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神様のナイフ  作者: ゆうやん
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第五話

 俺は道中リリィに質問されたり、質問したりした。



「さっきはありがとございました。それとひとついいですか?」


「うん、どうぞ」


「どうしてあんなところになにも荷物も持たずにいたんですか? それになんですか?その服」


「えーっと……それは」



 さすがに勇者召喚されて、パーティー中にスピーチしようとしたら、いつの間にかここにいたなんて言える訳ねぇよ……。


 町とか行ったとき、この服じゃさすがに浮くよなぁ。


 とりあえず、ごまかすかそう。



「俺、田舎の村から出てきたんだ。これはそこの伝統の衣装。両親は事故で死んだし、唯一の兄弟のお姉さんは王都に嫁いじゃったから。俺も独り立ちしようと思って、旅に出てようとしたら迷子になって、声が聞こえて、リリィが襲われてた」


「はぁ、そうだったんですか」



 よし、なんとかごまかせたぞ。一応間違ってはないよな?



「そういえば、ケントさんはお金って持ってますか? シュトレンに入るのにもお金がいるんです」



 お金のことなんか、ごまかしようないぞ。ここは素直に聞こう。



「シュトレンではどんなお金を使うんだ?」


「どんなお金!? お金って種類があるんですか?」



 しまった! 聞き方間違えた!



「あぁごめん! 俺の村は物々交換だったから、お金っていうのがいまいち分からないんだ」


「なんだ、そういうことですか。ていうか田舎の村にしたって度が過ぎますよ。どんなとこだったんですか!」


「すっごい山奥の小さな村だよ。名前もないようなところ。それより、お金の説明に戻ろうぜ」


「そうですね、一般的に小さい方から小銅貨 中銅貨 大銅貨 小銀貨 中銀貨 大銀貨 小金貨 中金貨 大金貨 小白金貨 中白金貨 大白金貨があります。小銅貨10枚で中銅貨1枚と同価値。小銀貨10枚で中銀貨1枚と同価値。小金貨10枚と中金貨1枚と同価値。小白金貨10枚で中白金貨1枚と同価値です」


「そうか、じゃあたとえば大白金貨1枚だと何が買えるんだ?」


「そうですねぇ、シュトレンの小さな家くらいなら買えるんじゃないでしょうか」



 小さな家ってことは結構な価値なんだな




「さっきシュトレンに入るのにもお金かかるって言ったよな? 俺お金ないんだけど……」


「しょうがないです。貸してあげますよ」


「いいのか!? 早く返したいからすぐにお金を稼げる方法も教えてくれ。あんまり借りたままってのは好きじゃないんだ」


「なら冒険者になるといいです。ケントさんはお強いみたいですのですぐに稼げると思いますよ」


「冒険者になるのに何か必要なものはあるか?」


「ギルドに入って冒険者登録が必要です。登録にもお金がかかりますから貸しますよ」


「本当にありがとう。さらに図々しいんだが今晩泊まるところも教えてくれないか?」


「なら沈まぬ太陽亭がいいですよ。私もそこに泊まりますし」


「沈まぬ太陽って……なんで?」


「年中無休かそれに近い営業形態なのでその名前にしたって聞いたことがあります。いろんなところに支店もあるのでとても助かりますし、冒険者や商人は少しお安く泊まれるので人気なんですよ」


「なるほど。同じ宿に泊まるのか。いつでも会えるな」


「そうですね」



 あ、少し照れてる。やっぱり可愛いなぁ。



「そういえばシュトレンってあとどのくらいで着くの?」


「そうですねぇ、もう少しで着くと思いますよ」





 話していると遠くに町が見えてきた。


 そういえばこの世界の町を外から見たの初めてだな。


「着きましたね。では行きましょうか」


「おう」


 まずは検問所だな。





 リリィは納品をしてくると言って先に行ってしまった。


 検問所に着くと、兵士の1人が話しかけてきた。



「おう! 見慣れない顔だな。それになんだその服!」



 うわ! めっちゃ睨まれてる。これは正直に話した方が良さそうだな。



「俺、田舎から出てきたんです。そこの伝統の衣装なんですよ」



 もちろん、設定のほうを。



「なんだそうだったのか。疑って悪かったな」



 なんだいい人じゃん。こんな簡単に信じちゃっていいんだろうか。つーか兵士やってて大丈夫か?



「この町に何しに来たんだ?」


「冒険者登録をしに来ました」


「そうか、冒険者登録か。ギルドまでの道わかるか?」


「いや、全くわかりません」


「そりゃそうだろうな。よし!俺が送ってやる」


「いいんですか?」


「おう!まかせろ!今日はなぜだか気分がいいからな」



 その兵士は近くにいた兵士に送って行く旨を伝え、支度し、戻ってきた。



「準備できたし行くか」






「俺の名前はクッキーってんだ」


「クッキーさんですか。かわいい名前ですね。俺はケントです」


「そうか? じゃあケント、お前は田舎から出てきたんだよな」


「はい、田舎も田舎、お金なんか使ったことなかったですよ。いま持っているのだって借りたお金ですもん」


「冒険者目指している奴に貸すとはそいつも思い切ったことをするなぁ」


「そうなんですか?」


「そりゃあな、冒険者なんかいつ死ぬか分からねぇ。死んじまったら返すもんも返せねぇだろ?」


「たしかにそうですね。でも俺は多分すぐには死にませんよ」


「おう、そうあることを願ってるよ。そら、着いたぞ」



 着いたのは見上げるほど大きな建物だった。入り口の上の看板に大きく冒険者ギルドと書いてある。



「じゃあ俺は帰るぞ。あ、その前に通行料を払って貰うぞ。大銀貨1枚だからな」



シュトレンの通行料を払い、クッキーさんと別れる。





 おぉ! なんか地球にいた時してたモンスターゲームの集会所みたいだな。


 入ってすぐ左側に受付があり、女の子たちが並んでいる。制服だろうか、薄い緑を基調とした統一性のある服を着ている。向かって正面には大きな掲示板があり、依頼書らしき物が所狭しと貼られている。右側は酒場になっており、男たちが数人、真昼間から酒を煽っていた。


 俺はとりあえず受付に行き登録を済ませることにする。


「すんません」


「こんにちは、本日はどのようなご用件ですか?」


「冒険者登録をしたいんですけど」


「分かりました、でしたらこちらの紙に要項をお書きください」



 そう言うとテキパキと書類をまとめ、こちらに差し出してきた。


 その女の子はウェーブのかかった薄い緑の髪をしていた。よく見ると耳が尖っている。


 これエルフじゃね? 本当に耳尖ってんのかぁ。すごいなぁ。かわいいなぁ。




「代筆も可能ですが、いかがいたしますか?」


「いや、自分で書ける……と思う」



 なんてったって〈異世界言語完全習得〉あるし多分書けるはずだ。



 名前はケント・タチバナだろ。 性別は男、年齢16戦闘方法? 剣と魔法かな。


 適当に書いていると下の欄まで埋まってしまった。


 案外少なかったな。



「書きました」


「ギルドのご説明をしますがよろしいですか?」


「はいお願いします」


「ではまずランクの説明をします。高いほうからS、A、B、C、D、E。最低ランクがFとなっております。初めての方はFランクから始めていただきます。このランクは依頼を受ける目安となり、依頼も同じようにランク分けがされています。依頼はどのランクで受けても構いませんが、現場で起こった事故や怪我などはギルドでは一切関与いたしません。またまれに緊急依頼が来るとこがあり、その場合はS、A、B、Cランクの方は呼び出しがかかります」



 間をおいて、また話し始めた。



「同ランクの依頼を10回以上達成、一つ上の依頼を6回以上達成、二つ上の依頼を2回以上達成をランクアップ試験の資格としています。ランクアップの際、ギルドからの依頼を受けていただき、達成されたら、ランクアップとなります。また契約不履行につきまして、一ヶ月に5回以上、または半年に20回以上でギルドからの除名となりますのでお気をつけください。ここまでで何かわからないところはありますか?」



 特にないよな。ランクは上げすぎないほうがいいのか? まぁ、依頼をミスんなかったらいいよな。



「ランクを上げるメリットってなんですか?それだと上げないほうがいい気がするんですけど」


「宿泊施設などの料金が割引されます。高ランクなほど割引かれますので、なかなかお得ですよ」



 それはお得だな。



「ほかには何かありますか?」


「いや、ないです」


「では、ギルドカードをお作りします。お時間がかかりますので明日またお越しください」



 さらに続ける。



「ギルドカード発行の際、専属の受付嬢をつけるのですが、その時はよろしくお願いしますね。名前はエマと言います。忘れないでくださいね?」


「はい!もちろんです」




 なら一度宿屋に行くか。




 俺は宿屋に向けて歩き出した。

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