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Re:異世界に咲く一輪の花  作者: アナカラー
プロローグ
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プロローグ

 拝啓 お父さん、お母さん、その他諸々へ。


 鮮やかな桜が散り、エアコンの効いた部屋でダラダラと過ごしたい季節となりましたが、皆さんどのようにお過ごしでしょうか?


 日本はいま、どんな天気ですか?何度ですか?何時ですか?犬のポチにちゃんと餌はあげましたか?


 この度は、急な手紙にさぞ驚かれているであろうと思います。


 先日、私は深い訳があって異世界転生を果たしました。


 神様の話によると、死んだ人間誰しもが異世界へ転生出来るわけではないとの事だったので、私にこの幸運を授けてくれた父、母にこの事を報告したく、筆を執った次第です。


 さて、そんなこんなで異世界生活を始めた私ですが、当然ながら、私の人生にはたくさんの変化がありました。


 まず、日本国では持っていたら速逮捕されて牢屋に突っ込まれてしまうであろう長剣を持ち、襲いかかってくる魔物を倒すという仕事を始めたということです。


 これは、言ってしまっていいのかはわかりませんが、ギルドという仕事を受ける場所で与えられる仕事は、『○○が発生し、○○街と○○街の交通に支障を来す可能性があるので討伐してほしい。』や『○○が出現しました。○○が出現することは稀で、是非討伐してギルドにその生態を調査させてほしい。』などの仕事ばかり。結局、魔物が何かに支障を来したなどという事例なんて聞いたことがありません。先程、襲いかかってくる魔物を倒すと言ってはみましたが、人間が魔物に襲いかかっているようにしか見えないので、私にはどっちが魔物だかわかりません。


 まぁそんなことは置いておいて…あ、ダジャレではないです。いまダジャレだと思ったやつはダレジャ。なんちって。


 すみません。話がずれてしまいましたね。ダジャレのネタ帳は後で送るとして、ここまでの話で、お気づきになられたことは無いでしょうか?


 そうです。なんと、この私が働いているのです。


 なぜ働いているか?それはやはり、昔からゲームに没頭し、勇者を好き放題使い回してきた私が、今まさに勇者になろうとしているのです。これはやるしかないでしょう?


 しかし、世の中そんなに甘くはありません。


 当然、勇者になったばかり…いや、ここはまだ旅人と言っておきましょう。

 旅人になったばかりの私のレベルは当然1です。そりゃそうですよね。旅人なったばかりでレベル100のやつがいたら世界のバランスが終わってますもの。


 そんなこともあり、レベル1から冒険を始めたのですが、これまた問題が発生しました。


 それは、死です。


 死とは、この世に置いて一番恐ろしいもの。お父さんだったら飲みすぎた日のお母さんの雷ほどまでとは言いませんが、死とはとても恐ろしいものです。


 私のいる世界では、驚いたことに死んだら神様がてきとーに定めた街で勝手に生き返るんです。そりゃ皆何回も死ぬか。


 僕は、そんな安易な死が恐ろしいです。街に戻るのが面倒なとき、死ねば楽に戻れるんですもの。死ねば楽になれるなんてよく言ったもんだ。


 それともう一つ!僕にはなんと仲間がいるんです!なぜ急にビックリマークを付けたかは悟ってください。


 なぜだか悟れなかったお父さん。悟れなかったことを責めはしませんが、まずは自分のそのお腹をしっかりと見て、将来どうなってしまうかを悟ってください。息子からの最大の願いです。


 話がまたずれてしまいましたね。悟れなかった残念なお父さんの為に言うと、仲間がこれまた可愛くて強いんです。しかも仲間だから宿泊まるときも一緒!もちろん部屋は違いますが、近いうちに夢のマイホームを買って、一つ屋根の下で一緒に暮らせるように日々仕事に励んでいます。


 ちなみに、その女の子は神様なんです。私がこの世界に来れるようにしてくれた神様。


 なんで神様が仲間なのかは、そのうち気が向いたら手紙に書きたいと思います。


 最後になりましたが、私はそっちの世界では死にましたが、こっちの世界では元気にやってます。お父さんとお母さん。その他諸々はこっちには来れないので、間違っても息子を追いかけて死なないでください。


 それでは、去らば一生さようなら~


  ーーーアキナより




 宿屋にて、手紙を書き終えた嘉山明希那ーーアキナ。


 彼は、自分がいま、どのような人生を歩んでおり、何を考えて生きているのかを、思ったままに手紙に綴り、故郷である日本に住む、父や母。姉や弟やペットのポチに送ろうとした。


 だが、彼は頭を抱えていた。


 ーーこの思いを、家族の皆に伝えることはできない。


 急に悲しくなってきてしまったから? 違う。


 父親に向かってあまりにも言いたいことをそのまま書いてしまったから? 違う。


 姉弟達をいじらなかったから? 違う。


「この手紙どうやって届ければいいんだ…?」


 わからない。俺には、わからない。


 思いを伝えられないことに悲しさを覚えながら、アキナは全てが始まったあの日の事を思い出していた。

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