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ソルの恋 -悪役令嬢は乙女ゲー的な世界で愛を知る?-  作者: 漆沢刀也
【第五章:年下の男の子編】
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第96話:無謀の先

 ソルはリュンヌを自室へと喚んだ。

 思いっきり、彼を睨む。


「あなた、いったいどういうつもりですの?」

「どういうつもりも何も、見たままですよ。ルトゥから決闘を申し込まれたので、受けて立つことにした。それだけです」

「ああもうっ!」

 苛立たしいと、ソルは嘆息する。


「そうじゃなくて。どうしてそんな話を受けるんですの? 子供の言うことでしょ? 受け流しなさいよ」

「お言葉ですが。彼はもう、子供ではありません。青臭いながらも、一人の男です。ソル様がそんな扱いをするからこそ、彼はソル様に認められようと、こんな真似をしでかしたんですよ。男の誇りに懸けて。言葉でどう言っても、止められませんよ」


「どうかしら? 剣術の練習を控えるように伝えるように頼んだけれど、そのときにあなたが変なことでも言ったんじゃありませんの?」

「心外ですね。僕は誓って、あくまでもソル様が心配していたということしか話していません」

「じゃあ、何て言ったんですの? 言ってみなさいよ?」


「『ソル様が君のことを案じておられる。剣術の練習を止めろとは言わないけれど、出来ればもう少し控えて欲しいと考えておいでだ』と伝えました。お疑いなら、ルトゥに確認されても結構です」

「分かりましたわ。そこまで言うなら、信じて差し上げますわ」

 元々、自分からは言い出しにくくてリュンヌに頼んだ話である。ここで、ルトゥにあれこれ言ったり聞いたりしても、かえって拗れかねない。なので、ソルはそれ以上の追究はしないことにした。


「それじゃあ。決闘はどうするんですの? まさか、本気で戦うとか言いませんわよね?」

「言いますよ? 勿論、全力で叩き潰します」

「リュンヌっ!」

 小揺るぎもしないリュンヌの返答に、ソルは甲高い声をぶつけた。


「さっきも言いましたが。ルトゥをただの子供だなどと思わないで下さい。あんななりでも、いっちょまえにソル様を慕う男です。それを軽んじるというなら。同じ男として、僕はいっそ彼を哀れに思います」

 ソルは呻いた。


「だから、全力で応えようというの? 同じ男として」

「はい。男同士の話です。手加減なんてものは、彼にとっても侮辱でしかないでしょう」

「だからって、叩き潰すなんて――」

「その程度で折れるなら、ソル様への想いも剣術への想いも、所詮はその程度っていうことです。それもまた、僕には許せません」


「あなたにも、剣術には譲れない想いがあるっていうことは、流石に分かってはいるつもりですけれど」

 しかし、だからといって、どうしてここまで苛烈な感情を抱くことが出来るというのか。

 分からないのは、自分が女だからなのだろうか? 男にしか分からない感情なのだろうか? ソルは、そんな風に思う。


「私は、あなたの主人よ」

「はい」

「そして、あなたは私の従者ですのよ?」

「分かっています」

「それでも、私が止めてって言っても。あの子とは全力で戦う。手加減は出来ないって言うんですのね?」

 ソルは恨めしげに、懇願するようにリュンヌを見詰めた。


「申し訳ございません。ソル様。ソル様のお気持ちは痛いほどに分かりますが。どうしても、その頼みだけは聞けません」

 しかし、リュンヌは少しだけ寂しげに笑って、そう答えるだけだった。


「分かりましたわ。私にはもう、リュンヌもルトゥも止められないんですのね。私の気持ちなんて、省みもしないで。男なんて、本当に勝手なものですわね」

 深く、ソルは溜息を吐いた。


「いいですわ。もう好きになさい。話はこれまでにします。もう、戻っていいわ」

「畏まりました。ただ、僕からも少し、ソル様に訊きたいことがございます」

「何ですの?」

 少しだけ間を置いて、リュンヌは訊いた。


「決闘はまず間違いなく僕が勝つと思いますが。結果がどうであれ、ルトゥの想いには、どう応えるおつもりですか?」

「これから考えますわ」


「そうですか。なら、もしもルトゥの想いに応えるか、そうとまではいかなくても、より親密になりたいというのなら。決闘の後に彼に寄り添うような真似をすれば、ソル様に対する好感度はかなり上がると思います」

「あなたも、悪いこと考えますわねえ? そういう考え、嫌いじゃありませんけど」

 半眼を浮かべながら、ソルは苦笑した。


「あと、もう一つ。ソル様にとっては、見た目がそこまで重要なのでしょうか? この先どうなろうと、ルトゥの中身はルトゥです。ソル様にとっては、それでもう、認めることは出来ないものなのでしょうか?」

「言いたいことは、分かりますわ」


 見た目が異なれば、醒めてしまう。そんなものが、愛などと呼べるのか?

 小さく、ソルは笑みを浮かべる。

「それも含めて、これから考えましてよ」

「はい。分かりました。それでは、僕はこれで失礼します」


 リュンヌの姿が掻き消えるのを見送って。

 ソルは、天井を仰いだ。

「本当に、悩ましい話ですわね」

 ルトゥに抱く感情が何なのか? ソルは自問自答を始めた。

リュンヌ vs ルトゥ


ソル「勝手に戦え!!」

リュンヌ「男の決闘をB級映画にしないで下さい!」

ソル「どこに違いが?(半眼)」


書いている人「それを言っちゃあ、お終いよ」

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