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ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー的な世界で愛を知る?-  作者: 漆沢刀也
【最終章:王太子編】
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第123話:ソルの願いとアストルの約束

投稿間隔が空いて済みませんでした。

リアルが忙しいというのもありますが、AIに挿絵を描かせていたというか、そのための学習とか色々やっていたら、のめり込んでいた感じです。

2024/04/20現在。1話、3話、EX12話、EX13話、114話にAIに描いて貰った挿絵を入れています。

追加挿絵のリクエストとか、もしありましたら歓迎です。出来る限り、応えてみたいです。

 ソルが王都の学校に転校してから一週間と少しが過ぎた。

 差し当たって、この学園に入学してからまずやるべきことは何か?

 この先、アストルとお付き合いする以上は、彼に相応しい女性として存在感を周囲に知らしめることは最優先事項だ。


 また、同時に情報の収集網も築き上げなければいけない。

 地元で通っていた学校では、領主の娘というだけで、特に何もしなくても存在感は出すことが出来た。一方で、人付き合いはそこそこに、自由に自分の脚で情報収集をすることが出来た。また、リュンヌという有能な協力者もいた。


 しかし、ここではそれは出来ない。存在感については、家柄で勝負は出来ない。協力者はいない。

 ただまあ。それならそれで、やりようはある。そう、ソルは考えている。


 幸か不幸か、ソルとアストルの関係については早々に噂になった。ソルもアストルも、今のところはまだ明言はしていないが、図書館で仲睦まじく勉強している姿を見せていることもあり、噂はほぼ確信に変わっているものと思われる。

 それだけで、話題の中心であり存在感は示せていると言える。折を見て、公言するつもりではあるが。


 次に、存在感に相応しいだけの力量を伝播させるという話だが。

 そちらもまた、勉学という分かりやすいツールがある。アプリルには敵わないまでも、日々の授業で実力を見せ付けていけばいい話だ。

 それと、曲がりなりにも事業を興しているというのも、大きなアドバンテージであった。取り扱っている薬や化粧品、ビジネスの思い出など、クラスメイト達には興味深い点が多い。


 つまりは、話題には事書かないということだ。結果、ソルの周囲には、彼女に興味を持つ人間が多く集まることになり、彼女らから色々と話を聞くだけで、学校のあちらこちらの情報を仕入れることが出来る様になった。

 無論、情報の裏取りは欠かせないが。

 勢力として、急拡大はするつもりは無いが。エリアナを始めとした生徒会に変な横やりを入れにくくする。あるいは、横やりが入っても自衛出来るだけの力を身に付ける。それが、ソルの狙いだった。


「何ていうか。ソルさんって凄いですよね」

「何がかしら?」

 図書室でリコッテから言われ、ソルは笑みを浮かべる。とはいいつつ、リコッテが何を言いたいのかソルには既に検討が付いている。


「何がって、もう沢山の人達と知り合って。すっかり、有名人じゃないですか。しかも、悪い噂も無くて、学校に溶け込んで」

 案の定、リコッテの称賛はその件についてだった。


「そんな、恥ずかしいですわ。私はただ、何とかここでもやっていけるように、少しでもここやみんなのことを知りたいって、そう思って話を聞いただけですのよ」

 気恥ずかしい素振りをソルは見せた。内心では、当然だと思っているが。


 もっとも、それを行動に移せるかどうか? それも、的確に、かつ戦略的に。それが明暗を分けるのだとソルは理解している。

 ある意味では、これは誰もがやろうと思えば出来る真似かも知れない。しかし、誰もがやろうとは思えない真似なのだ。


「ソルが、こんなにも早く学校に馴染んでくれて、私も嬉しく思うよ」

 笑みを浮かべ、そう言ってくるアストルに、ソルもまた笑みを返した。

 この人がこういう笑顔を浮かべてくれるのなら、意識して動いた甲斐はあった。そう、思える。

 後は、この状況で下手な手を出してくるほど、エリアナが愚かではないことを祈りたい。望んでいるのは、愛する人と過ごす、こうした穏やかな日々。ただそれだけなのだから。


「ところで、ソルは医学や薬草学、農学が好きなのかな? 授業を除けば、そういう本を読んでいることが多いように思うけれど」

 アストルが訊いてくる。それに対し、この人はそんなことまで気付いてくれていたのだと、ソルは嬉しく思う。

 ソルが今手にしているのは、かつてソルがアプリルから盗んだ百科事典のシリーズにある、薬草学の本だった。


「そうですわね。気付けば、地元でこっち方面の事業を興すようなことになってしまったというのもありますけれど。それで、少しでも新しい知識を手に入れることが出来たらって思いましたの。実家の蔵書にはない本も揃っていて。特に、地元とは違う植物の知見が多く手に入って、興味深いですわ」

「ソルさんって。本当に研究熱心なのね。何が切っ掛けで、そこまで薬学や医学に興味を持つようになったの? やっぱり、故郷を少しでも豊かにしたいとか、そういう思いからでしょうか?」

 リコッテの問いに、ソルは曖昧に笑った。


 本音を言えば。少しでも長く生き延びるため。ただ、それだけが切っ掛けだった。毒殺を恐れ、それに対抗する手段を手に入れる。または、敵に盛る毒を用意するためだった。とはいえ、そんな切っ掛けで始めたことでも、今は面白さを感じているとは思う。

 少し、間を置いて答える。


「――そんな、立派なものではありませんわ。本当に、ただ単に個人的に疲れを取りたかったからとか。黒い悪魔をこの世から消し去りたかったからとか。そんな事が理由ですの」

「ソルさん。本当にあの黒い虫は大嫌いなのね」

「想像するだけで怖気が走りますわ」

 思わず冷え切った声を出しつつ、ソルは身を抱いて震えた。


「それじゃあ、今度は私の方から聞いてみたいのだけれど。ソルは何か、そういった参考書を読んで、新しく試してみたい薬草とか、あったりするのかな?」

 アストルの問いに、ソルは苦笑する。


「ちょっと、気になるものは幾つかありますわね。今はそういう事のために、自由に使える場所は無さそうなのが残念ですけれど」

 ちなみに、ソレイユにいた頃は台所や、離れに用意させた小屋の中で実験を行っていた。

 しかし、寮の台所や学校の実験室をそんな理由で占拠するわけにもいくまい。


「なるほど」

 アストルはしばし、虚空を見上げた。

「なら、ソルの都合が付くなら、王城に来てはどうだろう?」

 アストルの提案に、ソルは目を丸くする。


「どういうことですの?」

「ああ、説明が足りていなかったね。すまない。城の敷地内には、それなりに広い森や池とかもあるんだ。遠出が出来ないまでも、自然を感じられるようにね。だから、もしもソルがよければ、その森や池で使えそうな草花があれば探して採集してくれればいいし、小屋を用意して、そこを研究や実験に使ってくれたらいいと、そう考えたんだ」

「そんな? いいんですの?」

 アストルの説明に、ソルは表情を輝かせる。アストルは深く頷いた。


「城の人間達に話をしないといけないから、まだ確約は出来ないがな。でも、少なくとも頼んではみるし、聞いて貰える可能性は高いと思っている。何代か前に、そういう研究者気質な人も王族にいたようだからな」

「ありがとう。アストル」

 半ば諦めていた悩みが解決出来そうで、ソルは感激する。


「ふぅん? なるほど?」

「な、何だ?」

 勉強に同席していたアプリルが含みのある視線をアストルに向けた。それを受けて、アストルが微かにたじろぐ。


「いやぁ? 上手くソルと近付く口実を作るものだなあって。感心しただけだよ。僕も参考にさせて貰おうかなって」

「う、煩いぞ」

 今度こそ、顔を赤らめてアプリルから目を背けるアストルを見て、ソルは口に手の甲を当て、くすりと笑う。可愛い人だと思った。


「でしたら、もしアストルがよろしければ。私の薬草採集にも、付き合っては頂けませんこと?」

 ソルの申し出に、アストルははにかむ。

「うん、そのときは喜んで一緒に行かせて貰おう。私も、なるべく早く環境を整えるようにするから」

 晴れて、初デートの約束が成立した。ソルは早々に、その日がくるのを楽しみに思った。

ソル「王城に自然を堪能出来る場所があるって素敵ですわ」

リュンヌ「何でも、書いている人は日本の皇居を参考に考えたそうです」

ソル「え!? それって、かなりガチなやつでは??」

アストル「猪や熊もいるぞ」

ソル「いるんですの!?」

アストル「はっはっはっ。冗談だ」

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