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Neuroid-ネウロイド-皇国逆襲戦記  作者: 有邪気
第一章「目覚めたミライ」
4/9

眠る滅び

西暦2◼︎◼︎◼︎年◼︎◼︎月◼︎◼︎日

日本国某所、グレゴリウス-JP支部の本部

一人の少女が夢を見ていた。

知らない誰かが死ぬ夢だ。

その誰かが死ぬのを見ると世界が終わった様な感覚に襲われて凄く怖かった。

だから彼女は自分を研究する者達にその事を伝えた。

研究者達も一緒になって怖がった。

夢を見た少女以上に怖がった。

だから彼らは少女が二度と目覚めなければ良いと思い氷漬けにして永遠に眠らせた。

そして、これで世界の終わりなんて絶対来ないと思い、勝手に彼らは安心したのだ。

少女は泣くことも出来ずに眠り続けた。

氷よりも冷たい水のベットで何時の日とも知れない遥かな未来まで眠り続けた。


◆◆ ◆◆


西暦4819年8月20日

日本皇国某所日本グリス本部。

施設のいろんな場所に銃痕や焼け焦げた跡、はたまた壁が割れていたりなど荒れ放題の状態だった。

様々な人間が消化作業や人の誘導で慌ただしくしく走り回っている。

走り回ったり自由に行動する彼らは全員各設備をキョロキョロと見回し確かめるように行動しており、この施設の人間ではなさそうだ。

逆に研究者と思しき人物や私服を着た従業員、戦闘員などここの施設の職員と思しき人物は拘束誘導されていた。

どうやら戦闘があったようで日本日本グリス本部は別勢力の組織に制圧されたようである。

「日本グリスの職員の皆さんは武器を捨てて速やかに広場へと集まってくださーい。どうしても現場を離れられない場合は許可を出しますので、理由と現場の場所、使用する道具や設備を申請報告お願いしまーす。」

戦闘員以外の人間に怪我は無く抗争による犠牲者は最低限のように見える。

制圧した側は最低限の拘束で丁寧に対応しており、日本グリス側の不満も少ないようである。

これらの様子を見守るように髪の短い軍服の様な戦闘服を着込んだ男が二人の部下らしき人間を連れて歩いていた。

男の雰囲気は明らかに他とは常軌を逸しており、鋭い目つきに眉間に寄った皺が彼の攻撃性をより強調し、真一文字に結ばれた口は彼の頑固とも言える真面目な気性をありありと物語っていた。

先程アナウンスをしていた人間が男の存在に気付いて素早く振り向き敬礼した。

「これはこれは、お疲れ様です!総帥殿。」

総帥と呼ばれた男は表情は崩していないが何処かむず痒い様子で敬礼を返した。

「ご苦労だ秋山隊員。首尾の方はどうだ?」

「職員や戦闘員の抵抗は殆ど無く、我々の指示に全員が従ってくれています。ただ特殊な収容設備の方は見学の拒否や離脱の拒否が多く許可申請の受諾が難航しておりまして……。」

「丁寧に対応しろ。特殊な知識のない者が首を突っ込んでも碌な結果にならん。」

秋山隊員は納得がいかなかったのか男に質問した。

「畏れながら総帥殿!研究や実験行為の完全な停止を求めた方が宜しいのでは無いでしょうか?自由を認めたものが再度反抗する可能性もございます。」

「反抗に関しては忙しい中負担を増やすようで悪いが気を付けてくれとしか言えない。一部の人間の自由を許すの理由は簡単だ。この施設の目的はあくまで危険物の管理であり研究はより安全性を高める為の行為だ。原子力発電所がメルトダウンしそうなのに職員全員に仕事を止めろとは言えんだろ?」

「成る程理解しました!御高説に感謝致します!」

「ああ引き続き頼む。戦闘員の武器携帯にだけは一応注意しろ。」

そう言って男はその場を離れた。

後ろからついて来ていた二人のうちの一人、長髪で軽率そうな顔つきの男は“総帥”と呼ばれた男の反応を見てニヤニヤ笑って肩を叩いた。

「ぷぷ…!様になってたぜ?総帥閣下殿!」

「止めろ影太(エイタ)。お前が俺を据物の神輿みたいに担ぎあげたんだろうが…。」

“総帥”は頭を抱えて影太の手を振り払う。

それを見ていたもう一人、眼鏡をかけた短髪で快活そうな女が影太に続いて少し慌てたように言った。

大道寺(ダイドウジ)さんは巫山戯てるがウチもやっぱり“組織”で一番強いあなたしか居ないと思うですよ?大道寺参謀長は能力はあるけど人望が無いですし。」

「はぁ、有難う菜々奈(ナナナ)。一度引き受けたんだ、半端に投げ出したりはしないよ。そんな事より今は後始末と一緒にこの組織の引き継ぎを済ませないと。」

菜々奈のフォローに“総帥”は礼を言って歩を進めた。

「よくこんな無傷でここが手に入ったよなぁ〜。俺がそういう風に取引したんだけど。」

影太は周りを見渡ししみじみと言った。

今回の抗争で施設は多少破壊されているが人的損害は最小限に留まったのである。

影太にとっても予想外の事だったのであろう。

影太はニヤニヤとドヤ顔で頷いていた。

「日本日本グリスを裏切った交渉相手が俺のよく知った人だったしな。抵抗勢力も俺が()()()()()()()しな。」

「えぇ〜…。」

月兎はなんでもない様に散らかされたゴミを掃き取ったと言う様に言い放つ。

横で聞いていた菜々奈は“総帥”の戦闘風景の一端を思い出し冷や汗をかいてドン引きしていた。

だが日本グリスはこの国でも随一の力を持った組織である。

最終的に武力を用いたとは言え抵抗を極一部に留まらせたその交渉力は賞賛に値するのは間違いないだろう。

だが理由はそれだけでは無いようで、“総帥”の近しい人物がこの組織に居た様だ。

「ここです総帥。」

菜々奈は施設の目立たないとある部屋のドアを指した。

“総帥”は頷きノックをしてからドアを開けた。

目立たないドアであったが中もやはり目立った物がなく一人の人間が使うデスクと資料らしき紙媒体の書類が数冊と棚やコーヒーメーカーがあるだけだった。

そこには二人の研究者らしき人物がいた。

彼らは43年前一人の子供を救う為オールドコンピュータにあった人物、星岡直実と飛鳥・岡村=ダイソンだった。

直実は入ってきた敵対組織の“総帥”を見て割れんばかりの笑顔でその胸に飛び込んで抱きついた。

月兎(ゲット)ぉーーーー‼︎私の可愛い息子ぉー!」

「母さん久しぶりです。」

そう、“総帥”とよばれていた男はかつて無脳症で死にかけていた赤ん坊なのである。

彼は龍牙や直実に育てられ(主に龍牙)今や一つの組織を指揮するまでに成長したのだ。

愛する息子に会えた直実は久しぶりの息子の匂いを記憶すべく、その懐で思いっきり深呼吸していた。

「ずおぉぉぉぉぉぉぉ!あ゛あ゛ぁ、久しぶりの息子の匂いぃ……お父さんに似てきて益々良いわぁ。脳にクルゥ〜。」

「息子でせずに父さんにして下さい!恥ずかしいでしょうが!人前でぇ!」

「恥ずいから、ヤ!」

後ろにいた飛鳥が流石に見兼ねて直美を月兎から引き離した。

「あぁん。月兎ぉ〜。」

「やめないか、星岡直実(キ◯ガイ女)。やりたければやるべきことをやってからだ。」

「有難うございます……。飛鳥さん。」

直美を後ろに放り、月兎の顔を見て飛鳥はニヤリと笑った。

「久しぶりだなぁ月兎。いや総帥殿と呼ぼうかな?」

「いや、月兎で良いですよ。“組織”内でも呼んでる奴とそうでないのがいるので……。」

月兎は何とも言えない微妙な表情で答えた。

総帥と呼ばれ始めたのはどうやらつい最近の事のようで、本人はあまり乗り気で無い様子である。

それもその筈でもともと“組織”の長を月兎は勤めるつもりはなかったのである。

ただ月兎も影太に担ぎ上げられただけならいざ知らず、他の仲間達まで総じて月兎をリーダーとして指名されてしまっては断ることも出来なかった様だ。

もともと“組織”を作ったのは大道寺影太であるが、国防の穴を埋める働きをするシステムが欲しいと言ったのは月兎であり、言い出した本人が組織運営を放棄することも出来なかったのだろう。

だがそんな感情を逆なでするが如く月兎の後ろに待機する影太は完全にふざけた様子で言った。

「総帥閣下殿ぉ〜!」

「黙れ影太。頭皮を剥がして二度とシャンプー出来なようにするぞ。」

「来いよ月兎ぉ!筋力なんざ捨ててかかって来い!」

「それ事実上の降参じゃないです?参謀長…。」

そんなやり取りを見て微笑ましく思ったのか飛鳥は少し口角を上げて見ていた。

「仲がいいね。君達は。」

「飛鳥さん申し訳有りません。」

「良いさ……。日本グリスの制圧という大仕事の後だ。はしゃいで戯れ合うのも若者の特権だ。」

「一仕事を終えたような雰囲気になっていまして。」

「なになに……構わないさ。」

そう言って飛鳥は月兎達の横を通り過ぎ出入口の扉前に立って振り返る。

「それぐらい軽い気持ちの方がかえって良い結果が残せるものだ。」

「例の引き継ぎとやらですか?」

「そうさ。君達は世界の命運を握る組織の一つを掌握したのだ。世界救済する責任ぐらいは持ってもらうよ?」

飛鳥は暗い笑みでさも当然の様に、自分達が抱えていた重い責務と大きな義務を果たす様に月兎達に告げた。

菜々奈は押し寄せる不安に息を呑み、影太は込み上げる期待にシニカルに笑った。

月兎はと言うと、表情や息使いに全く変化なくその鋭い眼光を光らせていた。

月兎は予測でき得るあらゆる絶望的な未来にものの一瞬で覚悟を決めて飛鳥に向き直る。

「問題ありません。行きましょう。」

その言葉を聞きその場の五人は予定通り、この施設の最奥の一つに向かって歩き始めた。



元日本グリス施設の地下深くに向かって五人は階段を降りて行く。

飛鳥はふと四十三年前に月兎や直実、龍牙らと共にオールドコンピュータを目指し地下深くを目指してエレベーターで降りていったことを思い出していた。

もちろん口に出したりはしないがふと状況を重ねていたのだ。

奥に進むにつれて気温が下がってきた。

あらかじめ全員高性能の防寒着を着用していたがそれでも寒さを感じ始めていた。

菜々奈は白い息を吐きながら近くにいる直美に聞いた。

「この先には一体何があるんですか?」

直実は笑顔で困った様に首を傾げた。

「さぁ〜?」

「さぁ〜ってあんた!」

見かねた飛鳥が全員に聞こえる様に話してくれた。

「この先は大規模なコールドベットルームになっている。」

「コールドベットルームって事はコールドスリープしている冷眠者がいるんですか?」

「ああ」

コールドスリープは端的に言えば人間を氷漬けにして長期間生きたまま保存する技術である。

もともとは不治の病を未来で治すためにコールドスリープしたり、長期間の宇宙航行のストレスを感じない様にする為などの目的で使用される技術である。

興味深い技術なので進歩だけは続いていたが今も昔も普通に生きている人間では使用する機会は全く無い技術とも言える。

「大規模で収容者が多いがゆえ冷眠者の安全性を高めるべく低地に広範囲にわたって冷気を充満させている。今の気温は大体摂氏−35度ぐらいだが、最下層は-250度を下回る。」

「今既に寒いんですけどこの防寒装備で大丈夫ですか?」

「問題ないよぉ〜。」

菜々奈の疑問に直実は手を上げて呑気な声で応えた。

「この防寒着は電源を入れると体温と同期して内側からの発熱と断熱を開始してくれる便利なものでね、初春の肌寒さから地球ではあり得ないマイナス265度の極寒まで耐えられる便利な代物だよ!」

「すごっ!」

「一式、八六◯◯万円なり〜。」

「たっか!」

驚いた菜々奈は震える手で防寒着の裾を引っ張りまじまじと見つめた。

横目で見ていた月兎は震え続ける菜々奈を見てあることに思い至る。

「と言うかおまえ、寒いって言ってスイッチ入れてないんじゃないか?断熱だけでこれ以上行くと凍死するぞ。」

「え…?あっ!」

菜々奈は慌ててスイッチを両手で探り出し電源を入れた。

即座に保温を開始した防寒着によって身体が温められた事により表情が緩みホッと一息ついた。

だが直ぐに眉間にしわを寄せ影太の方を見て非難した。

「ちょっと大道寺さん!ウチに防寒着をくれた時スイッチの存在なんて教えてくれなかったじゃないですか!」

「ッチ!もう少しで低体温症でぶっ倒れるとこを見れたのに余計な事を…。」

「おいこらぁ!人の命で遊ぶんじゃねぇよ、サイコパスが!!」

影太は舌打ちをして真剣に悔しそうな顔をしていた。

それを見ていた他の者達は影太がやらかした行為と本気で悔しがっている態度を見て唖然としていた。

菜々奈は怒る様なことを言ってはいるが他の者達と同じ様にドン引きして呆れ返っていた。

飛鳥は月兎に耳打ちをして影太について尋ねた。

「月兎…だいじょうぶなのか?彼は……。」

「大丈夫です。見ての通りのサイコパスですよ……。」

「全然大丈夫じゃないじゃないか!」

月兎の言葉に飛鳥は憤慨した。

月兎は冗談を言う様な性格をしていない。

つまり彼が言ったサイコパスという言葉は紛れもなくその意味で大道寺影太が精神病質的な反社会思想の持ち主であると肯定していた。

飛鳥は慌てて抗議する。

月兎は幼少の頃から見守ってきた(監視の目的で)為、彼にとっても甥御の様な存在である。

子供を悪友から引き離す様な心持ちで月兎に忠告した。

「大道寺影太とやら危険なのではないか?君の“組織”から追放し何らかの形で監視をした方が…」

「彼は我々の“組織”の参謀長です!」

月兎は飛鳥の言葉を遮る様語気を強めて言った。

「確かに彼は終始ふざけているし、他人を平気で弄ぶドブヘドロ屑野郎です。」

「おい…!」

「ですが、俺が幾度と無く背中を預けてきた戦友でもあります。」

月兎はこの場にいる全員に聞こえる様に断言した。

改めて全員が影太に注目した。

影太はピースサインをしながらニヤニヤと笑ってふざけていた。

「飛鳥さん、こんな奴ですが“組織”に無くてはならない人間です。第一印象最悪かもしれませんが俺に任せてください。」

「………。」

飛鳥は目を閉じて思案した。

月兎を説得できる言葉はあるかどうか、頭の中を探し回っていた。

月兎は父親の龍牙より幾分頭が切れ理解が早く、母親の直実より遥かに理性的で自制が効く。

しかし、そんな両親より遥かに頑固で強固過ぎる信念を持っていた。

その信念は育てていた龍牙ですら頭を抱えるほどであり、月兎が一度決めた事を他人の意見や忠告で変えたところを飛鳥だけで無く、他の月兎に関わった者たち全員が見た事がなかった。

月兎がもし善良な人間で無ければ親である龍牙か日本グリスが成長前に暗殺していただろう。

それ程の危険性を感じさせるまでに月兎の意思や性格を変える事は困難なのである。

飛鳥はそんな風に考えているうちに自分の思考が無駄であると悟り月兎を説得する事は諦めた。

「……はぁ、もういい好きにしろ。行くぞ!」

飛鳥に続いて他の四人も階段を降りていった。

気温は徐々に下がっていくが防寒着のおかげで体感温度に変化はなかった。

代わりに照明がまばらになり、気温に比例する様に周りはどんどん暗くなっていった。

月兎達は防寒着のフードを被り、顔が凍らないよう顔全体を覆う透明なマスクを装着し始めた。

手持ちの懐中電灯で先を照らし始め完全に明かりがなくなった頃、一向は最下層にたどり着き目の前には重厚な特殊断熱合金の両開きドアが現れた。

ドアの両側には赤と白の手の平を模した立ち位置禁止のマークと二つの取っ手に巻かれた原始的な鎖と南京錠で施錠が施されており、鎖には《危険度段階:急 Safety Level 4 管理難度:丁種》と書かれた看板がぶら下がっていた。

飛鳥は金属製の鍵を取り出し鍵を開け鎖を解いた。

その様子を訝しむ様に眺めていた影太は目の前の原始的なセキュリティに対して懸念を示した。

「そんな原始的な南京錠じゃ子供の持ってる3Dプリンターでも簡単に鍵を複製できちまうぞ?セーフティレベル4が聞いて呆れるぜ。」

それを聞いた飛鳥は振り返って先ほど解錠した鍵と南京錠を見せつつ影太の懸念を静かに否定した。

「問題ないよ。この鍵と南京錠は特別なんだ。」

「どういう事だ?」

「この鍵と南京錠は世界にたったひとつしか存在しないからだ。」

「っぷ!くハハハハハ……。」

「いちいち笑うんじゃない!君はゲラか。」

影太が笑ったのはおそらく世界に一つしかない鍵なら複製する事は困難だと飛鳥が言ったと思ったのだろう。

その程度であればピッキングや鍵穴からの鍵の複製など幾らでも解錠の方法はあるからだ。

飛鳥は苛立ちを抑えながら再度影太に解説した。

「まず、この南京錠はこの鍵で開ける以外の方法では()()()開錠出来ない。明確な理由は不明だがピッキングや物理的破壊を含めあらゆる方法でこの鍵を開ける方法が存在しない。そしてこの鍵と南京錠は世界に一つしか()()()()()()のだ。」

「あ?存在出来ない?」

「もしこの鍵と南京錠の複製を機械で作ろうとすればその機械は深刻なエラーが発生したり急激な劣化で破壊される。もし手作りしようとすれば作る人間は動悸、目眩、吐き気に始まり、視野狭窄、嘔吐、喘息、失神、痙攣、皮膚裂傷、吐血、壊疽、幻視、幻聴、失明、発狂、大脳萎縮、脳出血、消化器官破裂、肺破裂、心臓破裂、大脳溶解、そして死に至る。良ければ試してみるか?」

そう言って飛鳥は鍵と南京錠を影太に押しつける様に渡した。

「んな馬鹿な……。」

影太は辛うじてそう呟いて受け取らされた鍵と南京錠をまじまじと観察した。

なんの変哲も無い鍵の形状を見て、もし作るとしたら……そんな風に考えた瞬間軽く目眩がして先ほどの症状の話を思い出した。

そこからは自分の持っているその鍵と南京錠に名状しがたい不気味さを感じてしまい飛鳥に適当な言い訳で慌てて返却した。

「悪いなぁ!そう言えば俺の爺ちゃんに遺言で鍵だけは作るなって言われててなぁ!いやぁ残念残念!」

「お前の爺さんは鍵に親でも殺されたらしいな。」

飛鳥はそんな軽口を言って鍵と南京錠を受け取り、小さい金庫の様な箱にしまい込みバックに入れた。

その後飛鳥と月兎も手伝い鎖を解き、扉を解放した。

扉を開けた事で既に零下二百三十度を下回っていた周囲の気温は一気に二十度以上低下した。

「さて、ではこれから言う番号の冷眠者が存在するベットを運び出してくれ。くれぐれも世界が滅びない様、慎重にな?」

“組織”の三人は緊張した面持ちで飛鳥の後に続いてベットを運び出す作業に入った。

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