コインロッカーベイビー1
改札に近づくにつれて今度は徐々に小さくなる泣き声。
改札を抜ければ大丈夫だと思い、安堵する女性。
女性はそのまま改札を抜け、ため息をついた。
気づけば泣き声も聞こえなくなっている。
ほっとして会社に向かおうとした女性は、ふと、横を見た。
見てしまった。
人ごみの向こうにあるコインロッカー。
そこに浮かぶ、全裸の赤ん坊。
やせ細り、眼球だけがやたら大きい。
そのギョロリとした眼球は、強大な憎悪を込め、真っ直ぐに女性を見つめていた。
「きゃあああああああああああああああ!!」
女性はその場で悲鳴を上げ、手に持っていた鞄も放り投げて駆け出した。
そのまま周りも見ずに、道路に飛び出す。
そして、そこに大型トラックが、ブレーキも間に合わず、飛び込んだ。
キキィー
ドグシャ
嫌な音を立て、女性の体が吹き飛ぶ。
さらに路面に体を打ち付け、誰が見ても、死んでいるのは明らかだった。
身につけていた服はすでにぼろ切れと化し、両腕両脚は妙な方向に捻れている。
皮膚はずる剥けて筋繊維が見え、所々からは紅く染まった骨が突き出している。
その上顔面は半分ほどが原型を留めず、首も完全に折れ曲がっていた。
「きゃあああああああああああああああ!!」
自己を目撃した通行人の一人が悲鳴を上げ、他の通行人も当然の惨劇に慌てふためく。
コインロッカーの前に浮かんでいる赤ん坊だけが、その惨状を見て笑っていた。