夢と現と幻
こんばんわー
最近忙しいので更新
遅くなってしまうかもしれませんm(_ _)m
行かないでよ…!
私、そんなに遠くへ行けないの!
どうして?
俺のとこ、来たくないだけじゃないの?
ち、がうよ……!
行かないんじゃないよ、……行けないの…!
でも、……遥都の傍に居たい!
じゃあ
俺が遠くに行っても追いかけてくれる?
無理、だよ……。
どうしてなの?
だって、遥都は……………、
最後に、微かに遥都の声が耳に響いた。
「みーお姉! ご飯だよー! 机片付けてー」
意識の端で、梨音の声が聞こえたような気がした。
「美桜姉! 起きなさい!!」
被っていた毛布が無理矢理はぎ取られた。
寒い。
顔を上に向けずに呻き声を漏らす。
「……っ…。う……、うぅん……」
「もう! どうしたのー? いっつも超目覚めいいくせに、昼寝なんてしてー。余計目がさえちゃうじゃん。……美桜姉? まだ寝ぼけてんの? はあぁー。顔洗ってきて! すぐに! ゴー! ナウ!」
私に説教するのが嬉しいのだろうか。
笑みが漏れそうな顔を必死に堪えている。隠しきれてないが。
「今 洗ってくるから」
のそのそと立ち上がり洗面所へ向かう。
電気をつけ、鏡を見るとうっすらと涙の跡が見て取れた。
梨音に見られなかっただろうか。
恐らく大丈夫……、見られてたら騒がれるし……。
こぢんまりとした洗面所の何ともちっぽけな蛇口をひねり、冷たくなってきた水をすくう。
刺すような冷たさは、私の体温を奪うだけなのにやけに気持ちよかった。
パシャリ……。
三回ほど顔に浴びせかけ、頭を醒ます。
タオルで顔を拭い、今一度鏡を見れば殆ど無意識のうちに溜め息が漏れた。
ここ最近、私 泣いてばかりじゃない。
想ってるだけ、なんて。
ただの綺麗事なのに。
するとまた、情けない程小さな溜め息が口の端からこぼれた。
「あっ! 美桜姉! 目ぇ覚めた?」
キッチンで作業に勤しむ梨音の声からは、どこか楽しさが滲み出ていた。
「うん……。ありがとう」
実はまだ朧気だったのだが、梨音の手元を見てギョッとする。
「り、梨音!? 何しているの?」
「あ、これ? なんか、失敗しちゃったみたい」
「もう、下がってていいよ! ご飯は私が作るから!」
正直、面食らっていた。
まさか私の妹がこんなに不器用だったとは……。
梨音も梨音で、自分の玩具を取り上げられた子どものように拗ねている。
その手元の物質は、原型が分からないほどに崩れていた。
「何を作ろうとしていたの……」
「ごめんなさい」
もう完全にいじけている梨音は、俯き、言葉を発することも億劫になっているようだった。
さすがにそんな姿を見れば、きつく接することもできなくなる。
「言い過ぎた……、ゴメン」
心の隅で思ってしまう。
私は甘いのかもしれない、と。
勿論それは、こういう日常的に起こることも含めてのことだが、
えみ里から、
『あんた、嫉妬とかっていう感情ないの? もっときつくしてもいいんじゃないの?』
と、梨音について意見されたところであった。
分かってはいる。
だけど、梨音にこの気持ちを向けたら遥都に罪悪感を感じてしまって……。
それに、……この気持ちが。
梨音を見るたびに膨らむこの黒い気持ちが……、
一旦解き放てば、もう抑える事なんて出来ないような気がして……。
だから、しっかりと向き合おうとせずに閉じこもる私は、
………きっと誰よりも卑怯で、……汚い。
思考がそこまで達したところで、携帯が震えだした。
『新着メール一件 朝日奈遥都』
うわぁ、遥都だ。
この間、メールで喧嘩別れみたいになって……って、
私、梨音だと思われてるんだっけ。
少しでもそう考えてしまった私に自分で嘲笑する。
すると、
「あっ! 美桜姉、メール来たっ! あたし、ちょっとトイレ行きたいから返信しといて!」
梨音が行ってしまった。
「携帯、持って行けばいいのに……。」
独りつぶやき、表情では嫌そうに取り繕っても内心、心の躍っている自分が嫌でたまらなかった。
『梨音、やっぱ俺決めた。 来週辺りにちゃんと決行する。』
遥都から届いたメールは、やはり私には分からない事についてだった。
『しっかり、』
内容が分からない私には、曖昧にして返すしか術がなかった。
結果、中途半端で送ってしまったが。
混乱していた私は、梨音が戻るまで待てば良かったという事実に気づかなかった。
しばらく経つと、また返ってきた。
梨音との絆の深さは分かったから…。
だから、もうこれ以上傷を深くえぐらないで……!
『夢、見たの。それ、すっごく胸騒ぎして……、だから。』
意味なんて、全く分からなかった。
だけど、目は不思議とそこへ向いてしまった。
…………夢、見たの。
…………ユメ、ミタノ。
そう、なんだ……。
私と一緒だね。
私もさっき、遥都の出る夢を見たの。
それと、妙な胸騒ぎ…ってとこも同じ。
夢でも会えたって喜んでたら、どこかに行っちゃうんだもん…。
『私も。胸騒ぎする夢を見た。』
送信画面で、送信されたことを確認してから携帯をその場に置いた。
++++遥都++++
梨音に、報告をしないと。
そんな気持ちで、メールした。
『私も。胸騒ぎする夢を見た。』
何かが、突っかかっていた。
この前と今日……。
まるで梨音じゃ無いみたいなメールで…、みい姉、みたい、な……。
今日の梨音との会話を思い出す。
『遥都は、このままでいいの?』
『はぁ? いきなり何?』
『だーかーらー! あの作戦だってば!』
『ちょ、お前デケぇ声でそんなこと言うなよ!』
『……。……だって、あたし……』
待って、
“あたし”……?
過去の受信履歴をいくつも確認する。
メールでも、口調が変わるわけではなかった。
もらったメールの全ての一人称が“あたし”だった。
……と、いうことは……、
相手は……、みい姉、なのか……?
そう意識した途端、心臓が喉から出てくるのではないかと言うほど飛び跳ねた。
そしたら、俺……。
++++美桜++++
行かないでよ……!
俺のこと、追いかけてきてよ。
出来ないの……!
夢の続きを思い出そうとしていた。
どうだったんだっけ……?
とっても、大事だったと思うのに……。
思考を巡らせていると、携帯が、机の上で携帯が振動した。
『俺が見た夢、みい姉なんだ』
遥都からのものだった。
何を伝えたくて送ったのか、分からなかった。
自分が今、どんな顔をしてるのか、分からなかった。
だけど、不思議なことにこのメールを見て、夢の続きが鮮明に脳裏に蘇った。
+++++
俺が遠くに行っても追いかけてくれる?
無理、だよ……。
どうしてなの?
だって、遥都は隣にもう、いるじゃない…。
俺に?
いないよ、そんなの。
俺は、……俺には!
……みい姉が居れば、…………それでいいんだ。
遠く、遠く。
耳に残って尚も離れない、甘くて一番、残酷な言葉が、蘇ってしまった。
走り出した運命……!