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光翼のリベンジャー  作者: 蒼鳥
第一章
8/32

第五話

 翌朝。窓の外から朝を告げる小鳥達の声がよく聞こえる。俺はこの鳴き声を聞きながら朝を迎えるのが結構好きだ。



 しばらく聞いてから体を起こすと気持ちよく起きられるからである。


 しかし昨日は聞いていたら二度寝してしまい遅刻してしまったので、さすがに今日はすぐに起きる。

「……体中が痛いな」

 特に腰あたりが痛む。


 昨日の罰掃除とその後の鑑賞会での夜更かしでどうやら疲れが残っているらしい。


 そんな疲れが残っている体をほぐしながら俺は朝食の準備を始めた。


 朝食はいつも簡単なものを作る。今日はスクランブルエッグとトーストだ。

 ちなみにこのスクランブルエッグは何ヶ月か懸けて編み出した、俺オリジナルのだ。


 味付けはもちろん、具にベーコンや玉ねぎ、トマトなんかもたまに入れる。

 これがパンなどにかけてもおいしいのだから食欲が湧かない朝にはもってこいだ。


 眠い目を擦りながら朝食を作り終え、ゆっくりとテレビを見ながら食べているとチャイムが鳴った。


(凛華かな……)


 いつもこのくらいの時間に凛華は俺の部屋にくる。俺は食べかけのトーストを口にくわえたまま玄関に向かった。


 ドアを開けると予想通り凛華がいた。

「おはよう日向」

「おはよう」


 いつもどおりの挨拶をする。と、凛華は制服をいじりながら少し恥ずかしそうにしていた。


「ね、ねぇ。制服似合ってるかなぁ?」

 どうやら上級生徒の新しい制服が似合っているかどうか気になってしょうがないらしい。

 そういえば昨日もその制服だったけど遅刻しそうで(結局したけど)それどころじゃなかったな。


 上級生徒の制服は下級生徒の子供っぽいものとは違い、清楚でいかにも大人っぽい感じだ。


 凛華の凛とした雰囲気もあってか、結構似合っている。


 スカート丈も短くひらひらしていて、胸以外は女子の理想の体型をした凛華が着ると幼馴染の俺でも可愛いと思うほどだ。


 そのほどよく引き締まった太ももが少し覗いているのもナイスだ。すばらしいよ。


 これが初めての出会いだったら一目惚れしていたかもなぁ……。


「ひ、一目ぼッ!? …………そ、そんなにいいの?」

「うんうん。こりゃお前がモテてるのもうなずけ――ってあれ、もしかして俺全部言ってた?」

「う、うん」

「なっ!?」

 ガッデム! まさか声に出していたとは。


 その事実に戦慄する俺と、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに目を右往左往させる凛華。


 ……や、やばい。これは恥ずかしさで死ねるレベルだ。


「と、とにかく似合っているから大丈夫だ」

「あ、ありがとう……」

 いまだに凛華は顔を真っ赤にしていたが、それでも嬉しそうだった。


 ……まぁ喜んでくれたならいいか。


 支度が終わるまで待たせるのも悪いので、玄関に戻りながら聞く。

「朝食余ってるから食べてくか?」

「うん。そうする」

 凛華は二つ返事でうなずき、「おじゃましま~す」と礼儀よく挨拶をして入る。


 俺と凛華が朝食を一緒に食べるのは入学してから結構あることだった。

 俺が朝食をいつも多めに作ってしまうということもあるが、凛華が料理するのは苦手だというのが一番の理由だ。

「やっぱ日向のスクランブルエッグはうまいわね」


 凛華がスクランブルエッグを頬張りながら言う。ちなみにスクランブルエッグは凛華の大好物だ。


 幸せそうに、もふもふ食べている姿はまるで小動物のようでなんだか可愛い。

「ありがとさん。凛華もスクランブルエッグくらいは作ってみたらどうだ?」

「むむぅ……私が料理苦手なのを知ってるくせに。日向の意地悪」

 眉を眉間によせながらぶつぶつ言い訳をする凛華。


 卵をフライパンで炒めるだけなんだけど……。


「まぁまぁ。それより今日は新しいクラスの発表もあるし早く食べて行こうぜ」

「うん」

 凛華はそれほど気にしてなかったのか、怒ることもなく素直にうなずく。

 普段もこうだったらいいんだが。


 それから俺達は少し早めに朝食を食べ、すぐに登校する。

 寮から学園までの距離は近く、普通に徒歩で行けば十分くらいだ。


 なので、凛華と話しながら行くとすぐに着いた。


 学園に着いた俺たちは校門近くにいた教員から新しいクラス表をもらう。

「今年こそは日向と同じクラスでありますように――」

「ん? なんか言ったか?」

「べ、別に何も言ってないわよ」


 なにか呟いていたような気がしたが俺の気のせいだったか。


「お、今年は俺たち一緒じゃん」

「え! ホントに?」

「あぁ。トオルや焔さんも一緒だな」

「へ、へぇ……」

「? どうした」


 いきなり黙り込んだ凛華に心配そうに聞くと、


「う、うるさい! なんでもないわよっ!」

 叩かれた。

 このポカポカ叩いてくるのは見た目以上に痛いんで俺は手で防ぎながら一応謝る。


 しかし凛華は、バカ日向! 鈍感! アホぉおお!! と俺の悪口をさんざん叫んだ後、一人ですたすたと先に行ってしまった。


 ……理不尽にもほどがあるぜ。


 しかしまぁしばらくすれば機嫌も直るだろう。

 俺はため息を吐いてから新たな教室へと向かう。






 教室に入ると結構人がいた。


 皆新しいクラスの発表日だから早く来たのだろうか。


 仲のいい友と喋っているもの。


 一人で本を静かに読んでいるもの。


 疲れたのか、机に突っ伏して寝ているもの(ちなみに後で確認したらトオルだった。昨日の徹夜がひびいたのだろう)。


 どうやら何回かクラス替えをしているから慣れているようだ。


 俺は熟睡しているトオルの頭に忘れていた昨日の不法侵入の罰として、思いっきり鉄拳を叩きこんでから自分の机に向かった。



「席に着け~」

 座って一休みしているとチャイムが鳴り、だるそうな声とともに担任だと思われる教員が入ってくる。

 教員は壇上の上にクラス名簿を置いた後、出欠を確認しはじめた。


 そして次が焔さんになったとき。


「焔香奈。…………ん? 休みか」

 焔さんが休み? 昨日別れたときは元気そうだったんだけどな。

「まぁいいか。そうそう上級生徒は下級生徒と違って午後からすべて各課棟での専門授業だからな。忘れんなよ」


 下級生徒のときは午後まで普通の学校と同じ授業をやり、放課後から専門授業だったが、上級生徒になると午後から専門授業なのか。


「それと迎撃科は専ブレを持っているものは持ってくるように」


 専用機ブレイカー、ね。


 適性率が規準を超えたものに与えられる個人専用ブレイカーのことだ。よく略称として、「専ブレ」、「専用機」などと呼ばれている。

 ブレイカーは人の感情をエネルギーとし、所有者の意思とのリンクを可能にした変幻武器だ。


 アグレッシンには「コア」と呼ばれる唯一無二の弱点があり、そこを破壊することでアグレッシンは活動を停止し、死ぬ。



 しかしミサイルなどの既存の兵器ではコアに到達する前に鱗でふさがれるか、かわされるため、あまり効果がないらしい。

 そこで対策本部は確実にコアに攻撃できるために動きの自由が利く人が持てる武器で、なおかつアグレッシンの硬い鱗に防がれても耐えうる強度を持つ武器を作成しようと試みた。


 結果完成したのがこのブレイカーというわけだ。


 そして前述したとおり所有者の意思とリンクするので、形状を所有者の思ったとおりに他の武器に変化させることができる。


 ようは『銃などで足止めしつつそのまま接近武器で止めを刺す』といった戦法をブレイカー一つでこなせるということになる。

 性質なんかも変化した武器が基準となるからだ。


 そして変化の速さや武器の威力などに関係するのが適正率。


 専用機ブレイカーの最大の利点はやはりその適正率が上がりやすくなるところだろう。


 適性率が高いと、ごく稀にだが超能力のようなものが使える者が現れたりする。逆に適性率が低いとブレイカーが起動すらしない。


 ちなみに、俺も凛華も適性率が専用機の基準適性率よりも高いので専ブレ持ちだ。

「それじゃ朝のHRホームルームは終わりだ」


 その後も簡単に下級生徒との違いを教えた教員は、「もう用は済んだ」といわんばかりにそそくさと教室を出て行った。


 それから俺たちは次の授業の準備をはじめる。


 ……ちなみにこれは昼休みになる前に気づいたことだが、俺達はこのとき一番重要な説明を聞いていなかった。


 そう。それは担任であるはずの教師の自己紹介だ。


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