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ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー的な世界で愛を知る?-  作者: 漆沢刀也
【最終章:王太子編】
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第122話:エリアナに対する評価

 生徒会室を出て、ソルは真っ直ぐに図書室へと向かった。

 図書室に入ると、アストル、アプリル、リコッテの姿は直ぐに見付けることが出来た。


「ごめんなさい。遅くなりましたわ」

「アプリル達から、生徒会に呼ばれたと聞いたよ? 何かあったのか?」

 アストルから訊かれ、口元に軽く人差し指を当てて、ソルは虚空を見上げる。どう説明したものか、考える。


「そうですわね。一言で言えば、私とアストルのお付き合いについて、話がありましたわ。私とアストルが本当に付き合っているのか? もしそうなら、くれぐれも学校の風紀を乱さない、健全なお付き合いをするようにしなさいって。あとは、味方に付けておいた方が有益になるだろうからって、生徒会への勧誘。そういう話ですわね」

「私とソルのことが、もう耳に入ったという訳か。流石はエリアナ。耳が早いな」

 どこか感心するように、アストルは苦笑を浮かべる。


「生徒会長とお知り合いなんですの?」

 ソルの問いに、アストルは頷く。


「エリアナから聞いていなかったかい? あの子は、ジェルミ公爵家の娘で、私にとっては幼い頃からよく知っている相手なんだ。だから、ソルの事が気になったんじゃないかな?」

「そうみたいですわね。というより、アストルが心配になったという方が正しいかも知れませんけれど」


「そうだね。エリアナにしてみれば、確かにそうかも知れない。後で、私の方からも心配しないように伝えておくよ。どうやら、私が言わなかったせいで、エリアナにもソルにも迷惑を掛けてしまったようだ。すまない」

 だから、安心してくれと。そう、アストルはソルに微笑む。


「そういえば、月婚の儀にもエリアナは来ていませんでしたわね。幼い頃からのお知り合いなら、招待しても良かったんじゃありませんの?」

「いきなりああいう場で、ソルにとって見ず知らずの相手と会わせるというのも、負担かと思った。それに、エリアナだけを喚んだら他の貴族達には変に裏読みされそうだからね。じゃあ、公平に、他の貴族まで喚べるかというと、それは流石に大袈裟すぎる話になってしまう」


「まあ、確かに?」

 アストルの説明に、ソルは納得する。となると、そういうしがらみが薄いアプリルやリコッテくらいしか、彼には気軽に呼べる相手はいなかったということだ。

 と、アストルは片目を瞑る。


「それに、何よりも、私も少しだけ、ソルとの関係を秘密にしてみたかった」

「その答えが、一番嬉しいですわ」

 悪戯っぽく笑うアストルに、ソルは機嫌良く笑みを返す。


「さっそく、惚気ているね」

「わ、私達も、こう見えているのかしら?」

 苦笑交じりのアプリルの声と、照れくさそうに言ってくるリコッテの声に、ソル達は我に返る。少しだけ、顔が熱くなった気がした。でも、悪くない感覚だ。


 アストルが咳払いをする。

「そういえば、生徒会に勧誘されたとも言っていたけれど。ソルはどうするつもりなんだ?」

「ああ、それなら、お断りしましたわ」

 あっさりとした口調で、ソルは言った。


「え? どうして? 折角の、生徒会からのお誘いなんですよ?」

 意外だったのか、リコッテが目を丸くして訊いてくる。

「だって、生徒会に入ったら、こうしてアストルと一緒にいられる時間が減ってしまうじゃありませんの」

 至極当然のことを言ったつもりのソルに対し、リコッテは「確かに」と誤魔化すように笑った。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 その晩。ソルはリュンヌを自室に喚んだ。

「――とまあ、今日はそんな感じでしたわね」

 ふむ? と、リュンヌは顎に手を当てて小首を傾げる。


「概ね、学校生活順調そうですが。そのエリアナに目を付けられたかも知れないっていうことでしょうか?」

「『かも知れない』。じゃなくて、確実に目を付けられましたわね」

 ソルは断言する。

「まあ、確かに? ソル様がそう言うってことは、その可能性は大なんでしょうけど」

 リュンヌは軽く呻いた。

「ソル様? 大丈夫ですか?」


「あら? 心配してくれるんですの?」

「悪いですか?」

「いいえ? 嬉しくてよ」

 くっくっとソルは小悪魔っぽく笑う。


「まあ確かに? アストル達と別れてから、リコッテにはエリアナや生徒会のことを聞いてみましたけれど。それなりに、学校を掌握しているのは確かみたいですわね」

 あくまでも噂に過ぎないが。選挙では対抗馬を蹴落とすために色々と工作をしていたとか。そういう黒い噂もあるようだ。


 それを抜きにしても、アストルとの関係を早々にキャッチするあたり、情報網の構築は済ませていると考えていいかも知れない。

 そして、ほとんどの生徒が学校生活をつつがなく過ごせるように運営しているあたり、その手腕も確かなものだ。アストルからもそうだが、他の学生達からの信頼は厚い。


「でも? そんなに心配しなくても、大丈夫ですわ」

「どうして、そう言い切れるんですか?」

「もし、何かをやるとして。私に言わせれば、大したことは出来ませんわ」

「何か根拠が?」

 リュンヌの問いに対して、ソルは大きく唇の端を持ち上げ、邪悪な笑みを浮かべた。


「この私を誰だと思いまして? そういった策謀は、それなりに知識と経験がありますの。初手から? 数を頼りに圧をかけたつもりだなんて、可愛らしいものですわ。ええ、ちょっとした、暇潰しにはなるかも知れませんわね」

 リュンヌは大きく嘆息する。


「それを聞いて、僕は逆にエリアナって子が心配になりました。ソル様?」

「大丈夫ですわよ。ちゃんと、手加減してあげますってば。前世のような結末は、私だってご免ですわよ」

 ひらひらと手を振って、ソルは答える。


「それよりリュンヌ? あなたに、ちょっと訊いてみたいことがあるんですの」

「何でしょうか?」

「学校の風紀に抵触せず、アストルに引かれない程度のお付き合いって、どのくらいまでなら許されるかしら?」

「はあ?」

 ぽかんと、リュンヌが口を開ける。


「流石に。リュンヌが隠し持っていた本のような? 放課後の教室であんなことやこんなことまではするつもりはありませんけれど」

 肩をすぼめ、頬を赤らめつつ俯いて、ソルはもじもじと身をよじらせた。

「もう、本当に勘弁して下さい」

 そんなソルに対し、リュンヌはがっくりと肩を落とした。

すみません。私用のため半月ほど更新が滞るかも知れません。

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