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4話 いや誰だテメェ!!?


「異世界……ですか? うーん、あんまり興味無いですね……」

「ですよねぇ!」

「えっ?」


 女性はいよいよ困惑の表情を深める。


「あ、それ以前に異世界転生、もしくは転移ってご存知ですか?」

「え、えーっと……あっ! 知ってます知ってます! たしかそういう小説が流行っているとか……」

「それですそれです。 興味無いですか?」

「……ごめんなさい、あんまり無いです……」


 僕から異世界転生を勧められていると認識したのだろう。 申し訳なさそう体を小さくする


「大丈夫ですよ。 僕もありません」

「えっ?」

「いやぁ気が合いますね、僕達」

「ええっ!? 神様と気が合うだなんて、光栄です……」


 あ、そうか。 この人の中では僕は神ってことになってるんだった。

満面の笑みを浮かべている彼女に真実を話すのが僕には辛くなってしまった。


「神様って思っていたよりずっと話しやすい方だったんですね。 こんなあたしにも気遣ってくださいますし……」

「はっはっはっ 苦しゅうない」

「うふふふっ……すごく気さくな方でイメージ変わっちゃいました」


 悪くない。 むしろこのまま神になりたい。


「……そういえば、お名前まだ聞いてませんでしたね」

「あっ、ごめんなさい、あたしったらまた失礼を……」

「いやいや、お気になさらず。 なんなら当ててみせましょうか、名前」

「神様はそんなことまでできるんですか!?」

「神ですから」

「すごい」


 ……行くぞ! 読心チート発動!


 名前は……『如月京香』(きさらぎきょうか)だと……!?

 なんと、美人が美人風の名前を携えているとは……僕とは住む世界があまりにも違い過ぎる……!


 ……いや待て。 僕も『烏丸宗次郎』だし、名前は負けてないのでは? 名前負けはしてるけど。


「あなたは如月京香さんですね?」

「……! はいそうです! 流石神様……! 私は何も言っていないのに……」

「神ですから」

「すごい」


 わかる。 チートってすごい。

 しかしどうにも調子が出ない。 もう少し恥ずかしい情報まで読み取りたかったが、いまいち集中できないし若干フラつく気がする。 ……あそうだ。


「すいません、お腹空きませんか?」

「あら? 神様もお腹が空くんですか?」


 まあ、天使も紅茶飲んでたし、神もお腹くらい空くだろう多分。

 なんにせよ僕は昨日から紅茶くらいしか口に入れていない。流石に限界である。


「そうですねぇ……あたしもちょっとだけ――あっそうだ!」


 京香さんは立ち上がって一つ手を叩く。


「あたし作りますよ、料理!」

「なんと。 僕はろくに作れないのでありがたいですけど」

「あたし料理だけは得意なんですっ」

「じゃあお任せいたします」


 「お任せあれ!」と息を吐き、力こぶを作る京香さん。 見た目は大人っぽい人だが、仕草は結構かわいらしい。


「そこの冷蔵庫の中身なんでも使っていいですよ。 もちろん調味料とかも」

「分かりました! えーっと……この食材なら……あら? この調味料ってたしかすごく珍しいやつじゃ……見たこと無いのもいっぱい……うん、大抵ものは作れそう」


 流石得意だと主張するだけあってざっと見ただけで把握できたようだ。

 材料はガブリエルさんのものだが、まあうん、後で謝ろう。 男という生き物は好奇心と食欲には逆らえないものなのだ。


「調理器具も豊富だし、本当に神様ってお料理なされたりしないんですか?」

「少なくとも、僕はしませんね」

「? ……そうですか」


 京香さんはなにやら違和感を覚えたようだが、嘘は言っていない。


「あ、何かリクエストはございますか? 神様だからイタリアンとかの方がいいですか?」

「うーーーん……味噌汁」

「お味噌汁、ですか? なら日本食がいいのかな……?」


 そもそも神とイタリアンは普通繋がらない。 変わった人だ。







「ふんふんふーん」


 上機嫌な鼻歌と小気味良い包丁の音を聞きながら、紅茶をすすり料理の出来上がりを待つ。なにこれ超楽しい。

 惜しむらくはこの紅茶が美味しくないということだ。 作り過ぎた。 ちくしょうめ。


「ああ、いい匂いがしてきたなぁ」

「もう少しで出来ますから、待っててくださいね」


 これはまるで夫婦生活のようではないか。 ここに残ってよかった。

しかしこのまま何もしないというのも心苦しい。


「さて、僕も飲み物でも用意しておこうかな――」


 立ち上がったその時、『ガチャリ』という音と共に部屋の扉が開かれた。


「ただいま……ってお前、何やって――」

「あ、ガブちゃん」


 おっと、意外と早かったな。 どう説明したものか考えていると、笑顔の京香さんが料理が乗った皿を持って歩いてきた。


「神様~、ご飯出来ましたよ~」

「いや誰だテメェ!!?」


 当然の疑問である。


「えっ? あっ……(如月京香です!)」

「黙ってないで何とか言えや、あぁ?」


 凄むガブリエルさん。 怖い。


「(……あれ? 如月京香です!!)」

「如月さん、その人には言葉に出さないと伝わらないですよ」

「あ、そうなんですか?」


「なんなんだよ、誰かこの状況を説明しろ……」


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