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親友の作戦

じゃんじゃん


読んじゃってください!


ヨロシクお願いいたします……!

略奪愛。


奪う……。


愛……。


りゃくだつ……。


あれ?


愛って 何だっけ?


あ……。私、愛とか無縁だったんだっけ……。


奪うって。


………何を?


あぁ……、愛、だっけ。




「美桜さん!完全に脱力していますね。……そんな衝撃的だった?」


「……………。」


えみ里は完全にフリーズしている私をまじまじと眺めてから、意を決したように拳を握った。


「悪い、美桜!!」


そう叫ぶと、一気に拳を振り下ろした。

………私の頭へと。


ゴンッ


そんな、鈍くも小気味の良い音が、私の大事な(←ここはあくまでも重要だ。)頭から響いた。


「………っつ……。」


ちょっぴり涙目になった私は、きつくえみ里を睨んだ。


「何をするんだ!!」


「いやだって、フリーズしてたんだもん。」


私の魂の叫びをけろりと切り返したえみ里は、自分でもってきたドリンクを飲んでいる。

一口飲み終えると、私を見下したような目をしてこう言い放った。


「まっ!美桜ちゃんそういうこと経験無いからね~」


にやりと口元に笑みを浮かべるそれは、まさに悪魔の微笑である。


私の秘密を知った上に、こんなことまで言われなければならないのか。


否!!!


故に、私はこう言い返した。


「フフン。いつまで経っても私に一点たりとも追いつけないあなたに言われたくないことだけど?大体、そんなことばかりに力を入れてどうするつもり?将来のために必要なのは学習以外の何者でもない、私はそう心得ていますが?」


案の定、えみ里の顔がみるみる歪み始める。


「あのねえ!あたしは、あんたにもそういうことが必要だと思って言ってるわけ!」


「それは何故でしょう?」


形勢逆転とはまさにこのこと。


先ほどまで微笑を浮かべていたえみ里が、私に醜態を晒している。

片や私は、余裕を持って彼女を見つめている。


なのに、えみ里の口から出た言葉は、私の逃げていた心を捕まえた。




「幸せになれるから!」




その言葉を聞き、言い返せなくなってしまった。

息が詰まってしまった私に構わずえみ里は続ける。


「あんたは、いつも機械的で可愛くないからそういう気持ちを、知ってほしかったの!心の底からの笑顔を見せて欲しかったの!親友なんだから……、……頭いいんだから、それくらい察しなさいよ!このバカ!!」


一気にまくし立てると、息を切らしながら私を見る。


「ちょっとくらい、私のこと信じてよ……。あんた、探り探りなの、バレすぎ。」


探り探り……、ね。

何だ、気づいてたんだ。


そこら辺のアホたちに心を許してしまえば、めんどくさいことになる。

だから誰とでも一定の距離を置いて接するようにしていた。


「……さすが、学年2位。」


フッと笑って私が呟くと、


「当たり前でしょ…。そんなになめてると、痛い目見るから。」


よく分からない表情を浮かべてえみ里が言い返した。

そして何かに気づいて、あっ、と小さく叫ぶ。


そこを見ると、えみ里の持ってきたドリンクが、彼女の服にベットリと付着していた。

握っているカップは、見事に潰されている。

恐らく気づかないで力を込めていたのだろう。


「あー……、やっちゃった……。」


無意識に向いた目が、私と合う。

そして、どちらともなくクスリと笑いをこぼした。


「仲直り、かな?」


「そういうことになるんじゃない?」


きゅ、と手と手を握り合い、定番の『仲直り』というやつをした。


「よし!じゃあプチけんかも済んだことだし…。うちに来い、美桜!」


切り返しの早いえみ里はさておき、ひとつ疑問が浮かんだ。


「は?外でじゃないといけない話だからこんなとこに呼んだんじゃないの?」


「いや?別にそういうんじゃないけど。」


きょとん、とした顔で不思議そうに私のことを見返す。

それがあまりにも出来過ぎた顔であったため、何か企んでいるのだと確信する。

でも、私は気づかないふりをして、いかにも続けそうな言葉を並び立てた。


「じゃあ、わざわざこんなところに呼び出さないで。外だとまずいと思ってしっかりめかし込んで来ちゃったじゃない。」


確かに、間の抜けた格好では街に出られないと、オシャレをしてきた。


「へえ。鉄人もそんなこと気にするんだ。」


「あまり馬鹿にしたような口をきくと後が怖いぞ。覚えておけ。」


私の目を見て殺気を感じ取ったようだ。

冗談は言ってこない。

その代わり、


「はい……。」


そう、青い顔で言われた。







到着。


「やー、結構久しぶりだよね。美桜がうちに来るの。」


何度来ても思う。


豪華な家だと。


こんな、私みたいな一庶民が来ていいのか……。


そんなことを本気で考えさせられるほどの豪華さだ。

執事、メイドなどはいないものの、一般家庭では無いくらいの豪邸である。


「まあまあ、気楽に上がっちゃってー」


そう言って靴をぽんぽんと玄関に投げ捨てていくえみ里。とても豪邸に住む娘とは思えない。

とは言いつつも、何を諭すこともなく靴を脱ぎ、上がらせてもらった。


「お邪魔します」


形だけのあいさつを済ませ、えみ里の部屋へ直行する。


ドアを開け、部屋に入ると、いいにおいが鼻をつつく。


青を主とした部屋は、サッパリとしたえみ里の性格を思わせ、たくさんの小物が同時に女の子さを演出している。


「待っといて。あたし、着替えてくるから。」


そして、そそくさと部屋を出て行ってしまった。


何もすることがない私は、戸惑って。

だから、ただ部屋を眺めることにした。


勉強道具が整った机を覗くと、そこには信じられないものがあった。


えみ里と、男が映った写真で、仲良く手を繋いでピースサインをしている。

しかも、えみ里の頬がほんのり赤い。


これ………。


「ちょい、何してんの!……まったく、恥ずかしいでしょー?」


少し顔を赤らめたえみ里が眼前に立っていた。


「あの、えみ里、これ………。」


「ああもう!そうだよ!真一君ですー!どーせ美桜もナンパ野郎と付き合うなんて……って思ってんでしょ!」


その写真に写っていたのは、先日私たちに声を掛けてきた槇村という男だった。


「すご……。もう、そんなことになってたんだ。ってか………。………すご……。」


それしか出てこなくて、そればっかり言っていたら、えみ里の目が、嬉しそうに輝いた。


「えへへ……。真一君ってね、あたしたちと一つしか違わなくて。出逢ったときは、すっごい大人って感じしたじゃん?で、もうビックリって思って……。それにね、全然イメージが違うの!紳士的で、優しいけどちょっとわるそう……みたいな!」


急に語り出したえみ里を呆気にとられてみていると、ハッと気づいたように元に戻った。


「って、あたしの話は今日はどうでもいいの!今度ゆっくり聞いて!」


押され気味に言われて、心なしにうんと返事してしまった。

そしてその後、余計なことを言ってしまったと激しく後悔するのは、後の話。


「今日は!美桜のために時間を割いたの!」


ニッコリ笑うえみ里の手には、小さな何かの道具と思われる鞄が握られていた。


「美桜!!座って!!」





正直、面食らった。


何故なら、私は今えみ里にメイクをされている。


「う~んとねぇ……。この服なら、ナチュラルメイクだねー。しっかし美桜ってセンスまでいいのねー。」


「何がどうなってこんなことになってるの!」


暴れる私をおさえて、えみ里は作業を続ける。


「美桜を押さえつけてこんな事になってんのー。」


ニヤニヤと笑うえみ里に危険な香りがする。


「じゃなくて!どうして化粧なんてしなければいけないのかと聞いている!!!」


激昂する私をいとも簡単に封じ込め、淡々とメイクをし続ける。


「後で、分かるから。」


妙に落ち着いた声で言われ、動けなくなる。


「ちょい待ってて。」


それを最後に、言葉を発しなくなった。

えみ里の目が真剣だったから、私も暴れるのをやめる。


そして、しばらく経つと、


「終わったよー」


ふう、と息をつき、疲れたようなえみ里が言った。


「よし、行ってこい!」


背中を強く叩かれ、前につんのめった私は絶句して、


「何が!!!」


と、大きな声を出してしまった。


「そろそろ午前10時!!丁度いいタイミングです!行ってらっしゃい☆」


なのにえみ里はそれに臆することなく平然と言葉を続ける。


「いい?うちを出て、ゆっくり左に向かって歩いてくの。分かったら出てけ。」


はあ?

それを言い終わることなく、部屋から追い出されてしまった。

もう一度ドアノブに手を掛けると、中から


ガチャリ


鍵のかかる音がした。


あの女!!


心の中で罵詈雑言を浴びせかけ、穴が開くほどドアを睨んだ。


だが、睨んだところで何が始まるでもなく。

えみ里の言ったことを聞き入れることにした。


彼女は、人をだますなんて事はしないから、何か考えでもあったのだろう。


家を出て、左に進んで5,6歩、前方から軽快な足音が小気味よいリズムを刻んでこちらに向かってきた。


顔を上げると、ランニング中の遥都だった!!


やばいやばい!!こんな化粧してなにしてんだろって思われる……!!


咄嗟に近くの電柱に身を潜めたが、目ざとく遥都は気づいたようで、走るのをやめ、私のところに歩みを進めてきた。


「ねえ、みい姉でしょ……?」


うわぁ…。来たよ……。


えみ里のやつめ。何から何までこれが目的か……。


「はい、そうですけど。」


もう開き直って、振り向きながらニッコリと微笑むと、遥都が、少し怒ったような顔をした。


「……そのカッコ、何してんの」


ぶっきらぼうに、汗を拭いながら私に問う。


「や、秘密。」


目的が目の前にいるんですけど!?


「へえ~、俺に言えないようなことなんだ?」


な、なに……。

後ろの壁に手をついて、私を逃げられなくする。


……もう!なんで梨音がいるのにこんなことするの……。


悲しくなって、同時に嬉しくなる…。


ででででも!!

こんなの、端から見たら誘惑以外の何でもないでしょ!?


「そんなこと、いくらでもあると思うけど?」


心中のドキドキを悟られないように、強気な態度で臨む。

近づいてくる遥都から視線をずらすと、えみ里が窓から覗いていた。


目が合うと、えみ里は自分の頭を指し、音は出さずに口を動かした。


どうやらこう言いたいらしい。


『前から気づいてたから。機転を利かせたの。朝日奈、近所だったんで。』


そして、まるで小学生のようにほくそ笑んだ。

ピースサイン付きで。


私が怒り狂っていると、遥都から声が飛んできた。


「ねえ、ちゃんと俺のこと見てんの?」


見るからに苛ついている遥都は、やはり子どもって感じで、愛らしかった。


だけど行動は全然子どもなんかじゃなくて!


ズン、と遥都の顔が迫ってくる。


顔が熱い。


もう、とろけそう……。


……!

だめだめ!


えみ里が見てるよ……。


だけど、遥都は、私の目の前にいて、私のことしか見てない。


こんなチャンス無いのに……。



どうしよう……!

どうしたいの、私!



変なところで切って

すいません……。


次、できるだけ早く

更新するので許してください…。

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