第1話:とある報われない恋の結末
一応、ほぼ全話分のプロットは用意しているので、失踪は無いと思います。
途中で、実際に書いてみたら……と、微調整が必要になって、滞ることはあるかもですが。
予定通りなら、全7章で完結の予定です。
初日に10話。その後は現時点のストックが尽きる、だいたい3章が終わるあたりまでは、一日一話のペースで投稿しようと考えています。
・追記
3章以降は概ね、週末に一話ペースで投稿しています。
2024/04/20
AIイラストで挿絵を挿入。少しずつ、投稿済みのエピソードにもこういう挿絵を追加すると思います。
もし、リクエストがあれば歓迎です。やれるかどうかはともかく、出来るだけやってみたいです。
漸く、ここまで辿り着けた。
彼女は笑みを浮かべる。見る者に漆黒の薔薇を想起させるような、そんな美しく高貴で、トゲのある笑みだ。
国の中で最も格式のある教会。その奥で、彼女は純白のウェディングドレスに身を包み、慎ましく佇む。
向かいに立つのは、この国の王子にして第一継承者。金糸のごときブロンドに、サファイアのような蒼い瞳を持つ、美青年だ。
聡明で優しく、まさに彼女にとっての理想の男性。
これまでは、彼を手に入れるためだけに生きてきたと言っても過言ではない。
公爵家に生まれ、彼に近づける境遇。それだけは、これまでの生涯で唯一の幸運だった。
けれども、敵は多かった。
そんな数多のライバルをありとあらゆる策謀を駆使し、蹴落とし、死山血河を築いた。
気の安らぐ一瞬など、ありはしなかった。
だが、そんな長い戦いもついに終わる。こうして、愛しの王子と結ばれるという形で。
微笑みを浮かべる彼。そんな彼を目の前にして、彼女ははにかみながらも、笑顔を返した。
彼と共に、永遠の愛を誓い合う。
そして、口づけへ。
荘厳なる静寂の中で、彼女は目を閉じた。
王子が優しく頬に触れる。大きく温かい手のひら。
安らかな気持ち。とてもとても、安らいだ気持ち。思えば、こんな満ち足りた気持ちになれたのは、いつ以来だろう。
でも、この瞬間くらいは、許して――
“死ぬがよい”
不意に、目の前から冷たい声が放たれた。
えっ!?
何事かを問いかける前に、答えは返ってきた。
それは、とても冷たい答え。
しかし、直ぐにそれは灼熱の痛みへと変わった。
彼女は目を見開いた。
大きく口を開け、わなわなと唇を震わせる。
恐る恐る、左手を腹へと向ける。直視したくない、けれども確かな現実がそこにはあった。硬い感触。短刀か何かの柄としか、思えない。
彼がどこに隠し持っていたのかは分からない。そもそも、彼がそんなことをするとは想像もしていなかった。
腹を押さえる手が、血に濡れていく。
これは、もう絶対に助からない。こんなときだというのに、残酷なまでに冷静に、自分に対して見立てが付いてしまった。
"何故?"
それは、言葉にならなかった。そんな形に、唇は動いたかも知れないけれど。
脚に力が入らない。彼女は膝を折って崩れ落ちた。
床に触れた、頬が冷たい。
這いつくばりながらも、精一杯に王子を見上げる。
彼の顔からは一切の情が欠落していた。この人のこんな顔、初めて見た。そして、決して見たくはなかった。
「私が何も知らないままだと、そなたはそう思っていたのか?」
答えることは出来ない。
ただ、その言葉の意味は理解出来た。
失敗していたのだ。彼は自分の行いを知っていた。いつから? どこから? 誰から? それは分からないけれど。
乾ききった、彼の瞳。
それに対し、彼女は今際の際で、熱い涙が零れた。
「止めは刺さぬ。ゆっくりと死を迎えるがよい。そなたの罪を数えながらな」
ぎりりと、彼女は歯噛みし、固く唇を結んだ。
怒りと絶望に意識が白む。恐怖は覚えない。罪など数えない。
遠く、自分の名前を呼ぶ誰かの声が聞こえた気がした。
だが、どうせ罵声だ。そんな者。自分に味方する者など、もはやこの世界にはいやしないのだから。
黒髪の悪女「な、なんじゃあこりゃあ!!(血塗れの腹と手を見ながら)」
数話後に出てくる少年「そのネタは古いのでは?」
書いている人「実はよく知らないけど、それっぽいと思ったんで」