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第十三話 死亡お遊戯

 ヨイチお兄様とトウカお兄様をおさらいになったブラック商会。

 そこに乗り込んだわたくしとリオン様、魔導人形のミナヅキは、黒服の構成員(ソルジャー)の方々を相手に大暴れです。


 リオン様とミナヅキは、迫り来る黒服の方々からわたくしを守ってくださっています。

 わたくしは二人の後ろから核撃爆破(エクスプロージョン)で黒服の方々を絨毯爆撃ですわ!


核撃爆破(エクスプロージョン)! 核撃爆破(エクスプロージョン)! 核撃爆破(エクスプロージョン)!」


「ぎゃあ!?」「うわあ!?」「ぬおお!?」


 わたくしの核撃爆破(エクスプロージョン)は、撃てば撃つほど威力が上がっていきます。

 きっと、ヨイチお兄様とトウカお兄様を誘拐なさったブラック商会への怒りがそうさせるのですわ!


「オーホホホホホ! 怒りよ! 怒りがわたくしの魔術を強くするのですわ! 核撃爆破(エクスプロージョン)!」


 わたくしは笑いながら、逃げ惑う黒い方々を狙いうちにしていきます。


「く、狂ってる! アイツは狂ってやがる!」

「ヤツらは……悪魔だ!」

「ダメだ! ここはもう持たない!」


 わたくしの爆撃からお逃れになった数名の黒服の方々は、仲間を見捨てて屋敷の中へとお逃げになっていきました。




 広いお庭の中には隙間なく黒服の方々がお倒れになっています。

 わたくしの核撃爆破(エクスプロージョン)の被害者が半分、リオン様が刀でお吹き飛ばしになった方々が半分、といったところでしょうか。


 リオン様は庭を確認しておっしゃいました。


「ふむ、襲ってくる手下共もいなくなった。屋敷の中へ乗り込むとしよう」


 黒服の方々を踏みながら屋敷の前まで歩いていき、扉を開こうとしたリオン様。

 お顔をしかめておっしゃいます。


「む、鍵がかけられているな」


 すると中から、あざ笑うような、テンションの高い声が聞こえてきます。


「ハハハ! この扉は特別製だ! こいつは狙撃魔導銃(ライフル)でも貫通できないんだぞ! 入れなくて残念だったな!」


 なんですって!

 そんなに頑丈な扉なのですか!?


「では、わたくしが指輪を外した状態で、扉に向かって魔術を撃ってみましょう!」


 わたくしが指輪を外そうとすると、リオン様に制止されます。


「止めたまえ。我々まで巻き込まれる。ここは私に任せておけ」


 リオン様は扉の前で腰を落として刀を構えます。

 そして体を捻り、力をためて――


「ハッ!」


 ――目にも留まらぬ速さで刀を振ります。




 ですが、何も起きませんでした。


「リオン様! こんな時に何を遊んでらっしゃるのですか! 格好をつける練習は、別の暇な時間にやってくださいませ!」


 わたくしが怒ると、リオン様はちょっと嫌そうな顔をなさいました。


「遊んでいたのではない。扉を切ったんだ。見ていなさい」


 リオン様は分厚そうなお屋敷の扉をゲシゲシお蹴りになります。

 すると、四角くくり抜かれた扉がバタンと倒れ、屋敷の中への道が開けましたわ。


 なんというオテナミなのでしょう!

 これこそ、東方剣術の神髄!


 お屋敷の中で扉の自慢をしていた黒服の方も驚いていらっしゃいますわ。


「ひぇー! バケモンだぁ!」

 黒服の方はそう言って、奥の方へと逃げて行かれました。



***



 屋敷の中は迷路のように入り組んでいました。

 ですがミナヅキの『MAPサーチ機能』のお陰で迷うことはありませんわ。

 さすがわたくしの妹。


 彼女のサーチによればトウカお兄様がいる場所には、十の部屋を通らないとたどり着けないようです。

 そして各部屋ごとに、何者かが待ち受けているとのことでした。

 わたくし達は警戒しながら、最初の部屋の扉を開けます。




 そこにはヌンチャクを持った筋肉質の方がいらっしゃいました。


「ここを通りたければ、俺を倒してみろ!」


 と言って、ヌンチャクをガチャガチャとお振り回しになりました。


 その方にお聞きして分かったことなのですが、ヨイチお兄様とトウカお兄様はご無事のようです。


 ヨイチお兄様は、第8930王女のティレニア姐さんに勧誘を受けたらしいのです。

 ですが黒い噂の絶えないブラック商会へ入ることなど、ヨイチお兄様には考えられなかったのでしょう。

 それを断ったヨイチお兄様は、彼を探しに来たトウカお兄様と一緒に、奥の座敷牢に入れられることになったようです。


 乱暴なことをされていないと知って、わたくしはホッといたしましたわ。

 さっさと次の部屋へ向かいましょう。


 え? ヌンチャクを持った方ですか?


 リオン様が速攻でお片付けになりましたよ?




 次の部屋へと続く長い廊下で、わたくしはリオン様に言いました。


「リオン様は『死亡お遊戯(デス・おゲーム)』という演劇をご覧になったことがおありですか? 『マフィアのボスを倒すために、各部屋に待ち受けている中ボスを倒しながら進んでいく』という内容の、アクション演劇史に残る大傑作ですわ」


 リオン様は頷いておっしゃいます。


「もちろん見たことがある。男子ならあの怪鳥音を一度くらいは真似したことがあるはずだ」


「わたくし、あれが得意ですのよ。『アチョーッ!』」


 わたくしがポーズをとって叫ぶと、リオン様は顔をしかめました。


「淑女として、それが得意だというのはどうなんだ……?」


「いいではないですか! それより! ここはまるで、あの演劇にでてくる屋敷のようではありませんか! 各部屋に中ボスさんがいらっしゃるなんて! わたくし、不謹慎にもワクワクしてまいりましたわ!」


「不謹慎だな。ヨイチやトウカが心配ではないのか?」


「若頭のティレニア姐さんは、カタギには暴力を振るわない方だとお聞きしておりました。実際、乱暴なことはされていないようですので、とりあえず安心しております。それに外で黒服の方々に八つ当たりできたので、わたくしの怒りもだいぶ収まりましたわ。この後の乱暴ごとはリオン様におまかせいたします」


「八つ当たり、か。まあ、キミが多少冷静になったのでヨシとするか」



***



 その後も快進撃を続けるわたくし達。

 リオン様の剣術を前に、中ボスの方々はまったく歯がたちません。


 その全てが一撃。


 リオン様が無造作に剣をお振りになるだけで、中ボスの方々は膝をつき、お倒れになるのです。

 そして倒れた中ボスの方々にかけられる、リオン様の「安心しろ、みね打ちだ」という優しいお言葉。


 リオン様はどのようなつもりでそのお言葉をおかけになるのでしょうね?

 彼らは気絶しているのですから、お聞きになっていないハズなのに……。

 様式美というやつなのでしょうか?


 そんなことを考えながらやってきた最後の部屋。

 その部屋には黒いローブの魔術師の方が待ち構えていました。


 「ここを通りたければ、魔術試合(マジカルファイト)で俺に勝ってみろ!」

 とおっしゃいます。


「やってやりますわ!」


 魔術試合(マジカルファイト)という響きに釣られた私は、すぐさま勝負を申し出ました。


 ですがリオン様は、

「まだ魔術の制御に慣れていないのだから止めておきなさい。あの男の言うことなど無視しよう。気絶させればすむことだ」

 などと、ラジカルなことをおっしゃるのです。


 「リオン様。わたくしの家庭教師なら、わたくしの魔術試合(マジカルファイト)にかける想いを分かっていただきたいものですわ。わたくしの両親は魔術試合(マジカルファイト)をしたことがキッカケでお付き合いをはじめ、結婚なさったのです。わたくしにもそのような出会いがあるかもしれないのですから、その機会をお奪いにならないでくださいな」


「待つんだ。キミはあの男と付き合いたいと思うのか? よく考えなさい。それに魔術試合(マジカルファイト)自体が罠かもしれないだろう? 止めておきなさい」


「嫌ですわ! わたくしはとにかく魔術試合(マジカルファイト)がしたいのです!」


 魔術試合(マジカルファイト)がしたいだけのわたくし。

 わたくしを止めようとするリオン様を振り切って、魔術試合(マジカルファイト)のコートに入ろうとします。


 そしてそこに足を踏み入れた瞬間、わたくしの足元に魔術陣が浮かび上がりました!


「ギャハハ! バカめ、かかりやがった! 魔力吸収(マジックドレイン)!」


 黒いローブの魔術師の方は笑いながら魔術を発動させました。

 やはり罠だったのです!


 リオン様が慌てて叫びます。


「むっ、イカン! サツキ、そこから離れなさい!」


「ギャハハ! いまさら無駄だぜ!」


 黒ローブの方は杖を私に向けました。

 すると杖の先についている魔石に、わたくしの魔力が吸い取られていきます!


 突然魔力が逆流したことによって、わたくしの魔力を制限していた指輪は破壊されてしまいます。

 そのため、さらに多くの魔力が彼の杖へと流れていきました。


「ギャハハ! スゲー魔力だ! ギャハハ!」


「そんな不純物の多い魔石では危険だ! 今すぐ止めろ!」


 リオン様は警告しましたが、黒いローブの方は聞く耳をお持ちでないようです。


「誰が止めるかよ! ギャハハ! ギャハ……ハ?」


 ですが、彼の杖についている魔石が赤く点滅しはじめ、彼は笑うのを止めました。

 膨大な魔力を吸収したため、魔石の容量を超えようとしているのです。


 お焦りになった黒いローブの魔術師さんは、


「ダメだ! これ以上はダメだ! 止まれ! 止まってくれ!」


 と、取り乱しますが無駄なことです。


 『魔力は急に止まれない』


 何かの標語で見たことがありますわ。


 今や、杖の先の魔石は真っ赤に輝いています。

 見る者の目を潰してしまいそうな明るさです。


 そしてついには――

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