2人の美人と男の子
ついに
遥都登場です!
今日は金曜日。最近やたらと長い一週間の終止符でもある。
「梨音、早く起きてちょうだい。電車に間に合わなくなってしまう。」
起きない。
彼女は私の義理の妹。くりくりした大きな目に小さな可愛らしい鼻、薄いくちびるを柔らかそうな肌に持っている。髪は、ストレートで染めてはいないが茶色がかっていて肩の辺りで揃えている。姉の私が言うのもおかしい気がするが、とてつもない美少女だ。
「美桜姉は早起き過ぎるでしょ~……んん…」
「朝食は用意しておいた。顔を洗って、しっかり食べて、歯を磨いたら声をかけてちょうだい。」
「ん。わかった。」
そういっていそいそと着替えをはじめた梨音だったが、急に大きな声を出した。
「ああっっっっっっ!!!」
「うるさい…。」
「ああっ!ごめんね美桜姉。大丈夫?」
鬱陶しい………。
「大丈夫だから。で、どうしたの?」
「あっ!そう!そうなの!あたし今日日直だったの!」
またか。
この間もあったような気がするが。
「そんなこと…。一緒の日直は誰なの?」
一回考えるそぶりを見せてから、ハッと気づいたようにいう。
「あっ。遥都だよ。そうそう…遥都だ。」
っ。やばい。この間のメールの件から「遥都」と聞くと、顔が火照ってしまって、恥ずかしくなる。
「美桜姉?どうしたの?顔真っ赤だけど……。も、しかして。」
「っ。違う!私は何も考えてなんかないっっ!!」
「風邪、引いちゃった!?」
と、私と梨音は同時に叫んだ。
……梨音がアホでよかった。
不覚だ。いつも何事にも動じない私は…。
何に焦ってしまったのだろう。
私は、何に反応してしまったのだろう…。
本当は気づいている。
……そう、今日は私も日直だった!!
「……美桜姉?」
「何でもない。もし遅れるようなら、遥都に日直を頼めばいい。…というか、そんなことはどうでもいい。
今日は私も日直なので、先を急ぎたいだけ。もう出たいんだけど、梨音、終わった?」
「えっ!ちょっと待って!もう少しで終わるからっ!」
急いでかき込む音と、洗面所に慌てて走る音を背に、私は家を出た。
家を出て10分程たった。後ろからタッタッと軽快な足音がどんどん近づいてくる。
もう追いついてもいいはずなのに、すぐそこで、ずっと鳴り止まない。
そろそろだぞ。…そろそろ私も限界だ。
まだ追いつかない。
プチッ…
何かが切れる音がした。
……ような気がした。
「梨音!!!うるさいっ!!そしてしつこっ………」
ふり返りながら怒鳴ると、そこにいたのは、
「ようっ…。わりっい…」
そう、やっとやっと絞り出すと、目の前の人物、朝日奈遥都は突然笑い出した。
「は…ると…?」
気づけば、駅はすぐそこ。もう遥都がいてもおかしくない場所だった。
みるみる顔が赤くなっていく。自分でも分かるくらいに。
「ははっ。あ~!笑い疲れたわ。ちょ~ウケた。」
「なっ、何でそんなに笑っている!」
「だっておまえっ!顔が!いっつも無表情で美人なお前が顔ゆがめて怒鳴ってんだぜ?おまけに今、顔超真っ赤だし!」
顔から火が出そうだ。
でもそれは、遥都に笑われたからではなかった。
「美人……?私が…?私の、どんなところが…?」
「えっ」
すると、遥都にまで伝染したみたいに、彼の顔が真っ赤だった。
「や…それは違うぞ?俺の友達がなっ!その~藤城先輩美人って!………でも、綺麗だとは思うかな。
目は切れ長で、なんか、紅茶みたいな色してるし、鼻も、シャープだし、く…ち、びるだって……なあ!」
近くを通った、知り合いでもない通行人に、話を振る。
「!?」
「じゃあ、俺、そういうことだから!ガッコでなっ!」
遥都の姿はどんどん小さくなっている。でも、なんでだろう。
顔は、さっきよりも熱くて、心臓もドキドキしてて……
止まらないの。
美桜は、以外と
天然でした。