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神様のナイフ  作者: ゆうやん
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第七話

 目を覚ますと、隣にリリィの姿はなかった。


 ベッドから起き上がり大きく伸びをしていると、机の上に置いてある紙が目に付いた。


 リリィの置き手紙か。


 ぐっすり眠っているので起こさずに出ます。受付で朝食がもらえると思います。


 今日は何しよっかな。とりあえず朝ごはんだな。それから考えよう。



「おばちゃーん、朝ごはんちょーだい」


「あいよ。昨日はどうだったんだい?」


「ん?」


「若い男女が同じベッドで寝て何にもなかったなんて、まさかないだろう?」


 なかなか下世話な話を朝からするなぁ。ていうかおばちゃんが犯人か!


 あくまで平静を装って問う。



「おばちゃん、昨日リリィになんか言った? この部屋がいいよとか」


「あぁ言ったさね。ベッド一つしかないが、とってもお安くするよって。そしたらあの娘、本当ですか! って。やっぱり商人なんだねぇ」



 商人なんだねぇ。じゃないよ!



「いやないですって!」


「なんだないのかい。掃除はするからね、いつでもしんさい」


「はあ」


「あの娘はいい娘だからね。大事にするんだよ」


「頑張ります……」



 おばちゃんから朝食を受け取り、部屋で食べる。朝食はいつもの黒パンとコーンポタージュのようなものだった それを美味しく平らげ、今日のことを考える。


 ギルドに行って、ギルドカードをもらって。なんか依頼でも受けてみるか。


 その前にこの服どうしよう。さすがに臭うよな。魔法でなんとかできればいいなぁ


 サファイアを呼び出し、クリーニング屋さんを思い出しながら、太ももに突き刺す。


 クリーニング屋さんって蒸気みたいなのが出て、一瞬で綺麗になるんだよな。シミも消えるし、穴まで塞いでくれる所もあるし。


 すぐさまステータスを出す。


 探すと〈クリーンLv1 〉という言葉を見つけることができた。さらに刺し、〈クリーン〉のレベルを上げる。


 やっぱり、Lv5より上がらなくなった。スキルはLv5が最大で決定だな。


 自分に〈クリーンLv5〉をかける。


 一瞬、水蒸気に包まれる。やっぱりイメージの通りになるんだな。


 着ている制服を見ると、カッターシャツはアイロンをかけたようにしわが伸びていた。


 臭いも消え、まるでお風呂に入った後のような清潔感に包まれていた。



 行くか! 心も体もすっきりしたところで、ギルドに向かう。



「こんにちはー、ギルドカードを取りに来ましたー」


「はぁい、ちょっと待ってくださいねぇ」



 おっとりしたお姉さんがギルドカードを持ってきた。



「どうぞ、これがギルドカードですぅ。紛失した場合はぁ、再発行に中金貨1枚いただきますねぇ」



 案外高いな。無くさないように気をつけておこう。



「専属は決まってますかぁ?」


「はい、エマという人でお願いします」


「分かりましたぁ。エマちゃーん! 専属ー! では私はこれで」



 おっとり系お姉さんはエマさんを呼んですぐに行ってしまった。



「こんにちはー、専属にしてくれたんですね!」


「こんにちは、早速で悪いんですが、依頼を受けたいです。簡単な依頼何かありませんか」


「ありますよ。依頼書は作製されてないんですけど、いまギルドでは薬草の在庫が不足していて、いくらあっても困ることはないんですよ。特にコピロ草という草が無いのでそれを沢山採って来てくれると買い取りを致しますよ。おそらくいまの時期は白い小さな花をつけていると思います。はいこれ図鑑です。これを見て頑張ってくださいね」



 渡されたのは薬草の名前と絵の書かれた本だった。



「わかりました。行ってきます!」


「あとコピロ草によく似た毒草もあるので気をつけてくださいね。そちらは買い取ることは出来ないので。見分けるには一度抜いて根っこの部分の色を見てください。毒々しい紫色ですから。」


「じゃあ、行ってきまーす」





 近くの草原に来た。


 エマさんに言われた通り、図鑑には、コピロ草は小さな白い花をつけていると描かれていた。


 探してみると……おっ、あった。


 一本咲いているのを見つけ、根っこから抜いてみる。根っこの色は紫色では無かった。


鑑定してみるか。



コピロ草

トゥルーデル王国全域に分布している薬草。白い小さな花を咲かせる。花弁、茎、根で薬の効果が違う。とてもよく似ている植物に毒草のコビロ草がある。



 コピロ草とコビロ草かよ。名前つけた人もう少しわかりやすくしとけよ!


 そのままコピロ草とコビロ草を集め続けた。


 そしてある考えが浮かんだ。これもサファイア使えば良くね?



サファイア!



 青いナイフを呼び出し考える。



 コピロ草だけ欲しいんだろ? ならそれだけがわかるようにすればいいんだ。過去にしたことのある潜入するゲームのレーダーをイメージしてみる。他にも考えてみるか。


 と、いろいろ考えながら太ももにナイフを突き刺す。


 ステータスには新しく<レーダー>というスキルが増えていた。当然のようにLv5まで上げる。


 水面に石を投げ込むと波紋が広がり、何かがあればそこから跳ね返ってくる。みたいなイメージをしたんだが……早速やってみるか。



 おぉ、これはすごい。完全に成功だろう。コピロ草は青、コビロ草は赤で表示されている。さらに図鑑で見ただけの薬草や毒草も表示されているみたいだ。人間に害を与えるものは赤ってことかな。


 コピロ草の位置は分かったので、サクサク抜き、それを無限収納に突っ込んでいく。


 あとは、<レーダー>でコピロ草を見つける。そこへ行き、しゃがむ。根っこから抜いて無限収納に突っ込む。という流れ作業的に採取していった。


 流れ作業を繰り返しているといつの間にか昼を過ぎ、空になった胃袋が盛んに主張していることに気づいた。


 そろそろ帰るか。



無限収納


コピロ草×1038



 かなり採れたな。ギルドに売りに行こ。



「こんちはー。エマさんお願いしまーす」


「はーい、エマでーす。あ、ケントさんどうしましたか?」


「コピロ草を取ってきました」



 <無限収納>の黒い穴からコピロ草をどさどさっと落とす。


 あれ? エマさんが笑顔のまま固まっちゃった。



「わぁ……すごい。どうやって出したんですか?」


「え? まぁ……収納魔法っていうかなんていうか」


「まぁいいです。ですけどあんまり他で見せないほうが良いですよ。特に貴族とかには。利用されるに決まってますから」



 貴族に対して口調が変わるなぁ。過去になんかあったのか。それとも現在進行形で何かあるのか。



「換金お願いします」


「はい。承知しました」



 そう言うとエマさんはコピロ草の束をつかんで奥に引っこみ、すぐに手ぶらで戻ってきた。



「それにしてもたくさん採って来ましたねぇ、群生地でもあったんですか?」


「いや、普通にぽつぽつ生えていたのを採ってきただけですけど」


「にしてはすごいですねぇ。とっても目が良いんですね」


「ありがとうございます。ところで、質問しても良いですか?」



 ふと思いついたことを質問してみる。



「はい、もちろんです。なんですか?」


「この町には砂糖ってありますか?」


「えぇ、ありますよ。王都ほどではないですがシュトレンも栄えた町ですから」


「ならケーキとかって知ってますか? 他にもシュークリームとか、プリンとか」


「いえ、そんな名前は聞いたことがないですね」


「そうですか、ならこの町ではだいたいどんなものが食べられていますか? 食事とかデザートに」


「そうですねぇ、食事なら主食はパンです。おかずに家畜の馬や牛、それと魔物ですけどホーンラビットのお肉なども食べられています。デザートには果実が多いんじゃないでしょうか」


「そうですか、ありがとうございます」



こんなことを話していると確認が終わったようで奥からエマさんを呼ぶ声が聞こえた。



「1000本と38本で、小金貨1枚と中銀貨8枚です」


「こんなに良いんですか?」


「はいもちろんです。コピロ草はいろんな薬になりますし数が不足しているので。他の依頼を受けるついでで良いので採ってきてもらえると嬉しいのですけど」


「ありがとうございます。そうします。あ、それとお昼に良いお店を教えてくれませんか?」


「それなら少し待って貰えれば、お昼休憩に入るので一緒に行きましょうよ」

 

「良いんですか?」


「はい!」



そう言って笑顔を向けてくれた。

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