その横顔は何を見る
このページを開いていただきありがとうございます。
「たまもや」と申します。
今回は三題噺企画、第八弾となります。
お題は、
「日光浴、雨、図書館」です。
お楽しみいただけると幸いです。
「日向ぼっこだよ」
何をしているのかを尋ねた僕に、晴空を見つめる彼女は答えた。
昼休憩になり、僕はガラス張りの中庭へ向かった。すると、そこには先約が居て、ぼんやりと空を眺めていた。
「今日は何してるんですか」
「日向ぼっこだよ」
「雨、降ってますけど?」
「曇っていても、太陽はそこにいるんだよ」
「たしかに」
「それに、雨もいいものだよ」
「わからないでもないです」
「まぁ、気持ちは暗くなるけどね」
「不思議なものですね」
「ただの気象現象なんだけどね」
そういうと彼女は寝ころんだ。いつも通り彼女は空を見上げている。
「お昼、食べたんですか?」
「そこに」
指さす先には相変わらず、メロンパンの包装とコーヒーの缶の入った袋が転がっていた。
「いつも通りですね」
「人ってね、選択肢を減らしていくと幸せになれるらしいよ」
「選択できるのも幸せの一つだと思いますけどね」
「いろんな意見があっていいんじゃないかな」
にこっとした笑顔を見せながらも、まだ彼女は空を向いていた。彼女の隣でお昼を過ごすようになって、約半年になる。
この市立図書館に入りたてのころ、ルーティンも覚えてきて、だいぶ余裕が出てきた。周りをなんとなく眺める余裕ができてきたある日、小さな中庭を見つけた。もともと存在は知っていたが、立ち寄ることはほとんどなく、ガラス張りで綺麗だなぁと思っていたくらいだ。しかし、改めてみると、日差しが差し込み、とても神秘的に見えた。僕は昼休みの時間を選び、中庭で昼食をとることにした。その日から、僕の新しいルーティンが始まったのだった。
「先輩」
「どうした?」
「いや、やっぱり何でもないです」
「そう言われると、気にしてしまうものだよ」
「気にしてくれるんですか」
「まぁ、一応はね」
「意外です」
「失礼な後輩だね、まったく」
「すみません」
「それで、何も言うことはないのかい?」
「はい。またいつかにします」
「いつかが訪れるといいね」
「はい」
「それじゃあそろそろ私は戻るよ」
「はい、それじゃあまた明日」
「あぁ、またね」
そういうと彼女は去っていった。僕はいつも通りハムとレタスのサンドイッチを頬張り、それを紅茶で流し込む。あっという間の食事を終え、彼女のしていたように、その場に寝転ぶ。
「見えないなぁ」
雨空を見上げて、僕は目を閉じた。
今回は、短い文章の中に、後を引く何かを残すことを意識しました。
シチュエーションは違えど、こういう経験ってあるのでは?という思いで書いてみました。いかがだったでしょうか。
昨日から、これまでよりも文字数を減らして書いているのですが、どちらの方がこの「小説家になろう」に合っているのか、また自分に合っているのか、悩んでいるところです。
もし意見や感想、お題の提案等がありましたら、コメントによろしくお願いします。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
これまでの作品もぜひよろしくお願いします。
三題噺のお題に関しましては、以下のホームページを参考にさせていただきました。
http://youbuntan.net/3dai/