今日の予言 晴れなのに「傘」
その後、あの津波が来たんだ。全部飲み込んじゃって、この街も少しは元気になったけど、過去なんて変えられないし。皆あの時の傷を少なからずとも胸に秘めている。もし、もしもあの時真凜が教えてくれなかったら俺ら家族は一瞬で終わってただろうし、もしもあの時、俺も一緒に「逃げて」って叫べば、ひとりでも多くの人が助かったかもしれない。
真凜には、神様が見えるらしい。神様が上空に現れて、今日の一日を教えてくれるという。でも、俺は見てもないもは信じられない。真凜の予言のような言葉は信じても、神様は見るまでは信じない。何故なら、だったら、災害なんて起こすなよって気持ちが生まれるからだ。あの日、あの時の意味を知るまでは信じない。
僕は呟く
「ほんと、何にもない日って最高だな」
そう言えば、こんなこともあった。
「お兄ちゃん、今日は傘をもっていってね」
「なんで?こんなに晴れているのに?」
「そうなんだよね。天気予報も晴れマークなんだけど・・上が」
と指を差す。
「あ、そうなんだ。じゃあ、持っていくわ」
「うん、じゃあ、行こう」
傘を持てと言いながら、真凜は傘を持とうとしない。
「え?真凜は傘持たないの?」
「うん。だって、お兄ちゃんに持たせなさいって」
「えーー俺だけ、こんないい天気なのに、コレ新手のイジメじゃないよな」
「フフフ、そんな事ないよ。お兄ちゃん信用されてんだから」
真凜は悪戯っぽく笑った。もしかしたら、真凜に遊ばれているのか?とも思ったが、あの日の様に後悔するのが嫌だったので傘を持つことにした。
傘は思わぬところで役立った。先ず、野良犬を追い払い。真凜に近づく輩を払い。いじめっ子の足をかけ、
「いやぁ、役だった!ってなるか、オイ!!」
帰り道、天に向かって傘を突き刺す。
まぁ、何に無い事がいい事なんだが、こんな晴れた日に傘を持つ事がこんなにも周りの視線を浴びる事とは知らなかった。
「なんで傘持ってんの?」→「気にしないでくれ」→「お前のとこだけ雨降ってんのか?」
↑↑↑このやり取り!合言葉か!!!って思うほど何人としたことか。お陰で変人扱いが酷くなった。
その時、河川敷に目をやると、増水した川に取り残された少年を発見する。上流で雨が降っているんだろう。かなり水嵩が増してきている。走って声を掛ける。
「おーーい。大丈夫か?早くこっちに戻って来いよ。危ないから」
「わたれない、水が早くて」
「おお、待ってろ」
そうか、ココで必要だったんだな。傘を伸ばして少年を岸まで引っ張ってやる。
「気をつけなきゃだめだぞ」
少年は、転がったボールを取りに川岸についたそうで、そのまま遊んでいたら、あっという間に洲に取り残されたらしい。少年は、恐怖で少し震えていたが、探しに来た母親に連れられ帰っていった。
母親は、礼がしたと言ったが当然の事なのでとイケメンっぽく断った。
少年を助け、気分が良くなりパッと傘を開いてクルクル回しながら歩いていると
「ガツン」
何かが傘に当たり勢いよく、そのまま地面に倒された。手がビリビリっと痺れている
「大丈夫ですか」
後ろを歩いていた女性が駆け寄ってくれた。
「ああ、はい。でも何があったんだ」
「あのぉ、私、あなたの後ろを歩いていたんですが、上から何かが飛んできたんです」
「え、上から?」
「はい、私もよく見えなかったんですけど、サッとあなたに向かって何かが飛んできて。でも、ほら、傘を回していたでしょ。それが良かったんじゃないのかな、よくわかんないけど」
女性は、少し離れたところに飛んだ傘を持ってきてくれた。
「ほら、傘が無ければ大惨事でしたね」
傘の骨組みに強く当たった個所が見られ、焦げた匂いとその衝撃で骨組みもバラバラになっていた。
気が付いた・・・今日の傘は俺の為だったんだ。




