 それは、そのまま、落ち着いた声色として口から出た。


「はいっ! 今日は、これで遊びたいですっ!」

 ヴィエルが抱えていた遊戯盤を見せてくる。

 この地方では、冬を過ごすためなのか、屋内で時間を潰すためのボードゲームやカードゲームの類いが多いらしい。これまでにも、彼女は様々なゲームを持ってきた。


 今日、ヴィエルが持ってきたゲームは、ある種の領地拡大ゲームだ。今回は二人で行うが、4人までなら同時に遊ぶことも出来る。要素は大きく分けて「人」「物」「金」。そして「サイコロ」だ。

 最終的には、最初にサイコロを振って決めたターンが終わった際に、「金」を一番多く持っている人間が勝利者となる。しかし、その一方で、「金」を生み出すにはまず「金」を使って「人」をボードに配置し、「人」を使うことで更に効率よく「金」を生み出す「物」を配置する。


 ここで、何を配置するかはプレイヤー次第だが、どれだけ配置出来るかはサイコロの目に委ねられる。ボード上でユニットが隣接すれば、そこで「金」を使い買収を仕掛ける事も出来る。成功の可否は「金」と「サイコロの目」を掛けた値で決まる。

 ルールはそれ程難しくも無いが、戦略性と運によって勝負が決まる。


「構いませんわ。では、居間に行きましょう」

「はいっ! お姉様」

 自室には、このようなゲームをするようなテーブルが無いのだ。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 むむむむ、と唸りながら。ヴィエルがサイコロで使用可能となった割り当てから、ユニットを選びボードに配置する。

 勝負は五分五分。だからだろうか、余計に一生懸命に知恵を絞っているように思える。

 その一方で、ソルは平然とお茶を啜っていた。

 手を抜いているつもりも無いが、本気でやっているかというと、そうでもない。それが、余裕となって現れていた。


 戦略はいくつか考えている。基本は堅実な路線だが、上手く事が進んだ場合と、そうではない場合。どう転んでも投了には至らない、大まかな計画は既にあるのだ。

 だから、後はその計画に従って、淡々とターンを消費していけばいい。

 悩んだ挙げ句のヴィエルの手もまた、予想の範疇だ。ソルはサイコロを振り、出目を確認。これは、堅実路線を続行していけばいい。

 迷うことなく、ソルは次の手を差した。


 ヴィエルが表情を歪める。実に表情豊かな娘だ。まさか、これで詰みということもあるまい。まだまだ、彼女の立場から見れば勝機はある。なかなか、こちらに与えられる決定打を見つけられなくて、それがもどかしいように思える。

 またもヴィエルが考え込む。それを急かすつもりは無い。こうしていれば、自分も自分で戦略を練ることが出来るのだから。


 ぼんやりと、彼女を眺める。

 自分には、こうして誰かと遊んだ記憶というものは、ほとんど無い。そんな自分が、今になってこのような真似をしているというのが、奇妙に思える、

 自分は果たして、ちゃんと遊んでいるのだろうかと。


「お姉様、どうかしましたか? 次はお姉様の番ですよ?」

「え?」

 言われて気付く。少し、ぼうっとしていたらしい。


「ごめんなさい。少し、考え事をしていましたわ」

「次の手ですか?」

 ソルは苦笑を浮かべた。確かに、それもあるのだが。


「いいえ、そうではありませんわ。ヴィエルは、本当にこういう遊びが好きですのねと。そんなことを思っただけですわ」

「お姉様は、ひょっとして楽しくありませんでしたか? 私、お姉様のご迷惑でしたか?」

 上目遣いで、ヴィエルが見上げてくる。

 その仕草は実に庇護欲を掻き立てるような代物で。なるほど、こういうのに弱い殿方が多いと聞くのも、少し納得した。


 ソルは首を横に振った。

「そういう訳ではありませんわ。でも、私はどういう遊びが好きなのか、考えてみたらよく分かっていなかったかも知れませんわね。そういうことを色々と考えていたんですわ」

 何しろ、経験が無いのだから。


「じゃあ、今度からは私、もっと色々なゲームを選んできます」

「それは、どうして?」

「そうしたら、お姉様がお好きなゲームが見付かるかも知れないじゃないですか」

 そんなにも遊ぶ時間が、本当に取れるのかとは思うのだが。


 ソルは小さく笑った。

「分かりましたわ。好きになさい」

 慣れないだけで、別にこういう時間は不愉快ではないのだから。

妹との平和な一時。

家族とかの情報も出したので、次回から攻略(笑)へと話が展開していきます。

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