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【本編完結】君のために僕は人を捨てた【番外編不定期更新中】  作者: アカツキユイ
第二章 誰がために

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11 祭りのあと

 ルルが結界を解くと、メルグリス様とシャオが並んで立っていた。他には人払いがされたのか、誰もいなかった。


「……手間をかけさせたの、クリ坊、ルル」


「んにゃ、こっちこそ長いこと爺さんたちに面倒かけさせて悪かった」

「申し訳ありませんメルグリス様、もう少しで塔を壊してしまうところでした」


「ほっほっほ、ボロい塔じゃがルルの気持ちひとつで崩壊するほど脆くはないぞ」

 メルグリス様はそう笑うと、コヌムを一瞥した。

「シャオ、これは懲罰房に放り込め」

「はい、老師」


 シャオが鈴を鳴らすと、コヌムの姿はいつかの野郎たちと同じように、ここから消えた。



 メルグリス様がこちらを見る。

「ヨル坊、まだ間に合うと言うておったが、あれは()()()()()()かのう?」

「んー、どうですかねぇ、漏らしちゃうくらい怖かったみたいですから、心を入れ替えられればいけるんじゃないですか?」

「ふぉふぉ、本人次第ということか」

「当然でしょ、僕だってめちゃくちゃ努力したもの」

「まあ、それもそうかのう。

 ……クリ坊、あれの処置はどうする」


「……精神干渉魔法を使うのは最後の手段だ。今回は怖い思いしただろうから、バングルもう一回はめて様子見にする」

「そうか。わかった。もうしばらく預かろう」

「すまねえ」


「……次に迷惑かけたら呼んでください。あたしがやります」

「ルル。そこまで気負わんで良い。お前はよくやっておる」

「……はい、メルグリス様」


「じゃあ俺たち帰るわ。イオルム、残り頑張れよ」

「ああそうだね。勝負の相手は消えちゃったけど、残り五つ、今日中に片付けるよ」

「イオルム殿下、また遊びに来てくださいね」

「もちろん。ルル、気を落とさないでね」

「……はい、ありがとうございます」


 ユークがパチンと指を鳴らし、二人は消えた。



「はーあ、僕なんもしてないなぁ。メルグリス様の期待に応えられなかったなぁ」

 両手を頭の後ろで組む。

「いや、期待以上じゃった」

「ええ!? どの辺が?」

「ルルを止めてくれたからのう」

 メルグリス様の顔を見ると、とても優しい顔をしていた。

「知っておろうが、あれは自責が強すぎる。お前さんより遥かにな。あれが揺らぐと、世界が揺らぐ」

「ああ、そういうこと。うん、そうだね。ルルを見てると、もっと自分に優しくしても良いのに、って気持ちになるよ」


「お前さんもな。それよりあと五つ早く仕上げててっぺんに来い。待っておるからのう」

「はぁい」




 そして、夜。

 最後の一つに決めた大型の投影用魔道具を丁寧に解体する。僕の肩くらいまである、古くて大きなタイプ。魔法で外装を丁寧に外しつつ、部品を材質ごとに異なる洗浄剤で洗い、乾かす。


「……あれ」

 小さなパーツが落ちている。これが外れたから動かなくなったのかな?と考えながらつまみ上げると、それは小さな飴の包み紙だった。世界中で売ってる、子ども向けの飴。


「どこかの隙間からねじ込んじゃったのかな」

「……映写機に、食べさせたかったのかもしれないね」

 そばで見ていたトメキが笑う。

「そうかも。ふふふ、これからもたくさん、ちっちゃい子たちのために頑張ってね」


 基盤には、少し術式と回路を書き足して効率を上げる。基盤用の魔石を交換して、外装をネジで留めた。


 フロアの照明を消し、スイッチを入れる。

 初期映像に設定されている満点の星空が、筒状になっている塔の壁に映し出された。


「お疲れ様ー!」

「ほんとに三日でやっちゃったねー!」

「これ見ながら酒飲もうぜ、酒!!」


 作業道具や机を片付けて、終わりを見届けてくれたみんなとお祝いをした。

 とりあえず、寝室の環境は改善されるとシャオから聞いて安心安心。


 あ、僕、今日からどこで寝ようかな。

 そんな心配をしたけれど、お祝いは朝まで続いてしまって、寝床の心配は杞憂に終わった。

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