表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

それが、なに?

「我々はマモラートだ」

 お父さんはいつもと違ったおごそかな雰囲気で話し始めた。

「これは大前提だ。お前もお父さんも生まれてから死ぬまで、一瞬一秒も変ることなくマモラートなのだ。

 あるいは、自分はマモラートじゃない、もしくは、ただのマモラートじゃない、そんなことを思うかもしれないが、それは幻想だ。

 お前はマモラート以上ではなく、マモラート以下でもない」

 当たり前の話だ。

 マモルはちょっと拍子抜けしてうなずいた。が、お父さんの口から「さて、たぬき、だが、」という言葉が出てきて耳をつんと立てた。

「人間は、我々マモラートを、たぬき、と呼ぶのだ。

 わかるか、人間にとって、マモルや、お父さんお母さんや隣の巣のスグルくん、みんなの名前はマモラートではなく、たぬきなのだ!」

「たぬきなんてッ!」

 お母さんが汚いものを投げ捨てるように吐き捨てた。

「屈辱に思うかもしれぬ。悔しくて腹立たしいかもしれぬ。しかし、自分はマモラートなのだと、その誇りを抱いて、心に打ち勝て。

 いいか、克己とは己れに克つと書くのだ」

 涙する両親を前に、若きマモラートは困っていた。

 どういう話だったんだろう?ぼくが子供だから理解できないんだろうか・・・・・・言葉が見つからない。

「それって、つまり、こういうこと?ううん、ぼくなんかが理解できる話じゃないのはわかるんだけど、ぼくなりの解釈なんだ」

 考え考え、マモルのぐりぐりまなこが宙をさ迷った。

「人間は僕らを、たぬき、って呼んでる」

「うむ」

「ぼくらは自分のことを、マモラートって呼んでる」

「うむ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「それって、大事なことなの?」

 さっぱりした顔でマモルは言う。本心からそう思う。

 人間なんかにどう呼ばれたって、全然気にならない。なんでそんなに目くじら立てるんだろう。大人って不思議。

 ふ、とお父さんは笑った。

「さすがはわが子だ。すでに壁を乗り越えていたか」

「わかりませんよ、子供だから」

 お母さんはマモルの淡白な反応に不満げだ。

「子供だからですよ。まだわからないんです」

 マモルは「もう寝ようよ」とあくびした。ふああ、が、ふあああああああ、なった。

 考えごとは苦手だ。

「眠いや」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ