揺れる
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ありがとうございます!
嬉しすぎて
いつでもニヤニヤしてます!
遥都。梨音。
彼らが私の目の前で手を繋いでいる。
そういえば同じクラスなんだっけ………。
2人とも、私の1つ年下で……。
仲がよくて、年も同じで。
付き合う。
……すなわち、好きになるには整いすぎている条件だろう。
最初から私の入り込む隙なんて無かった。
なのに、私は何を……。
勝手に浮かれて…。
馬鹿みたい……。
ふいに目の前が蜃気楼のように曇ってよく見えなくなる。
その時やっと気づいた。
私は泣いているのだ、と。
今の私にとって熱すぎる感覚が頬を伝う。
自然と声が漏れる。
声を出さないように我慢はできたけど、そうしなかった。
何故?
この悲しみを少しでも減らしたかったから?
むしろ、余計惨めになりたかったから?
たぶん、どちらも違うだろう。
ただ、寂しかった。
………恋しかった。
他人に興味なんて示さない。
愛なんて分からない。
関心を持つなんてこと、私の中には微塵もなかった。
でも、惹かれた。
ついこの前のことなのに、ずいぶん昔のことのように思えた。
にっこり笑う、その顔に…
その瞳に、吸い込まれそうになった。
でも結局、私の独りよがりで。
そう分かっているのに、離れない心が嫌で、だから私は
「馬鹿らしい」
その一言で、無理矢理蹴りをつけることにした。
駅でひとり涙を流す私。
今更ながら、この状況に急激に恥ずかしくなってきた。
周りを通過する人々は訝しげに私を見る。奇怪なものを見る目で。
それがたまらなく嫌で、近くの公園に逃げることにした。
小さな公園だった。
日も沈みかけているそこには、人一人いなかった。
その中に、持ち手の鎖が錆びたちっぽけなブランコがあった。
私は低すぎるそれに腰掛けた。
キィ……、キィ………。
間の抜けた音を出すブランコに笑ってしまう。
まるで、今の私みたいだ。
高く、漕ぎたい。……高く…。
そう思って、地面を勢いよく蹴り出す。
すると、やはり低すぎるからか、足を激しくひねってしまった。
「……った…!」
声だけ漏らす。
いつもなら、こんな単純なことやらかさない。
いつもなら、こんなに感情乱さない。
そう……、いつもなら……。
きっと、今の私は酷く滑稽だろう。
そして、それと同時に、なんて情けないのだろう。
どうして、こんなに辛いの……!
悲しくて、また涙が溢れる。
噛みしめた歯の間からは、情けない嗚咽が漏れる。
熱くて、冷たい私の涙は、頬を伝い、あごから滴り落ちる。
彼を想い、一喜一憂して、……それだけで幸せだったのに……。
何度も、何度も、何度も……。
零れ落ちる涙は、頬を通過するたびに熱さを増すようで、それを紛らわせるように高く、高く、ブランコを漕ぎ続けた。
そして私は、悔しいくらい綺麗な橙の空に、高く舞った。
前に揺れて、後ろに揺れて、これでもかというほど風が強くあたる。
それが何故か妙に涙腺を刺激して、
…いつの間にか嗚咽は泣き声に変わっていた。
「……っ……、ふぇ……っ…!」
時折、鼻水をすすりながら泣き続ける。
次第に声は大きくなって、閑散とした小さな公園に木霊した。
もう辺りは薄暗い。
……帰ろう。
決意を固め、公園を出た。
ゆっくり、ゆっくり、歩いて行く。
帰ったらきっと、梨音は泣きながら心配していて…。
頭の中で想像すると、可笑しくて笑えてきた。
でもそこに、さっきの駅でのことがぶり返される。
私の目は光を失い、
「もうちょっとだけ……」
そう、自分に言い聞かせるように呟いて、くるりと身を翻した。
私は、いつまでも気持ちの整理がつかない私自身に向けて自嘲的に笑った。
その時、聞き覚えのある声を私の耳は捉えた。
「みい姉!!!」
姿を見せなくても、誰だか認識できた私は、振り返りながら呼びかけた。
「は……ると…?」
目の前には、ゼェゼェと息を切らした遥都が立っていた。
「なんでいるの……?」
私の問いには答えずに、遥都は怒鳴った。
「バカ!!アホ!!」
急に、怒られて少し混乱する。
「心配かけんな……。」
すこし赤らめた顔を向けて呟く彼に、やっぱり簡単には心は動かない……、そう思った。
「なんで頭いいくせにそんなことも分かんねぇんだよ……。」
わたしの頬にそっと触れる。
真っ赤に泣き腫らした目を見て、涙の跡をなぞる。
「辛かったの…?」
私はまさか、あなたのせいとは言えるわけがない。
肯定も否定もしない私に、少し寂しそうな目を向けて
「なんで俺にいってくんないの……」
そう言って、悲しそうに目を伏せた。
その姿が、幼くて、
愛しくて……
枯れてしまった涙が、また零れてしまう。
「帰ろ。」
涙を拭って、彼を見ると、間違うくらいに大人びていて優しい瞳をしていた。
私も、肯定を意味する動作をして、歩き出す。
すると、壊れ物でも扱うみたいに優しく、指を絡めてきた。
驚き、彼を見ると、何も言わずにただ、ニッコリと私の好きな笑顔をみせた。
あったかい……。
素直にそう思った。
だけど、梨音もこの手を握ったんだなって思うと、嬉しいのに、悲しい、変な気持ちになった。
今日、好きな人と手を繋ぎました。
でもそれは、とっても辛くて、そして切なくて……。
驚くほど明るい月が、儚そうに私たちを照らしていました。
長くなってしまいました。
申し訳ありません。