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2話

 おはようございます――と、虚無に挨拶をする。あれから何日経ったかは分からないけど私は生きている。身体に怠さと些かな痛みが残ってはいるけども、立ち上がってこの狭い部屋の中ぐらいなら歩き回れるし、ずっと食べれなかった固形軽食を食べられる程に回復した。


「はぁ」


 しかしあの子供の声は今でも微かに聞こえる。私のでない寂しさと不安が常時流れてくる。最初の頃に比べたらテレビの音量10から4まで下げられた程度までになったがそれでもメンタルは少しずつ消耗していますよって。


「転生……なんだろうか? 王道の」


 ベットに横になっても寝れそうにないので疲労による靄が掛かったままの頭でこの状況を考える。

 ①。私は死んだ。それは認識している。死因は分からないけど記憶に残っている最後は地べたに這い蹲って血を流していた事。

 ②。見知らぬ子供の身体に私が居る。年齢は5歳位だと思う。股間にナニが付いていたから男の子。そんでもってその子が常時私に不快感を与えてくる。会話は今の所無視されて出来ない。

 ③。日本語じゃない言語が話せる。自然体で話す時は後者になる。正し字は分からない。

 ④。家族構成はまだ分からないけど母親が居る。どんなのかは分からないけど、多分この子は母親には愛されていないと思う。愛情への飢えが酷すぎる。ママ、ママ五月蠅い。


「んっ、と……わっ!?」


 足腰に力を入れて立ち上がったが上半身の血液が下に落ちる感覚に襲われてそのまま膝から崩れて倒れた。どうやら私が思っている異常に衰弱している――のではなく、子供なら普通か? いや病み上がりだからか?


「ふっ」


 それとも私が異常なだけか。思い返せば全うに生きる為の手段を維持する為に健康面を犠牲にし過ぎていたのかもしれない。


 ――限界って案外自分だと分からないもんだなぁ。身体の不具合が少しずつ増していくのはわかってたけど働きながら歳を取ってるんだから当たり前だと思ってた。

 それと健康診断はあてになれないってのも。半年前に受けた時は問題ないと診断されてましたよって。


「……ん?」


 倒れたお陰かベットの下に仮面を見つけてそれを取る。なんの変哲もない白い無地の仮面だ。


「うっ」


 だが、その仮面を見たせいで私に不快な”寂しさ”が流れてくる。私はその不快感を払拭するように手の持った仮面を投げるとその仮面は化粧台に当たり閉じていた鏡が露わとなって今の私を映した。


「っ……」


 初めて見る今の姿に私は言葉を無くす。頭で理解出来ない情報量と質がそこにあったからだ。

 雪の様な白ではなく嫌悪感がある方の白い長髪、死体の様な白肌、色素が薄い青目、幼いながらも中性的だと分かる顔立ちに――なにあれ? 左目から頬に掛けての蚯蚓腫れ? ときた。


 ――気持ち悪い。


「……気持ち悪い」


 と、私の意識関係無く言ってそして同じものを感じていた。目の蚯蚓腫れが原因ではなく鏡に映っているコレ全てに嫌悪感を抱いている。

 

「最悪」


 鏡に映った現実を受け入れ始めると同時に鏡から目を放してベットへと沈む。眠くはないが眠ってしまいたい気分だよ本当に。


「ん?」


 金属同士が擦れる音が聞こえるなり何かが開く音が聞こえて身を起こす。そして――、


「……はぁ」


 と、開かれたドアの向こうで一人の女性が――雪の様に白い髪を持った母親が残念そうに溜息をついていて立っていた。


「うっ」


 ドアの向こうの母親を見るなり私の心に不快な感情が流れてくる。今すぐに駆け寄りたい。今すぐに抱き着きたい。ママと呼びたい――そんな事を思い行動に出してしまいそうになるが、『そうしたいなら私がじゃなくて自分でやれ。代わりにやらすな』と、一蹴して何とか踏みとどまる。29歳に大人の赤ちゃんプレイをさせるな。


「その様子だとまだみたいね」


「?」


 母親は残念そうに――ではなく、どうでも良いと言った感じの表情を浮かべてはドアを閉めて鍵をまた掛ける。短かったが今ので分かった。この子は母親に愛されていない。でも憎まれてはいないっぽい。

 

「……ネグレクト?」


 成程これが世に言うネグレクトか。確かに子供時代に親にあんな態度されたら全うに育ちませんわ。



 ――4日後。


「帰ってこないん……」


 母親が外出して四日後。水も固形食品も底を尽き、喉の渇きと空腹にネグレクトもそこそこ深刻な虐待行為だと、考えを改めるのであった。

('Д')来いよ敵部隊! クレ○バーなんて捨ててかかってこい!!

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