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Re:異世界に咲く一輪の花  作者: アナカラー
第1章 未来設計
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第1章1話 『転生』

「非常に残念ですが、あなたは先日、自分の部屋で16年という短い生涯を終えてしまいました。」


 目が覚めた俺の前には、青く澄んだ空。足元は、真っ白な雲がどこまでも続いていた。まるで、空に浮かんでいるようだ。


 そして、俺の前に立つ一人の少女。

 本当にこの世界に天使と呼ばれる存在が本当に存在するのであれば、彼女のような人の事を言うのだろう。


 腰まで乱れ一つなく伸びた赤い髪。顔はこの世のものとは思えないほど綺麗に整っており、大きく開かれた青色の瞳は曇ることなくこちらを見つめて微笑んでいる。

 また、服装は俺の過ごしていた日本で見れば、まるで『コスプレ』のような服装で、同じ世界の人間ではないのだろうと一目見ればわかる。

 背中には純白の翼、右手には先端が太陽のような形の円形をした少女の身長ほどある長杖を持っている。


「あの…いきなりこんなこと聞くのもあれなんですけど…なんで俺死んだんですか?」


 俺の質問に少女は目を閉じ、静かな口調で応えた。


「…先日の夜、あなたは自宅の自室で眠っていましたね。その際、あなたは部屋に置かれていた小さなタンスの角に手首をぶつけてしまいました。運が悪いことに、あなたは手首の血管を切り、大量出血をしてしまいました。普通の人ならあまりの痛みに目を覚ますはずなのですが、あなたは目が覚めず、出血が止まらずにそのまま亡くなってしまいました。」


 なるほど、わからん。

 要するに、普通なら脳がなんらかの反応をして死を回避できることを、俺は睡眠欲が勝ったために死んだということなのだろう。

 我ながら物凄いことをしでかしたものだ。


「よくわからないですけど、とりあえず死んだってことはわかりました。そんで、俺はこれからどうなるんですか?」


 少女は、死んだと告げられても大した反応をせずに、これからどうなるのかを聞いてくる俺に少し驚いた表情を見せたが、すぐに元の表情に戻ると静かに言った。


「あなたはまた赤ん坊として、記憶を失って生まれ変わる…のですが。」


 初めて少女がニッとした表情をした。

 よく見れば、年は俺と同じくらいに見える。


 不適な笑みを浮かべた少女は、俺の横まで来ると、耳元で小さな声で言った。


「実は、あなた達の世界でいう異世界と呼ばれる場所があるのですが、最近、その世界の存在を消してしまいかねない魔物が現れたんです。そこで一つ提案があるのですが、その世界に転生して世界を助けてはくださいませんか?もちろん、タダでとは言いません。どうです?悪い話じゃないでしょう?」


 急に悪徳商法のようなしゃべり方をしはじめた少女が俺に提案してきた話は、記憶を失って赤ん坊になる代わりに異世界を救ってこいなどと言うものだった。タダではないとはどういうことだかは知らないが。


「悪くない話ですね。まぁ、記憶を失うのとか嫌だし受けてもいいんですけど、一つだけお願いしてもいいですか?」


「なんでしょう?」


「俺の好みの女の子を一人連れていけるなら行きます。」


「構いませんよ。」


 即答かよ。もう少し『えー!?!?』的な展開を望んでいたのだが。


 ーーだが、望みが叶うのなら異世界の一つや二つくらい救ってやろうじゃないか!


「んじゃ、異世界転生やったろうじゃないですか!」


 俺がそう言うと、少女は微笑み、杖を掲げた。


「これからあなたを異世界へと送ります。これからは、その世界があなたの住む世界となります。必ずや世界の危機を救い、世界の勇者となってください。健闘をお祈りします…」


 俺の体が光に包まれていく。

 夢のように感じるが、夢ではないとはっきりとわかる不思議な感覚。

 きっとそれは、これからの人生に心が踊るこの衝動が、夢の中では絶対に感じられないものだからだろう。


 早くも幕を閉じてしまったはずの16年の人生。

 ろくに学校に通わず、部屋からも出ず、夢もなく、挙げ句の果てには部屋の中で死んだ俺のどうしようもない人生を、いまここで変えれる。


 俺の人生は、今から輝かしいものになってスタートするんだ!


「あ、そういえばお約束の女の子はとうすれば。」


「あなたのイメージする子に相応しい者が転生を果たしたあなたの側に現れるでしょう…誰になるのかは、私にもわかりません。その子も何があったのかわからないでしょう。ですから、あなたからその子に事情を説明してあげてください。当然の事ではありますが、まだ生きている魂を転生させることはできません。ですので一度その子は死んでいるということになりますね。…死人ではなく神、何てこともあるかもしれませんがそこはあまり期待せずに。」


 少女が喋り終えた途端、俺を包み込んでいた光が輝きを更に増していく。


 俺はただ、これからの冒険の支えとなる仲間の人物像をひたすらに心の中で叫び続けた。


 ーー可愛くて、スタイルよくて、俺と同じくらいの年のツンデレ少女!!!ーー


 その思考も、光に遮られ、完全に光に包まれた時に止まってしまう。


 ついに、俺の異世界生活が始まる。

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