少女オオカミとオオカミ青年
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少女オオカミとオオカミ青年
作:狩屋ユツキ
【レイン】
路地裏に住む少女。
スリや盗み、恐喝、強盗、身売りなどで生計を立てる。
踵まである銀髪を銀の髪飾りで留めている。
勿忘草色の瞳。
絶世の美少女。十七歳。常は十八歳と名乗る。
【ヒデ】
CDショップの店員。
ツーブロックアシンメトリーの短髪黒髪。
右目が見えないので前髪で隠している。
光のない黒目。
やる気のない雰囲気イケメン。二十歳。
30分程度
男:女
1:1
レイン♀:
ヒデ♂:
※世界観を壊さないアドリブ歓迎です。
多少、過激表現、センシティヴな内容を含みます。ご注意ください。
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(某ハンバーガーショップにて、夜)
レイン「(ハンバーガーを頬張りながら)俺とお前の出会いっていつだったっけ」
ヒデ「(ポテトをつまみながら)んー、一年くらい前だったんじゃないっけねえ」
レイン「もうそんなに経つのか。お前さー、本当にいつまで経っても変わんねえのな」
ヒデ「それを言うならお前もだろ。俺の給料日狙ってハンバーガー強請りに来るんだから」
レイン「ステーキや焼き肉、強請らないだけマシと思え」
ヒデ「まあ、テリヤキバーガーのセットとかそういうんじゃなくて、本当に極フツーのハンバーガーをマスタード抜き、ポテトのLサイズとお茶を全部単品で頼むことだけは覚えたし、確かに俺の財布に優しい」
レイン「だろ?」
ヒデ「でも俺の金だからね」
レイン「今度まとまった金が入ったら奢り返してやるって」
ヒデ「それ、人の金か、文字通りお前の体で稼いだ金じゃん」
レイン「何?お前、俺を警察にでも突き出す気?」
ヒデ「うんにゃ。……ただなあ、それならまだお前の体で払って貰う方がマシだと思っただけで」
レイン「何だよ、溜まってんのか?」
ヒデ「公共の場でそういうことを女が普通に言うんじゃねえの。……ま、溜まってないって言ったら嘘だけど」
レイン「じゃ、このあとホテル行く?」
ヒデ「金が勿体ないから却下」
レイン「青姦でもいいけど」
ヒデ「それは俺の道徳的に却下」
レイン「じゃ、お前んち」
ヒデ「夜は親がいるから無理」
レイン「なんだよ、したいんじゃないのかよ」
ヒデ「あのね、俺、したいって一言も言ってないでしょー」
レイン「(指を舐めながら)……なんか肩透かし」
ヒデ「指をべろべろ舐めない、ペーパーを使いなさいな。……でも一年か。お互いの名字も知らないまま一年付き合いがあるっていうのも変な話だよねえ」
レイン「俺に名字がないんだからヒデの名字を知る必要も無いだろ」
ヒデ「……レイン、口の横にケチャップついてる」
レイン「え、どこ」
ヒデ「左……あーいや、お前から見たら右か」
レイン「ややこしいな……取れたか?」
ヒデ「しょうがねえなあ(指ですくい取って舐める)」
レイン「ん」
ヒデ「ほら取れた」
レイン「さんきゅ」
ヒデ「そういや、お前の欲しがってたCD、入荷したぞ」
レイン「え、マジ?」
ヒデ「ほらこれ」
レイン「……今日俺、持ち合わせ無いんだけど」
ヒデ「今度店に来たときに払ってくれればいいよ。レシート一緒に入ってるから」
レイン「従業員割引はデカいよなあ」
ヒデ「……前から疑問なんだけどさ」
レイン「何だよ」
ヒデ「お前持ってるのってMP3プレイヤーじゃん。何処で曲をCDから移してんの?」
レイン「身売り常連客のパソコン」
ヒデ「……聞くんじゃなかった」
レイン「しょうがねえだろ、俺ホームレスで定住してねえんだから。ノートパソコン抱えて恐喝とかスリとか身売りとか出来るかよ」
ヒデ「辞めればいいだろ、そういう犯罪」
レイン「……んー、ヒデ幾つだっけ」
ヒデ「ハタチ」
レイン「じゃ、三つ上か」
ヒデ「えっちょっと待て初耳」
レイン「そだっけ?」
ヒデ「お前出会ったときに十八だって」
レイン「そういや言ったような気がする」
ヒデ「嘘だろ、思いっきり淫行犯罪年齢……そうなると俺も犯罪者かぁー」
レイン「ダチとか公には俺、十八歳って名乗ってるからヒデは情状酌量入るんじゃね?ぶっちゃけ客に合わせて年齢詐称してるけど。実のところ、“本当”の実年齢、俺も知らないし」
ヒデ「取り敢えず今知ってしまった事実は消えねえよ……まあ売春に関しては犯罪だって知ってて買う方も買う方だけどな」
レイン「それこそ十八歳以上だと思ってたとはいえ、俺のことたまにタダ喰いしてるやつがいうんじゃねーよ」
ヒデ「それは合意だからいいだろ。お互い十八歳以上なら問題なかったわけだし」
レイン「愛し合ってますーって?」
ヒデ「ヤメロ、鳥肌立った」
レイン「(笑って)うはは、俺もー」
ヒデ「……何なんだろうねー、俺達の関係ってさ」
レイン「出会ったのは、俺がヒデを恐喝したときだっけ」
ヒデ「そうそう、深夜に渋谷の裏路地歩いてたら『オニーサン、そのままそこでぴょんって跳ねてみな』って言われてびっくりした」
レイン「そしたら小銭の音がしたから『有り金全部出せ』ってナイフ突きつけて脅したんだっけ」
ヒデ「四百円しか出てこなかったけどな」
レイン「俺がびっくりしたわ」
ヒデ「だって給料日前の上に仕事終わりで財布持ってなかったんだもん」
レイン「もってなかったんだもん。じゃねーよ。身なりの良いカッコしてるから万札くらい出てくるかと思ったら、そのズボンのポケットから四百円出されて、手渡された時の俺の心情を語りたいくらいだぜ」
ヒデ「おう、語ってみなよ」
レイン「虚しくなるからヤダ」
ヒデ「あ、そ」
レイン「で、呆気に取られる俺に、『じゃ、これあげる』ってCDくれて」
ヒデ「ああ、俺オススメのバンドの新曲買ったばっかりだったからちょっと惜しかったけど、あんまりレインががっかりしてるもんだからつい」
レイン「がっかりもするわ!牛丼一杯で消える金しか手に入らなかったら泣きたくもなるわ!!」
ヒデ「でもCDその場で聞かせたら『くれ』って言ったじゃん」
レイン「このご時世にポータブルCDプレイヤー持ってるやつがいることにもびっくりしたわ、そういや」
ヒデ「買ったその場で聞きたくなることがあるから持ち歩いてるんだよ。基本はMP3プレイヤーだけど」
レイン「それから俺が別で金得てCD買いに行ったときにレジ店員がヒデだったんだよな」
ヒデ「俺、脅されたときに常連じゃんって気づいてたけど」
レイン「……なにそれ初耳」
ヒデ「言ってねえもん」
レイン「何で言わねえんだよ!!」
ヒデ「だってお前、自分の見た目自覚してる?銀髪に青目だぞ?しかも髪のその長さ。覚えないほうがどうかしてるっての」
レイン「言えよそういうことは」
間
ヒデ「そういえば聞いたことなかったけど、何でレインってば髪切らねえの?」
レイン「それ、今聞く?」
ヒデ「ベッドで聞いたほうがいい話?」
レイン「いや、別にそういうピンクな話じゃねえよ……。……ただ単に、この髪留めが、俺の唯一の身元証明だから」
ヒデ「ああ、そのすっごい細かい細工された髪留め?髪の端っこ留めてるやつ」
レイン「そ。これに“Rein”って彫られてたから俺はレインって名乗ってるだけだし。住民票も健康保険証もないんだぞ俺。戸籍があるのかすら怪しい」
ヒデ「そうなんだ。……でもその割レインって金勘定も文字の読み書きも出来るけどガッコ行ってたの」
レイン「行ってるわけねえだろ」
ヒデ「……じゃあなんで出来んの。独学?」
レイン「身売り常連客に教えてもらった。最初小銭とか誤魔化されてもわかんなかったから」
ヒデ「聞くんじゃなかった」
レイン「何だよ、聞いといて失礼だろお前」
ヒデ「なんかもうお前のライフワークから身売りを抜くのは無理な気がしてきた」
レイン「一番実入りが良いからな」
ヒデ「そういう意味じゃねえよ」
レイン「どういう意味だよ」
ヒデ「どういう意味でもねえよ」
レイン「どういう意味でもねえなら言うなよ」
ヒデ「じゃ、その男言葉も」
レイン「身売りの常連客から」
ヒデ「ますます無理だと思ったわ」
レイン「いいじゃん、俺も気持ちいいのは好きだし。痛いことされるときは倍以上ふっかけるけど」
ヒデ「それをタダ喰いしてるわけですか俺は」
レイン「光栄に思うが良い!!」
ヒデ「平和にポテト頬張って威張られてもな」
レイン「マッキュのポテトって定期的に食いたくなるんだよ」
ヒデ「匂いが凶悪だよな。電車とかで嗅ぐと酔う」
レイン「食いたくなるんじゃないのかよ」
ヒデ「俺基本的にジャンクフード食べないもん」
レイン「それもそうか。時々豪勢に蕎麦とかラーメンとか奢ってくれるもんな」
ヒデ「人の金で食うラーメンは美味かろう」
レイン「いつも人の金で焼き肉食ってるからわかんね」
ヒデ「……財布の潤い具合はレインのほうが時々上だもんな……」
レイン「CD買い過ぎなんだよ、ヒデは」
ヒデ「勉強兼ねてるからしょうがねえの。必要経費」
レイン「まあ、次の日の飯に困ることも俺はあるけど。あと、雨宿りの場所」
ヒデ「そういうときはうちに来いって言ってるだろ」
レイン「そう世話になれねえよ。それに冬は身売り常連の」
ヒデ「はい、すとーっぷ」
レイン「うい」
ヒデ「ポテトが不味くなる」
レイン「ポテトの味は変わんねえよ」
ヒデ「訂正、俺のアイスコーヒーが不味くなる」
レイン「ガムシロ二つにミルク入れたマッキュの安コーヒーの味なんて、そこらのコンビニで売ってる、ちょっといい値段のするペットボトルのコーヒーのほうがマシじゃね?」
ヒデ「……否定はしない」
レイン「だろ。あ、俺ちょっとトイレ」
ヒデ「ん」
間
レイン「お待たせー……って」
ヒデ「ああうん、コレが連れ。俺がハーレムでもいいならオネーサン達も一緒にカラオケでも行く?……あっそう。じゃ、またね~」
レイン「……相変わらずモテますこと」
ヒデ「向こうも暇だったんでしょ。バンドやってるやつなんて遊ぶのにもってこいの相手じゃん」
レイン「ヒデ、バンドやってんの?」
ヒデ「んにゃ。昔やってたけどねえ。今はしがないCDショップのオニーサンですよぉ。……こーんな髪型してるとね、バンドマンと間違えてああいうのが寄ってきちゃう」
レイン「でもお前、自分の髪、『絶対誰もしないような変な髪型に今度こそする!!』とか言って美容院行くじゃん」
ヒデ「けど結局誰かと被るんだよなあ……ツーブロックも十年前は俺だけだったのに」
レイン「今じゃ当たり前だもんな」
ヒデ「刈り上げにして、またなんか変な剃りこみ入れようかな」
レイン「レイン命!って入れて」
ヒデ「まじないわ」
レイン「入れられたら縁切るわ」
ヒデ「なら言うなよ」
レイン「いや、笑うところだったんだけど」
ヒデ「ビミョーなライン突いてくるねお前」
レイン「それにしても、俺と一緒だとお前全然女の気配ないのに俺が離れた途端結構ナンパ受けたりスカウト受けたりしてるよな」
ヒデ「そうかあ?気の所為じゃね?」
レイン「今だってそうじゃん」
ヒデ「……まあ、そうね」
レイン「俺居ない方がもしかして都合良かったりする?」
ヒデ「うんにゃ、お前といる方が気が楽でいいわ。俺こう見えて人見知りなの。サングラスよくかけてるでしょ。あれ、視線避け」
レイン「……右目のせいかと思ってた」
ヒデ「それもあるけどねー、基本的に人の視線が怖いのよ、俺」
間
レイン「(ポテトつまみながら)で、何の話でここ来たんだっけ」
ヒデ「お前が『今日給料日だろ奢れー』って店に来たんじゃん」
レイン「あーそうだったわ」
ヒデ「これからどうする?カラオケでも行く?」
レイン「俺様の美声に酔いな」
ヒデ「……ま、レインの歌声だけは褒めていい。うん、俺ファン」
レイン「マジ?俺もヒデの歌声のファン」
ヒデ「マジ?」
レイン「マジ」
ヒデ「リスペクトそこかー」
レイン「リスペクトのない相手とは俺こういう間柄にならねえもん」
ヒデ「いや俺もそうだけど」
レイン「あ、一回ヤって上手かったら別かも」
ヒデ「俺は?」
レイン「……………………まあまあ」
ヒデ「その間が気になるんですけれども!!」
間
ヒデ「で、さあ」
レイン「あん?」
ヒデ「お前、せめて堅気になる気ないの」
レイン「どうしたよ、いきなり」
ヒデ「それまで俺が給料渡すから、って言ったらどうする?」
レイン「……ヒデ?」
ヒデ「いやさ、別に今のままでも俺は良いと思うわけだけど。けどさあ、なんつーの、犯罪者だっていうの、お前に似合わないなって」
レイン「……なんだよ、今までそんなこと言ったことなかったじゃん」
ヒデ「レインの容姿なら、そりゃ食いつく男はいくらでもいるだろうよ。実際俺もそこは否定しない。だけどさあ、お前、実際セックス好きじゃねえじゃん」
レイン「……」
ヒデ「何回かヤってりゃわかるって」
レイン「うっさいな」
ヒデ「聞けって」
レイン「俺の生き方に口出しするなら付き合いやめる」
ヒデ「じゃあ彼女になれ」
間
レイン「は?」
間
ヒデ「まあ嘘だけど」
レイン「嘘なのかよ!!」
間
ヒデ「まあそれは置いといて」
レイン「そこ重要じゃね?!結構重要なところじゃね?!」
ヒデ「犯罪から足洗わないと、大人になったときに後悔するぞってオジサンは思ったわけですよ」
レイン「ハタチでジジイぶるな」
ヒデ「いーや、ぶるね。そろそろ立ち仕事で腰が痛い」
レイン「足じゃねえのかよ」
ヒデ「足は常に痛い」
レイン「ガッタガタじゃねえか」
ヒデ「運動してないからなー……あ、腹筋は続けてるぞ。見るか?」
レイン「公共の場で見せる気か」
ヒデ「まあそれも置いといて」
レイン「話が物置になってんぞ」
ヒデ「俺はお前に後悔はしてほしくねえなーって思ったわけ」
レイン「なんで」
ヒデ「……なんだろな、俺達って、友達ともセフレとも恋人とも違うじゃん」
レイン「違うな」
ヒデ「そんなやつがもし次の日ニュースで顔出たら、って考えたら、なんか嫌だなって」
レイン「……この関係を続けていきたいって言ったらお前笑うだろ」
ヒデ「笑わねーよ。俺もそう思ってるし」
レイン「たまに焼き肉取り合ったりするのが楽しいとかさ」
ヒデ「うん」
レイン「お互いの気分でセックスしたりとかさ」
ヒデ「おう」
レイン「俺がヒデの給料日にたかりに行くの楽しみにしてるとかさ」
ヒデ「それは聞き捨てならない」
レイン「聞き流せよ!!……とにかく、そういうゆるっとした関係でいたいわけ」
ヒデ「……まあなー」
レイン「だから、今の関係でいたいし、俺は俺の生活崩したくない」
ヒデ「……はーあ(溜息)」
レイン「しっかし、お前が真面目な顔して言うから俺も真面目に聞いちゃったじゃんかよ」
ヒデ「真面目な話だったからな」
レイン「そなの?」
ヒデ「そなの」
レイン「ふーん」
間
ヒデ「じゃあ、俺が独り立ちしたらお前引き取って飼うわ」
レイン「(盛大に吹く)ぶっほぉ!!」
ヒデ「うわきったね!!!」
間
レイン「げほげほっ……!!……か、飼うってお前な……!!」
ヒデ「だってお前カノジョにするとかなんか考えつかなかった」
レイン「俺もお前がカレシとか考えつかねえよ!!!」
ヒデ「だから、俺に余裕ができたらお前飼うわ」
レイン「そこで何故養うという選択肢がないんだ……」
ヒデ「飼うも養うもそんな変わんないだろ」
レイン「俺に人間性がない……」
ヒデ「お前に人間性を求める気もねえよ」
レイン「……それもそうか」
ヒデ「まあ嘘だけど」
レイン「どこからが嘘だ……」
間
ヒデ「じゃ、行くか」
レイン「何処へ?」
ヒデ「カラオケ」
レイン「奢り?」
ヒデ「今日だけな」
レイン「酒は?」
ヒデ「未成年には飲ませません」
レイン「ケチ」
ヒデ「(笑いながら)嘘。身分証求められなかったら飲んでも良い。程々にならな」
レイン「それこそ嘘じゃねえかよ。今までお前の前で一滴も飲ませてもらったこと無いのに。つか、お前さあ……息するように嘘付く癖、やめた方が良いぞ」
ヒデ「それは無理だな。俺の性格だもん」
レイン「さっきから、嘘、嘘、って、童話のオオカミ少年かよ」
ヒデ「オオカミオジサンです」
レイン「(吹き出して)語呂良すぎ」
ヒデ「つーかあれってさあ、どういう話だったっけ。男の子と狼が出てきたのは覚えてるんだけど」
レイン「嘘つきの羊飼い少年が『オオカミがきたぞー』って嘘つきまくってたら最終的に信じて貰えなくなった話」
ヒデ「んー、そうなるとさしずめレインはオオカミかな」
レイン「何、俺に食われるの?お前が?」
ヒデ「(笑って)お前が俺に嘘つかせるの」
レイン「よくわかんねえ理屈」
ヒデ「で、話の詳細は?オオカミオジサンどうなっちゃうの」
レイン「ホントに全然知らないで喋ってたのかよ……。羊飼いの少年が、毎回面白半分に『狼が来たぞ』って触れ回ってたから、本当に狼が来たときに誰も助けて貰えなかったの。羊が全部食われる話と、少年自体も食われる話の二つがあったような……」
ヒデ「ふーん。……じゃあ俺、やっぱりオオカミオジサンだわ」
レイン「は?」
ヒデ「その羊飼いの少年の気持ち、なんとなくわかるもん」
レイン「どゆこと?」
ヒデ「んー……説明するのは嫌」
レイン「なんだよ、それ」
ヒデ「男には影の一つや二つあるのがいい男なんですよ」
レイン「それ女じゃね?ま、良いけど」
ヒデ「……お前がさあ、あんまり深く突っ込んで聞いてくる質じゃなくて本当によかったって思うわ」
レイン「なんだよ、深く聞いてほしいのかよ」
ヒデ「んや、聞いてほしくないから言った」
レイン「ややっこしいやつだな。もっとシンプルに生きろよ、シンプルに」
ヒデ「お前ほどシンプルに生きてたら俺捕まっちゃう」
レイン「何処までシンプルになるつもりなんだよ!!」
ヒデ「とりあえず全裸で街歩く」
レイン「そりゃ捕まるわ……」
ヒデ「ま、おしゃれ好きだからやりませんけどねー」
レイン「これも嘘かよ……」
ヒデ「(笑って)いーじゃん別に。俺らの関係自体、虚構と偶然で出来てるようなもんですし?時間軸のいたずらっていうか」
レイン「(真顔で)お前との関係を嘘だと思ったことはねえよ」
ヒデ「……(にやりと笑い)……嬉しいこと言ってくれるじゃん」
レイン「そういう嘘は嫌いだからな」
ヒデ「覚えておきまーす。ほら、カラオケ行くぞ、いつもの機種でいいか?」
レイン「オッケー」
ヒデ「(笑って)何ていうかさ、……俺、お前がいてよかったわ」
レイン「(笑って)なにそれ、それも嘘?」
ヒデ「(笑ったまま)さあねー、俺、オオカミオジサンだから最期まで本当は言わないの」
レイン「(笑ったまま)じゃあ最期は俺に食われて死ね。オオカミオジサン」
間
ヒデ「オオカミ役、本当にやるつもりかよ」
レイン「仰せつかったからには最後までやるさ」
ヒデ「律儀だねえ」
レイン「お前と違ってな」
(適当にアドリブでだべりつつ笑いながらカラオケに向かってください)
了
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