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津嶋朋靖ショートショート集

不幸のメール

作者: 津嶋朋靖

mixiはオワコンと言われていますが、まだまだ使っている人はいますよ。

でもこの少年のような使い方はいけませんね。


「おい!! まてよ!」

 俺が突然呼び止められたのは、学校の渡り廊下を歩いている時だった。

「山城じゃないか。どうしたんだ?」

 俺を呼び止めたクラスメートは、なぜか怒りに肩を震わせ、俺の前に立ち塞がる。

「一つだけ、答えろ」

 感情を押し殺した声で、で山城は言う。

「mixiに、『怪人チョビ助太郎』の名前で登録しているのはおまえか?」

「『怪人チョビ助太郎』は確かに俺だが」

 その直後、山城の怒りバロメーターが急上昇するのが分かった。

「てめえか!! ヒロミにセクハラメッセージ送ったのは!!」

 山城は突然俺の胸倉を掴んだ。

「山城君。暴力はいけないよ」

「やかましい! てめえがやった事は、言葉の暴力だ! セクハラだ!!」

「しかし、よく俺だと分かったな? プロフィールには、手がかりになるような事は書き込まなかったが」

「おまえ、昨日教室内でmixiチェック使っただろ。あれで教室内の誰かだってわかったんだよ」

 む! そうだったのか。mixiチェックって使った事なかったから、どんなものかと試しに使ってみたのだが……居場所がばれる機能だったとは迂闊だった。

 おや? 向こうから怒れる形相の生徒達がこっちへ向かってくるが……おい、なぜ俺を取り囲む?

 いや、心当たりはいっぱいあるが……

「怪人チョビ助太郎だって?」

「あんたなのねえ。いつも、あたしの伝言板に、変な事書き込んでるのは」

「おまえか!? マイミクさんに、セクハラしたのは!!」

「いい加減、コミュ荒らすのやめてよね!!」

 俺の高尚な趣味を理解しようとしない、怒れる群衆は加速度的に増加していく。

「待て! 君達、話せば分かる」

「分かると思うのか?」

「……いや……とうてい無理だろう」

 言うと同時に、俺は即座に回れ右して逃げ出した。

 そう、俺がmixiに登録したのはマイミクを作るためじゃない。

 登録している女の子をからかうのが目的だ。

 だが、人はそれをセクハラという。

 ようやく、群衆をまいた俺は、人気のない所でスマホを取り出した。

 さて、今日は誰をからかってやるか?

 おや? メールが二通来ている。見たことのないメアドだが、誰が送って来たんだ?

 俺は一通を開いた。


〈怪人チョビ助太郎様。いつも、コミュへの素敵な書き込みありがとうございます。この度、日頃の怨み……もといお礼を込めてメールをお送りしましたが、まだ開いてらっしゃらないようですね。そのメールには私達の怨念……いえ感謝の気持ちが込められていますので、ぜひ開けてみて下さい。

  ネットの妖精  〉


 なるほど、俺が怪人チョビ助太郎だと分かったので、誰かから俺のメアドを聞き出してセクハラの仕返しを送ってきたってわけだな。

 どうせ、『デブ』とか『ネクラ』とか『オタク』とか書いてあるのだろうが、所詮は言葉。気にしなければ何の害もない。

 二通目を出してみた。件名を見て俺は思わず吹き出す。そこにはこうあった。


〈これは不幸のメールよ。開けないでね♡〉


 アホらしい。こんなもので俺をびびらせるつもりとは……俺はメールを開いた。


〈ああ!! 開けないでって言ったのに。開けちゃったのね、開けちゃったのね。知らないわよ、知らないわよ。どうなっても知らないわよ。本当に不幸になるのよ〉


 何が言いたいんだ?


〈コホン! さて本題に入ります。月並みですが、これは不幸のメールです。あなたは今から七日以内に、この文面を変える事なく、二十八人の人にメールを出さなければなりません。さもないと、あなたのところに不幸がやってくるでしょう。

 分かったわね。不幸よ、不幸。棒じゃないわよ。不幸がやってくるのよ〉


 あのなあ……しかし、こいつはいいや。今度は不幸のメールを送ってみるか。

 二十八人と言わず、二百八十人でも、二千八百人でも。今日みたいな目にあったらネットの妖精のせいにすりゃあいいし……おや?

 まだ続きがあるのか。

 俺はさらに文章をスクロールした。


〈などという非科学的な事、ある分けないでしょう。まさか、信じたんじゃない? バッカじゃないの〉


「信じるか! ぼけ!!」


〈今『信じるか! ぼけ!!』って言ったでしょ〉


 妖怪サトリか? おまえは……


〈でもね、不幸になるのは本当なのよ。なんでか、知りたい? 知りたいでしょ。ウププ〉


 さらにスクロールする。


〈では教えちゃいます。あなたが、このながあ~いメールを読み終わる頃には、メールと一緒に送られてきたウイルスちゃんが、あなたの大切なスマホを壊しちゃうからなのです。

 ほうほっほっほっほ! see you〉


「ぬわんだとう!?」

 俺のスマホが再起不能になったのは、その直後の事であった。


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