第四話
最初に言っておくがこいつは俺の入学当初からの付き合いではあるが、親友ではない。ただの悪友だ。
なぜ俺の部屋に招いてもいないクラスメートがいるのか……俺は今にでもぶん殴ってやりたい衝動をとりあえず抑える。
「んで、なんでお前がここにいるんだ?」
「罰掃除お疲れさん」
こいつ、フルボッコにしてもいいですかね。
「俺の質問を無視してもらっては困りますよ、トオルさん」
俺は有名な狙撃漫画の主人公、ゴリゴⅩⅢも気後れするくらいの殺気をだす。
「なぁに、鍵を開けるくらい俺にとっちゃアリを踏み潰すようなもんよ」
だから質問の答えになってないし。
いやその前にアリを踏み潰すようなものって。俺の部屋のセキュリティどんだけ低いんだよ!
「まぁまぁ、落ち込むなって」
何に落ち込むんだよ!
むしろ、どうやったらお前を誰にもバレずに始末できるか思考中だよ!
それと、結構高かったふかふかのソファに勝手に座ってんじゃねぇ。
――いかんいかん。突っ込む要素が多すぎて俺のほうがおかしくなってきた。
ちなみにこいつは工武科で俺のクラスメート(いや、明日クラス替えがあるから『元』になるのか?)だ。
髪は染めるのに失敗したのかところどころ黒髪が混じっている微妙な金髪。
体ががっちりしていることもあり、見知らぬ人が見たらまず不良だと思われるだろう。背は俺よりも少し高い。
成績は中の上で工武科としての技術はあるらしい。だから普通ならそこそこモテるのだろうが……こいつは全然モテない。
さっきみたいに人の話を聞かないところもあるが、俺が思うにモテない理由は別にある。
「なぁ、日向。今日はこれを持ってきたんだぜ」
少し偉そうに宣言しつつトオルが側にあったかばんの中から出したのは……エロ本だった。
そう、俺が思うにこいつがモテない理由は『変態』だからだと推測する。
それにしても、エロ本を堂々と見せつけてくるこのアホ……まるで、小学生が徒競走で一位をとってきたときのような顔をしてやがる。
どんだけ嬉しいんだよ。
「またそれか」
こいつはよく買ったエロ本を俺の部屋に持ってくるのだ。
なぜ俺の部屋かというと……まぁ、俺も健全な高校生なのである。
正直言って見たい。
いや、決して邪な考えがあるわけじゃあないんだ。
しかし自分で買うほどの度胸はないのでこうして見せてもらってるわけだ。健全な男子学生諸君なら分かってくれるって、俺信じてる。
「そんなこと言っちゃってよぉ~見たいだろぉ~?」
「……まぁな」
くそっ! こいつすげぇむかつく! 今すぐ殴りたい!! けど持ってきてくれたから許す。
「んで、どんなやつなのよ」
「ふっふっふ。なんと…………ポニテ特集なのよ」
な、なん……だと!? ――っは! いかんいかん、またおかしくなってしまった。
それにしてもポニテの子とは……ごくり。
いままでトオルがもってきたのは、どれもエロ本ではありきたりの巨乳押しのばかりで正直つまらなかった(決して貧乳萌えなのではない。決してだ)。
が、ポニテの子となれば話は別だ。
今すぐにでも見たい。というか見せろ。
「トオルよ、ついに見つけたのだな」
「あぁ。俺はやったぜ、親友!」
「さすがだ我が親友よ!」
ガシッ!
俺達は熱い友情の握手をした。
そう。それは俺たちが初めて知り合った日からの、ポニテの子のエロ本を見つけるという夢が叶った証。
それはポニテは正義だという証。
それは友情は見返りを求めないという証。
それは喧嘩せず交互に見ようという証。
それはこれから鑑賞会を始めようという――
あぁ、俺はこいつに敬意を払おう。
すばらしく目の保養を手に入れてきてくれた、こいつに。
「さぁ、鑑賞会といこうぜ、親友……ぐふふ」
「もちろんだとも、親友……げへへ」
こうして俺らは変態だと思われても文句が言えないくらい、にやけた顔をしながら徹夜の鑑賞会を始めたのだった。