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恋してるだけ

あなたに最初の贈り物を

作者: 夢呂

朝斗の両親の話。

「ねぇ見て、今日のベビちゃん!」


白黒の、エコーの写真を手に、夫に見せる妻。


―――…どこにでもある、平穏な幸せ。



妊娠9ヶ月の妻・まひるは、今日の検診結果を夫に報告した。


「なんと!男の子だって!」


まひるは、その名前どおり真昼みたいに明るい笑顔を見せる。彼女のその明るい笑顔は周りに人を惹き付ける魅力的なものだ。そしてその美貌と人柄は、常に周りを虜にした。


社内恋愛の末の結婚は珍しいことではなかったが、まひるが寿退社すると会社に報告したときはそれまでオープンに付き合っていなかったこともあり社内は大騒ぎとなり、男たちは同僚であった早馬夕斗に嫉妬した。


「男の子か!そしたら俺もたくさん遊べるな!」

「ふふ、そうね!」


「私はねぇ、今日みたいにいいお天気の日は、三人でピクニックとかしたいな!」

「うん、いいね」


これから生まれてくる我が子に、これから広がる未来の話に、二人は顔を見合わせて幸せいっぱいに微笑み合う。



「そういえば夕斗。名前、どうする?」

「君が決めていいよ?」

「え、良いの?」

夕斗の言葉に、まひるはぱぁぁっと目を輝かせた。


「じゃあ、私。男の子なら付けたい名前があったの」


「へぇ、何?」

夕斗の問い掛けに、まひるが嬉しそうに目を細めて笑う。

「あさと」


「“あさと”?」


「うん。“朝”に、夕斗の“斗”。そしたらほら、三人家族の繋がりを感じるでしょう?」


「私が昼、夕斗は夜。だけど、その次はまた朝が来るから」


「何があっても、必ず朝は来るわ。―――だからね、何があっても、どんな困難も乗り越えられますように。朝陽のように暖かく周りを照らすような子になりますように。家族の繋がりを大切に、幸せに暮らせますように。って願いも込めてるの」


まひるのおおきくなったお腹にそっと触れて、夕斗が微笑む。


「朝斗…か。素敵な名前だな」


「名前は、赤ちゃんにあげる一番最初の贈り物でしょう?だから私、頑張って考えたんだぁ」


二人はあと一ヶ月後には生まれてくる生命(いのち)を待ち遠しく、そして愛おしく、幸せに浸るのだった。



まさかその数日後…―――まひるが交通事故に巻き込まれるとも知らずに。






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