私を虐めた伯爵令嬢は破滅へ。虹を見せた私は公爵令息の婚約者になりました。
アメディアナ・バレン伯爵令嬢は、緊張していた。
初めて王宮の夜会に出席するのだ。
父であるバレン伯爵にエスコートされて、王宮の夜会会場についた時には眩暈さえした。
薄水色のドレスにイヤリング。金の髪を巻いて目いっぱいおしゃれをしてきたのだ。
失敗したくない。
アメディアナはまだ婚約者がいない。
歳は16歳。美しさには自信があったので、もしかしたらこの夜会で、高位貴族に見初められるかもしれない。
だから、目いっぱいおしゃれをして、会場に入ったのに。
入った途端、足を引っかけられて顔面から思いっきり転んだ。
「あら、ごめんなさい。アメディアナ。貴方も来ていたのね」
王立学園で同じクラスのルリーナ・キャスル伯爵令嬢が顔を歪めて笑っていた。
同じ爵位を持つルリーナ。彼女も金の髪に青い瞳の美人で、何かとアメディアナの事をライバル視してくる。
仲が悪かった。
でも、さすがに初めての夜会で足を引っかけられるとは思わなかった。
「ちょっと何をするのよ」
ルリーナは深紅のドレスをひらひらと翻して、
「貴方がぼやっと歩いているのがいけないのよ」
父であるバレン伯爵が、
「今のは故意ではないのか?我が娘を転ばせたのは」
「まぁ私が故意で転ばせたという証拠はどこにありますの?」
上目遣いでバレン伯爵を見るルリーナ。
ともかく、他の貴族の令息に見られた事が恥ずかしくて。
鼻をすりむいていないかしら……
まだ婚約者のいないアメディアナは、夜会での出会いを期待していた。
玉の輿に乗れるのなら乗りたいわーーー。
その時、銀の髪にそれはもう美しい令息から声をかけられた。
「私はラントス・カルディウス。カルディウス公爵家の嫡子だ」
この男性がラントス様?
美しくて優秀で有名なラントスは、何故かいまだに婚約者がいない。
歳は18歳。
胸がドキドキする。
自己紹介をしようとしたら、ルリーナに突き飛ばされた。
ルリーナはラントスの前に出て、
「私は、ルリーナ・キャスルですわ。キャスル伯爵家の娘です。よろしくお願い致しますわ」
と、アメディアナが自己紹介する前に、さっさと自己紹介して自分を売り込むルリーナ。
アメディアナは泣きたくなった。
ルリーナはいつも意地悪で。
アメディアナは王立学園でも、ルリーナに虐められていた。
「アメディアナは、ぼやっとしているから。私はしっかりしているから、私を望む素敵な出会いがあるに違いないわ」
16歳になったら、この王国では王宮の夜会に出席することが出来る。
そこで出会って婚約をするというのが、この王国の風習であった。
だから、アメディアナも張り切っておしゃれをして父に夜会に連れて来て貰ったのだ。
素敵な出会いがありますようにと。
それなのに、ルリーナに邪魔されてしまって。
ルリーナがラントスに擦り寄って、
「私など如何です?私はとても優秀でしっかりしていて、この通り美しいですわ。ですから」
後ろに仕えている男にラントスは、
「この女性は?」
「ルリーナ・キャスル伯爵令嬢でございます」
「調査書を」
ラントスはうやうやしく差し出された紙とルリーナを見比べて、
「却下だな。品性最悪、口の悪さも天下一。我がカルディウス公爵家の嫁としてふさわしくない」
ルリーナは目を見開いて、
「何を証拠にっ」
ラントスは平然と、
「調査書は嘘をつかない。お前が色々な令嬢達を王立学園で虐めて、悪口を広めていることは解っている。いくら美しくても品位がないと我がカルディウス公爵家の恥になる」
アメディアナは思った。
さすが、公爵家、怖いわっーーーと。
調査書持参で嫁探しなのねっ。
まぁ確かに、私もお父様に頼んで、声をかけてきた令息の事は調べてもらいますもの。
ラントスにアメディアナはちらりと見られた。
そして、アメディアナに向かって、
「そなたは?どちらの令嬢だ?」
「アメディアナ・バレンでございます。バレン伯爵家の娘です」
ラントスは付き添いの男性から調査書を受け取って、
「王立学園の成績は中位。容姿は美しいが、取り立てて秀でた所がないか。残念だったな。私に見初められないで」
「いえいえ、めっそうもない。失礼致します」
胸がドキドキしたが、こんな人だとは思わなかった。
だから、アメディアナは慌ててラントスの前から逃げ出した。
その後、何人かの令息から声をかけられて、ダンスを踊ったけれども……
次に会いたいとか、そういう話は一切なかった。
顔だけは自信あるんだけど……
凄く悲しかった。
王立学園の図書室へ調べ物をしに行ったら、ばったりとラントスに会ってしまった。
気まずい。
取り立てて秀でた所のない令嬢のイメージをしっかりとラントスに指摘されてしまって。
顔を見たので一応、頭を下げるだけの挨拶をした。
ラントスは近づいて来て、
「この間は失礼な物言いをしてしまった。申し訳ない」
謝罪された。
「いえ、本当の事ですので。失礼致します」
慌てて傍から離れた。
ラントスに呼び止められた。
「君は異能持ちか?」
「はい?何故そこまで知っているのですか?」
「我が調査を甘く見ないで欲しい。雨を降らせる事が出来るとか」
「小範囲です。それも低位の」
「見てみたい。見せてくれぬか?」
図書室から中庭に出た。
そこでアメディアナは天に向かって両手を翳す。
空は晴れているのに、細かい雨が降って来た。
中庭に綺麗な小さな虹が出て来て。
ラントスは目を見開いて、
「美しいな。なんて綺麗な虹だ」
「この程度の異能です。我が伯爵家では祖母が雨を降らせる能力があったそうです。祖母はもっと広い範囲で降らせる事が出来ましたが、私はこの程度しか」
「そうか……私の母上も亡くなってしまったが、よくベッドから庭を眺めていた。雨が好きで。雨の音を聞くと落ち着くのよって。よく私に言っていたな。何だかそれを思い出してしまった」
「そうなのですか……」
中庭の植物が雨に濡れてキラキラと光っている。
アメディアナは、
「そろそろ授業が。失礼致しますわ」
「雨を見せてくれて有難う」
そしてその日以来、何故かラントスに執着された。
帰りにラントスが待ち伏せして、公爵家の馬車でバレン伯爵家まで送ってくれるのだ。
アメディアナはラントスと色々と話しをした。
ともかく何か話さないと気まずい。
ラントスがぽつりと、
「私はきつくて、どうしようもない男だ。後で悪かったなと反省することが多々ある。それで君を傷つけたのではないかと」
気にしているようなので、慰めるように、
「そんなに気に病まないで下さい。そうですわ。いい物を差し上げます」
アメディアナは、ラントスに小さな花のブローチをプレゼントした。
「白くて可愛いでしょう。ラントス様には玩具みたいなものでしょうけれども、私が作ったんですよ」
ラントスは嬉しそうに、胸につけて。
「有難う。大切にするよ」
「それから私、犬が好きなんですよ。我が伯爵家にも犬がいて、とても可愛いですよ。小さいのですけれども」
「見たいな」
「ええ、見て行って下さいな」
ラントスに犬を見せてあげた。
小さくて可愛い犬はラントスに飛びついて。
ラントスは嬉しそうに撫でまわして。
「可愛いな。犬という生き物は」
「そうでしょう?癒されますでしょう?」
ともかく、この気まずい馬車の時間をなんとかしないと。
と、アメディアナは頑張った。
ラントスは何だか笑顔を見せるようになった。
割と、とっつきやすい人だということが分かった。
ラントスはモテる。
色々な令嬢達が廊下を歩いているラントスに纏わりついて、話しかける。
ラントスはまっすぐアメディアナのクラスに来て、アメディアナを呼び出した。
「今度の休みの日に、我が公爵家に来て欲しい。うちの庭は美しいぞ。一緒に見よう」
ど、どういうこと???
断ってはいけないのかしら?
ルリーナがアメディアナを突き飛ばして前に出て、
「私も一緒に行きますわ。私の事をもっと知って下さいませ。アメディアナなんかより、私の方が優秀でラントス様を癒して差し上げますわ」
ラントスはちらりとルリーナを見て、転んでしまったアメディアナに手を差し出し、
「大丈夫か?怪我はないか?」
「有難うございます」
「伝えたぞ。迎えの馬車を君の屋敷に寄越すのでよろしく頼む」
「解りました」
ラントスが去った後に、クラスの女子たちが、
「羨ましいわ。ラントス様を射止めたのね」
「凄いわ。アメディアナ。玉の輿じゃない?」
「羨ましい。ラントス様となんて」
ルリーナに睨まれる。
アメディアナにルリーナは、
「私も貴女の屋敷に行くわ。私も連れていきなさいよ」
「お断りします。ラントス様は私だけを招待したの。貴方を連れていく訳にはいかないわ」
「まぁ酷いっーーー。私の方がラントス様にふさわしいのにっ」
それにしても、困ってしまった。
少しは期待していいのかしら。いえ、私は秀でた事がないと言われてしまった。
うううううんん。困ったわ。どうしましょう。
公爵家の要請を断る訳にもいかず、王都の有名店で買った手土産の菓子を持って、思い切りオシャレをして、休みの日に、公爵家の迎えの馬車に乗って、カルディウス公爵家にお邪魔した。
カルディウス公爵とラントスと客間で面会した。
カルディウス公爵はアメディアナを見やり、
「そなたが我が息子が婚約を結びたいと言う令嬢か?」
アメディアナは慌てて、
「いえいえ、とんでもない。ご招待頂いただけです」
ラントスは、
「はい。父上。この令嬢と私は婚約を結びたいと思っております」
「えええええええええええええええっーーーーーー」
慌てて、
「お断りしますっ。」
「何故だ?何故断るっ?」
「婚約を結ぶのではなくて、庭を見せたいと言われたので今日来ました。私はとてもじゃないけれども公爵夫人なんて務まりませんわ」
「でも、私は……確かに調査書から君は平凡で、秀でた所がない令嬢だと。だから私も悩んで。カルディウス公爵家に嫁いで来る女性は優秀でなくては務まらないからな。
でも、雨を見せて貰って、綺麗な虹を見たら、なんだかずっと君と虹を見たいと思ってしまったんだ。そして、君と交流していくうちに、楽しくて楽しくて。だから、どうか私と婚約をしてくれないか」
「いえいえいえいえいえいえ。お断りします。優秀ではありませんから、公爵家に嫁いでも上手くやってはいけませんわ」
ラントスに向かって、
「どうか、貴方にふさわしい方と結婚して下さいませ。それでは失礼致します」
菓子を押し付けて慌ててその場を後にした。
数日後、何故かバレン伯爵家に家庭教師が二人現れて、
「カルディウス公爵令息ラントス様からの依頼です。貴方にこれから教育を施すようにと」
「私達が貴方様を教育致します」
胃が痛くなった。
ラントスはまだあきらめていないのだ。
断らないと。ともかく断らないと。
確かにラントスとの時間は気を使ったが、楽しかった。
でも、公爵夫人になる覚悟なんてないし器もない…‥
家庭教師の二人には帰って貰って、王立学園に行ってラントスを探して断ろうと思った。
廊下を歩いて上級生のクラスへ行こうとしたら、ルリーナが追いかけて来た。
「貴方なんて、ラントス様にふさわしくないわ。私の方がふさわしいのよ」
手を引っ張られて、外階段へ連れていかれた。
「ここから落ちなさいよっ」
アメディアナは悲鳴をあげた。
「助けてっ。やめてっ」
ドンっと落とされて、もう駄目だと思った。
がしっと誰かにキャッチされた。
青い瞳の見かけない金髪美男に受け止められていて。
「大丈夫か?お嬢さん」
「有難うございます。貴方が受け止めて下さったので助かりました」
ルリーナが顔を歪めてこちらを睨んでいる。
金髪美男は、
「ともかく、君は殺されかけたんだ。この事をしっかりと訴えた方がいい」
ラントスが階段の上から顔を覗かせた。
ルリーナがラントスに抱き着いて、
「あの子が勝手に落ちていったの。私、怖くて怖くて」
ラントスはルリーナを突き飛ばして、急いで階段を下りて来て、
「大丈夫か?怪我はないか?」
金髪美男からアメディアナを引き離して、抱き締めて来た。
アメディアナはラントスに向かって、
「私は怪我はありません。受け止めて貰いましたので」
金髪美男は気まずそうに、
「いやその俺は……」
ラントスは後ろに控えている男に、
「調査書を……この男についてだ」
調査書をうやうやしく渡す男から調査書を受け取り、
「変…辺境騎士団の四天王アラフ、屑の美男をさらって教育することが仕事?」
「いや、魔物討伐が本業だって騎士団長が」
ラントスはアラフに食ってかかる。
「俺は屑の美男かっ?????」
アメディアナは、言ってやった。
「ラントス様は屑の美男という訳ではありませんが、私の気持ちを無視するのが、気持ち悪いです」
「そんなに気持ち悪かったか???」
「家庭教師を二人、派遣してきましたよね。それって私に優秀になれと?」
「私は君と結婚したいんだ。だから優秀になってほしいと」
「私のどこに惹かれて?」
後ろの男性に向かって、
ラントスは調査書をと言って受け取り、
紙を見ながら、
「君はとても優しいみたいだな。他の生徒達に対して慰めたり、色々と悩みを聞いてやったり……君が花に水をやる景色はとても美しくて……そんな君の傍で私は暮らしたい。母上を思い出すんだって、いやこの間、言っただろう。君と交流していくうちに楽しくて楽しくて」
「この後ろの方、どなたです?」
「私の能力が生み出した調査員だ」
「はい?」
「私も異能を持っている。調査員がいつも傍にいて必要な情報を出してくれるんだ。私はつい能力に頼って理想の女性を探してしまっていた。でも、私は…君の事が好きだ。だから私の為に優秀になって、公爵家に嫁いできて欲しい」
ちらりとラントスはアラフを見て、
「だから私は屑の美男ではない。私に用はないだろう?」
アラフがアメディアナに聞いてきた。
「で?どう思う?アメディアナ嬢」
「屑ではないけれども、私の意向を無視するのはちょっとって感じですわ」
「そうだよなぁ。かといって攫う程の屑でもないというか」
学園の職員たちが来たので、ルリーナを拘束して貰った。
「私がふさわしいの。アメディアナなんてふさわしくないのよーーー」
ラントスはルリーナに調査員が渡した書類を突き付けて、
「ここにお前の悪行の数々が書いてあるっ。誰がお前なんかと結婚するか。殺人未遂だろうが。牢屋でしっかりと反省するがいいっ」
ルリーナは連れていかれた。
牢屋に入れられて当分、出てこられないだろう。
何だかアメディアナは色々と疲れてしまった。
学園から戻って、信頼なる祖母に相談することにした。
アメディアナ以上の異能を持ち、雨を降らせる事が出来る祖母リメリア。
リメリアはアメディアナに対して、
「お前がラントス様の事を好きだというのなら、努力してごらん。今から諦める事はない。雨の神様は全てを見ているわ」
と言われた。
プライドが高いラントス。
勝手に家庭教師を送り込んできたことは許せない。
許せないけれども。
ラントスが謝罪に訪れた。
「ごめん。君の意向を無視して家庭教師を送り込んでしまって。私は酷い男だな。本当に‥‥」
「ラントス様」
「君が階段から突き落とされた時、心臓が止まるかと思った。愛している。君の事が好きだ」
後ろの調査員がうやうやしく紙を差し出して来たがラントスは首を振って、
「調査書で君が優しい女性みたいだなと言ってしまったが、馬車で私を気遣う君に私は惚れたんだ。アメディアナに対してはもう調査はしない。私は君を信じて生きるよ。だからどうか私と婚約をしておくれ」
私はラントス様の事が好き…
まだ分からない。分からないけれども。
少しでもラントスの為に努力をしてみようと初めて思えた。
家庭教師を受け入れて、アメディアナは必死に勉強した。
カルディウス公爵家の事……
王国の事。社交界の事。カルディウス公爵夫人として将来、恥ずかしくないように。
ラントスがとある日、訪ねて来た。
テラスでラントスを出迎えた。
アメディアナは、
「ラントス様。わたくし、ラントス様との婚約を受け入れようと思っております」
「アメディアナ」
「わたくしも貴方と、虹を見たいと思いましたの。ですから、これからよろしくお願い致しますわね」
両の平を天に向け、雨を降らせると、小さな虹が庭にかかった。
ラントスはアメディアナの腰を抱き寄せて、
「これから、よろしく頼む。アメディアナ」
この選択に後悔はないわ。
ラントス様と共に、わたくしは未来を歩く覚悟をした。
雨の神様。どうかわたくしとラントス様を見守って。
美しい小さな虹を二人はいつまでも見つめていた。
キラキラと虹は美しく輝いているのであった。
ルリーナ・キャスル伯爵令嬢にとっては、目の上のたんこぶなのが、あのアメディアナ・バレン伯爵令嬢であった。
美しさも同程度で、王立学園の成績も似たような中くらい。
でも、アメディアナは同じクラスの女子生徒から人気があったのだ。
色々な令嬢達とにこやかに話しをし、悩みがあったら聞いてあげる。
だからルリーナは許せなかった。
なんでどうして?あの女は人気があるの?
私は絶対に、あんな女よりも玉の輿に乗って将来、あの女を見下せる立場になってみせる。
だから、あの女に意地悪をした。
悪口も言いふらした。
あの女が大嫌い。
ただただ、いい顔をしているだけよ。
私はとても美しいから、私こそ玉の輿に乗るにふさわしい女よ。
だから、あの女がラントス・カルディウス公爵令息に見初められたのが許せなかった。
死になさいよ。
あんたなんか死ねばいい。
階段から突き落とそうと、踊り場にあの女の手を引っ張って、そしてドンと踊り場から女を落とした。
階段の方角ではなくて、直接、落ちるように背中を押して、
下であの見知らぬ金髪美男が受け止めなければ、間違いなくあの女は死んでいたのだ。
それなのに、なんて男よ。あの男。
よくも邪魔してくれたわね。
社交界で最高に輝くはずの私が、今や牢の中にいる。
どうしてなんで?なんで私が牢の中にいるの?
牢の中は不潔で汚くて。
お父様お母様に手紙を書いて迎えにきてと頼んだけれども、ちっとも返事が来ない。
どうしてなんで?私はキャスル伯爵家の娘よ。
貴族なのよ。
お兄様がある日、牢に顔を出しに来た。
「お前はなんて事をしてくれたんだ。人一人を殺そうとしたんだぞ」
「だって、私、あの女が憎かったのですもの。ぽやっとした顔をして、玉の輿に乗って。玉の輿に乗るのにふさわしいのは私のはずよ。それなのに。あの女が玉の輿に乗って。ラントス様は私の悪口ばかり」
兄は顔を歪めて、
「お前のせいで、我がキャスル伯爵家はカルディウス公爵家に睨まれた。事業提携の話も出ていたのに、それも無しになった。全てお前のせいだ」
「私の事を認めてくれないカルディウス公爵家が悪いのよ」
「お前は反省もしないのだな。父上母上が嘆き悲しんでいるぞ」
「反省?なんで私が反省をしなければならないの?私こそカルディウス公爵夫人にふさわしいはずよ。ああ、きっとラントス様が後悔して迎えに来るわ」
「カルディウス公爵家に睨まれたと言っているだろう?我が領地の鉱山を3つ手放して、カルディウス公爵家に謝罪した。後、バレン伯爵家に慰謝料を払った。私が爵位を継ぐまで我が伯爵家は持つかどうか」
「私が悪いのではないわ」
「お前を牢から出してやろう」
「お兄様、本当ですの?」
「喉を潰して、足を潰して、そうだな。出歩けないようにして、屋敷の片隅で命だけは生かしえておいてやる。これ以上、牢であることないことを話をされたのではたまらないからな」
「お兄様???」
「ちなみにこれは私が独断で決めた事だ。我が伯爵家が生き残る為に。お前ひとりが犠牲になって、領民たちが苦しまないですむ。仕方のない事だと思って諦めろ。お前はそれだけの事をやらかしたんだ」
後悔してももう遅い。
ルリーナは震えた。震えだした。
自分はなんという事をしたのだろう。
兄は昔から自分を可愛がってくれた。
いつも優しい兄だった。
まるで別人のような兄……
「許してくれ。我がキャスル伯爵家の為に、お前を処罰しなければならない」
ルリーナは悲鳴をあげた。
心から後悔した……
ラントスは背後に控える調査員からルリーナがキャスル伯爵領の片隅の屋敷に閉じ込められて生きているという事の始末を書いた調査書を受け取って。
「あの男もここまでやるとは……これで愛するアメディアナを害する心配をしなくて済むようになったわけだ。安心だな」
何も知らないアメディアナは、今、ラントスが買ってきた可愛い子犬に夢中だ。
可愛い子犬を抱き上げながら、微笑むアメディアナを心から愛しいと思うラントスであった。




