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時を告げる白フクロウの死  시각을 알리는 흰올빼미의 죽음

宇宙の静寂は、

音という概念を最初から拒んでいるかのように深く、

その深さの中で、

ひとつの石碑がゆっくりと回転しながら漂っていた。

表面には、

風化した岩肌のようなざらつきと、

かすかに赤い光を帯びた層が幾重にも重なり、

その層の奥に、

読めないほど古びたハングルの刻印が沈んでいた。

비문──

その文字は、

まるで石碑自身が呼吸しているかのように、

わずかに明滅していた。


ひびが入ったのは、

誰も気づかないほど静かな瞬間だった。

黒い宇宙の中で、

白い稲妻のような細い線が石碑の表面を走り、

その線がゆっくりと広がり、

内部に眠っていた赤い層を照らし出し、

やがてその層が崩れ、

粉のように散り、

光を帯びた破片が、

重力に引かれるように地球へ向かって落ちていった。

破片は回転しながら、

大気圏の境界へと吸い込まれていく。

その軌跡は、

まるで古い歴史が再び地上へ戻ろうとする

細い道筋のようだった。


大気圏に触れた瞬間、

破片は赤い尾を引いた。

空気との摩擦で熱を帯び、

光の筋が長く伸び、

夜の空を裂くように地表へ向かっていく。

その光は、

地上のどこかで眠っている誰かの記憶を

呼び覚ますかのように揺らめいていた。


破片は、

山脈の影に隠れた韓国の辺境へと落ちていった。

霧に包まれた谷間、

湿った空気が漂う森の奥、

古い石灰石の地層が露出した斜面。

そこに、

光の尾が吸い込まれるように消えた。


その頃、

メアリーは研究所の廊下を歩いていた。

外の霧が窓に薄く張りつき、

冷たい光が室内に差し込んでいる。

彼女の足音は、

石灰石の床に静かに吸い込まれ、

研究所全体が呼吸を潜めているように感じられた。

白衣の袖口には、

朝の湿気がまだ残っている。

髪は少し乱れていたが、

それを整える余裕もなく、

ただ、

胸の奥に沈む小さなざわめきだけが、

彼女を前へ押し出していた。


研究室の扉を開けると、

空気が変わった。

外の霧の匂いが消え、

代わりに古い羊皮紙と石灰石の乾いた香りが満ちる。

部屋の中央には、

まだ布に包まれたままの金属片が置かれていた。

それが何であるか、

メアリーはまだ知らない。

ただ、

胸の奥に沈んでいたざわめきが、

その布の下にあるものへ向かって

ゆっくりと形を変えていくのを感じていた。


彼女は深く息を吸った。

その息は、

どこか遠い場所から引き寄せられたように重く、

湿り気を帯びていた。


そして、

その瞬間──

大気圏で砕けた石碑の破片が、

研究所の地下深くに眠る

“何か”と呼応するように、

微かに震えた。


メアリーはまだ知らない。

その震えが、

彼女の人生を、

そしてこの土地の歴史を、

静かに、しかし確実に

変えていくことを。

研究室の扉を閉めた瞬間、

外の霧の匂いがすっと消えて、

代わりに石灰石と古い羊皮紙の乾いた香りが、

部屋の隅々まで静かに満ちていった。

窓の外では、

山の稜線が薄い霧に沈み、

光は弱く、

昼なのに夕暮れのような色をしていた。


机の中央には、

布に包まれたままの金属片が置かれている。

その下にあるものが何であれ、

部屋の空気はそれを中心に

わずかに沈んでいるように感じられた。


「メアリー、戻ってきましたか」

主席研究者の声は、

いつもより少し柔らかかった。

けれど、その柔らかさの奥に、

何かを隠している気配があった。


「はい。

 さっきの……落下物の件、聞きました」


「聞きましたか。

 観測室が少し騒がしかったでしょう」


主席研究者は椅子に腰を下ろし、

机の端に置かれた鹿肉の皿を

手元に引き寄せた。

湯気がまだ立っている。

この研究所では、

食事だけが現実の証拠のように思えた。


「安東市の市場で、

 最近“黒い石”の取引が増えているそうです」

主席研究者は、

鹿肉を切り分けながら言った。

その声は淡々としているのに、

言葉の端だけが妙に重かった。


「黒い石……工芸用の鉱物のことですか」

私は慎重に言葉を選んだ。

この研究所では、

“強くなる”という概念を持ち込むこと自体が

禁忌に近い。


「ええ。

 本来この辺境ではほとんど採れないはずなんです。

 なのに安東市の市場では、

 “古い地層からの出土品”として扱われている」


「古い地層……」

私は布に包まれた金属片へ視線を落とした。

胸の奥が、

ゆっくりと沈むようにざわついた。


主席研究者は、

その視線の動きを見逃さなかった。


「そして今日落ちてきた 비문 の破片。

 あれは、

 古い地層の波長と似ているんです」


「……呼応している、ということですか」


「呼応している可能性が高い。

 地層は静かに見えて、

 時々、歴史を吐き出すんです」


部屋の空気が、

さらに冷えていくのを感じた。

石灰石の配管が、

低く震えたような気がした。


「統治局には?」

私は声を潜めた。


主席研究者は、

鹿肉の皿を押しやり、

深く息をついた。


「まだ報告していません。

 報告すれば、

 “調整官”が来ますから」


その名を聞いた瞬間、

背筋に冷たいものが走った。

調整官──

この地域の研究機関を監督する、

静かで、冷たく、

決して逆らってはいけない存在。


「……来られると困るんですか」


「困る、ではなく“研究が止まる”。

 あの人たちは、

 危険を未然に防ぐという名目で、

 すべてを封鎖しますから」


主席研究者は、

布に包まれた金属片へ視線を戻した。

その目は、

恐れと興奮が入り混じった複雑な色をしていた。


「メアリー。

 あなたは今日、

 この破片に触れましたか」


「触れていません。

 まだ」


「触れないほうがいい。

 昨日、別の研究員が触れたあと……

 髪を編み込み始めたでしょう」


「ええ。

 肩に毛皮まで」


「本人は気づいていない。

 あれは“歴史的外見の可視化”です。

 紅の断片に触れた者に起きる現象」


部屋の空気が、

さらに沈んだ。

石灰石の配管が、

再び低く震えた。


「……また始まったのかしら」

思わず漏れた独白に、

胸の奥が痛んだ。

言わなければよかったと、

すぐに後悔が沈んでいく。


主席研究者は、

その痛みを察したように、

少しだけ柔らかい声で言った。


「メアリー。

 あなたは、

 この研究所で最も“変化に敏感な人”です。

 だからこそ、

 今日の落下物を見てほしい」


「……見たくありません」


「それでも、見てもらいます」


その言葉の温度は、

拒絶を許さない冷たさと、

どこか私を守ろうとする微かな熱を

同時に含んでいた。


布に包まれた金属片を前に、

主席研究者が何か言いかけたそのとき、

研究室の扉が静かに開いた。

湿った外気が細く流れ込み、

その風に乗って、

獣の皮の匂いがかすかに漂った。


編み込みをした研究者が、

ゆっくりと部屋を横切ろうとしていた。

昨日までは普通の髪型だったはずなのに、

今日は側頭部を細かく編み込み、

肩には薄い毛皮を掛け、

まるで北方の狩人のような姿になっていた。

本人はそれを不思議とも思っていない様子で、

ただ静かに歩いている。


主席研究者が声をかけた。


「どこへ行くんですか」


編み込みの研究者は足を止め、

こちらを振り返った。

瞳の奥に、

昨日までにはなかった“野の光”が宿っていた。


「狩りに行こうと思っているんです」


その言葉は、

まるで当たり前のことを言うように

淡々としていた。


主席研究者は眉をひそめた。

声の温度がわずかに下がる。


「……狩り?

 何を狩るつもりです」


編み込みの研究者は、

少しだけ嬉しそうに口元を緩めた。


「今日は、ヘラジカの群れを探すつもりです」


その瞬間、

私の掌がじわっと湿った。

冷たい汗が、

皮膚の内側から滲み出すようだった。


ヘラジカ。

ここから東へ進んでも、

西へ進んでも、

南へ下っても、

北へ登っても、

山はある。

山ならいくらでもある。

だが──


韓国にはヘラジカはいない。


胸の奥が、

ゆっくりと沈んでいく。

言葉にしたくなかったけれど、

どうしても漏れてしまった。


「……ヘラジカなんて、

 この国には……」


言い終える前に、

主席研究者が私の言葉をそっと遮った。

その声は静かで、

しかし底に硬いものを含んでいた。


編み込みの研究者が部屋を横切ったあと、

主席研究者は机の端に置かれた記録板を手に取り、

淡々と読み上げるように言った。


「……観察記録。

 対象:第三研究員。

 状態に変化あり。

 本日は狩猟を予定」


その声は、

感情を排した事務的な温度で、

しかし部屋の空気だけがわずかに沈んだ。


編み込みの研究者は、

その言葉に反応することなく、

ただ軽く会釈をして部屋を出ていった。

扉が閉まると、

毛皮の匂いだけが薄く残った。


私は掌を見つめた。

汗が冷たく光っていた。

言わなければよかったと、

後悔が胸の奥に沈んでいく。


主席研究者は、

深く息をつきながら言った。


「紅の断片に触れた者は、

 まず“獲物の記憶”を思い出すんです。

 それが誰の記憶なのかは……

 まだ分かりませんが」


部屋の空気が、

さらに重く沈んだ。


主席研究者は、

深く息をつきながら言った。


「今日はもう帰りなさい。

 落下物の調査は明日に回します。

 あなたの感覚が鈍ると困りますから」


「……はい」


声が少し震えた。

自分でも気づかないほど小さく。


主席研究者は、

私の表情を読み取ったのか、

少しだけ柔らかい声で続けた。


「メアリー。

 あなたは、

 この研究所で最も“変化に敏感な人”です。

 だからこそ、

 休むことも仕事のうちですよ」


その言葉の温度は、

拒絶を許さない冷たさと、

どこか私を守ろうとする微かな熱を

同時に含んでいた。


私は軽く頭を下げ、

研究室を出た。


研究所を出ると、

霧が細く揺れ、

山の稜線がぼんやりと滲んでいた。

冷たい空気が頬を撫で、

その冷たさが今日の疲れをようやく実感させた。

私は坂道を下り、

灯りの少ない商店街へ向かった。

夕方の名残がまだ漂っていて、

どこか温かい匂いがした。


店の前では、

海苔の香りと鉄板の熱気が霧の中に滲んでいた。

店主の女性が、

巻き簾の上で手際よく김밥を巻いている。


「お帰り、メアリー。

 今日は早いね」


「……ええ。少しだけ」


店主は巻き簾を止め、

にやりと笑った。


「そうだ、活きのいいマングースが入ってるよ。

 김밥と一緒にどうだい?

 爪も一緒につけるよ、香ばしく揚げてね」


私は思わず言葉を失った。


「え?……김밥だけでいいです」


「そんなこと言わずに」

店主は、まるで当然の提案をしているように続けた。

「ほら、マングースはどんな味付けにも合うんだ。

 甘辛でも、塩焼きでも、薬草煮込みでも。

 あなた、疲れてるんだろう?

 こういう日は、獣の肉が身体を温めるよ」


「……いえ、本当に。

 今日は김밥だけで」


店主は少しだけ首を傾げた。

その仕草は優しいのに、

瞳の奥がどこか“野の色”をしていた。


「そうかい。

 じゃあ、せめて匂いだけでも嗅いでいきな。

 ほら、さっきまで生きてたんだよ。

 まだ温かい」


店主は包丁の先で、

まるで見えない何かを示すように空を指した。

その指先に、

霧が細くまとわりついた。


「……김밥をひとつお願いします」


「はいはい。

 でもね、メアリー。

 マングースは逃げないよ。

 いつでも、あなたを待ってる」


その言葉が、

冗談なのか、

それとも別の意味なのか、

判断がつかなかった。


김밥を受け取り、

店を出ると、

霧の中で灯りが揺れた。

その揺れが、

まるで誰かが遠くから手招きしているように見えた。


家に着くと、

灯りをつける前に、

深く息をついた。

その息は、

外の霧とは違う、

どこか温かい湿り気を帯びていた。

胸の奥に沈んだざわめきが、

まだ消えていなかった。


靴を脱ぎ、

薄暗い部屋の中をゆっくり歩く。

壁に掛けられた鹿の頭が、

暗がりの中でこちらを見ているように感じられた。

その瞳はガラスのはずなのに、

どこか柔らかく、

優しさのようなものが宿っている気がした。


棒に引っ掛けてある薬草用の鍋に火をくべると、

乾いた薬草が湯に触れた瞬間、

ふわりと香りが立ちのぼった。

苦味と甘さが混ざったような、

森の奥の湿った土を思わせる匂いが

部屋いっぱいに広がっていく。

その匂いに包まれると、

ようやく今日という一日の輪郭が

少しだけ柔らかくなった気がした。


ベッドに腰を下ろすと、

疲れが一気に押し寄せた。

肩が重く、

指先が少し震えていた。

薬草の湯気が

ゆっくりと天井へ昇っていくのを眺めながら、

私は小さく息を吐いた。


「……今日は、もう考えたくない」


独白は後悔を呼ぶ。

言った途端、

部屋の空気がわずかに揺れ、

本棚の本がざわつき始めた。

紙が擦れ合う微かな音が、

まるで誰かが囁いているように

暗闇の中で震えていた。

胸の奥が少しだけ痛んだ。

言わなければよかったと、

すぐに思った。


それでも、

目を閉じると、

眠りはすぐに落ちてきた。

まるで、

誰かに引きずり込まれるように。


眠りの底で、誰かが囁いた。

霧の向こうから、

誰かが低く囁くような声がした。


「……붉은 기록은 피를 기억한다.

  사라진 왕국은, 아직 숨을 쉰다……」


私は思わず振り返った。

誰もいない。

ただ霧が揺れただけだった。


朝が来て、

外の騒音がいつもより騒がしくなった。

窓を開けると、

道路を突き破って山脈が生えていた。

アスファルトの割れ目から、

湿った土と苔の匂いが立ちのぼり、

その奥で小さな滝の音まで聞こえた。


隣の部屋のおばさんが、

フライパンに卵を落とす音がした。

じゅっと油が跳ね、

その上に、

捌いたばかりの新鮮なヤマウズラの肉を入れて炒めている。

香りは妙に甘く、

朝の空気に溶けていった。


廊下では、

分厚い馬の鞍を肩に乗せたおじさんが出勤の準備をしていた。

革の匂いが強く、

鞍の金具が朝日を受けて鈍く光っている。

ドアを開けた瞬間、

目が合った。


「おはよう、メアリー。

 昨日、空から何か降ってきたらしいね」


スーツに鞄、ネクタイ、荷馬車。

何もおかしくない。

いつもどおりだ。

この街では、

“異常”はいつも“日常”の顔をしている。


私は靴の踵に挟まった小石を外し、

外でゴミを漁っているアライグマに向かって投げた。

アライグマは驚いたようにこちらを見て、

それからまたゴミ袋に顔を突っ込んだ。

毎日しつこいやつだ。


その瞬間、

山脈の裂け目から、

冷たい風がひとすじ吹き抜けた。

花びらが舞い、

蝶がその花びらを裂くように飛び去っていった。


アパートの裏では、

小川にアヒルが揺られていた。

水面は薄い朝霧をまとい、

アヒルの影がゆっくりと波に溶けていく。


そのとき、

空から白いものが落ちてきた。

シロフクロウだった。

翼を広げたまま、

二百六十六のひっかき傷に包まれ、

ゆっくりと川へ落ちていった。

羽根が水に触れた瞬間、

白い粉のような光がふわりと散った。


彼に何が起きたのか。

考えるより先に、

川辺で寝そべっていた宅配便の担当者が

天を仰いだ。


「ビョンフン、

 今日はもう仕事に行かないつもりなの?

 ちょっと寄ってきて欲しい場所があるんだけど」


彼女が急かすので、

ビョンフンは慌てて立ち上がり、

私のアパートを横切って、

通りの端にある商店街へと向かった。

荷物の入った袋が揺れ、

その影が川面に長く伸びた。


私は声をかけた。


「今日は何か、良い日なんですか?」


ビョンフンの彼女は、

振り返って笑った。

その笑顔は、

朝の光をそのまま抱きしめたように明るかった。


「記念日なんです。

 彼と私の」


羨ましいと思った。

その明るさが、

この街のどこにもない“普通”のように見えたから。


シロフクロウが死んだ日記念日だ。

川の中では、

月の欠片のような鉤爪が

何かを掴んだまま離さず、

そのまま川を下っていった。

掴んだものは見えなかった。

ただ、

水面に沈む影だけが、

ゆっくりと形を変えながら流れていった。


朝の光は、

何事もなかったかのように

その影を照らしていた。


ビョンフンと彼女が商店街へ向かうのを見て、

私は少し歩調を早めて追いついた。

市場の入口には、

朝の霧がまだ薄く残っていて、

人々の足音だけがやけに鮮明に響いていた。


「市場、今日はずいぶん賑やかですね」


彼女は振り返り、

嬉しそうに笑った。


「そうなの。

 鮮魚店の前に 대장간 ができたからね」


「……鍛冶屋、ですか?

 あんな場所に?」


「うん。

 魚の匂いと鉄の匂いって、意外と相性いいんだって。

 店主が言ってたよ。

 “今日は 검 がよく売れる日だ”って」


「검……?」


「そう。

 それと 창 も。

 朝から買いに来る人が多いのよ」


「창まで……?」


「うん。

 ほら、今日は“刺す日”だから」


「刺す……日?」


「そう。

 みんな知ってるでしょ?

 흰올빼미 が落ちた日の翌日は、

 市場の刃物がよく動くの」


彼女は当たり前のことを言うように、

軽い声で続けた。


「それにね、

 今日は 방패 も人気なんだって」


「……방패?」


「そう。

 “守る日”でもあるから。

 刺す人もいれば、守る人もいる。

 市場って、そういうバランスでできてるんだよ」


私は思わず足を止めた。


「……そんな日、ありましたっけ」


「あるよ。

 昔からずっと。

 あなた、知らなかったの?」


彼女は不思議そうに首を傾げた。

その仕草は普通なのに、

言っている内容だけが静かに狂っていた。


「ほら、見て」


彼女が指差した先では、

鮮魚店の氷の上に並ぶ魚の横で、

新しい鍛冶屋の男が

真っ赤に焼けた鉄を叩いていた。

魚の腹を割く音と、

鉄を打つ音が、

同じリズムで市場に響いていた。


「今日はね、

 “良い日”なんだよ」


「……良い日?」


「うん。

 흰올빼미 が落ちた日って、

 市場が一番よく動くの。

 검 も、 창 も、 방패 も。

 みんな必要になるから」


「……何に?」


彼女は少しだけ笑った。

その笑顔は、

朝の光をそのまま抱きしめたように明るかった。


「それはね、

 まだ始まってないから言えないの」

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