タイトル戦
擬人化したオリジナル戦艦を異世界で書きたかった。
投稿は他作品同様超不定期です。もうないかもしれません。
俺は幸運の持ち主だ、なにせ俺が望めばその機会はいつだってやってくる。例えば、欲しいものは一度探すだけで見つかるし、金が欲しいと願えば俺にできる仕事が転がり込んでくる。今日出る大会もその一つと言えるだろう、改装したアバターを試したいと願ったらスマホがなって大会の知らせだ。俺はついてる。
今俺の目に見えるのは情報だけで言えば、白く六角形模様の壁を持つ、ソファとモニターだけのシンプルな部屋。ただその実際は、今から始まる決勝戦の待機部屋。最近のVRは便利だ、昔のアニメで見た世界のVRレベルに進化していると言える。ただ、できたのが最近ということもあって、旧世代VRゲームの移植ゲームがほとんどを占めている事もあってか、やってるやつを現実で見たことはない、おそらく敷居が高すぎるのも理由だろう、現状でハイスペックと言われるpcとVR本体を合わせたら優に50万はいくだろう。俺は親がこのvrの技術者だったこともあって買い与えられたが他の人は別だろう。そんな事を考えていると、今までトーナメント表らしきものを映していたモニターの表示が変わり文字と女性が自分に向かって飛び出してくる。文字は出場の時間だと言うことを伝えていた。女性は俺にとっては見慣れた見た目で、特徴と言えば、長い銀髪、前髪で隠れた鏡のような銀色の目、白い肌、そして、中に白の軍服とその上から白衣のような白のコートを羽織っている。右腰と左腰にある船のような小さな模型も特徴と言えるだろう。これらの特徴から、この女性は間違いなく俺の作った、仮想世界の俺
「フォートレス」
その女性は俺の目の前でこちらに背を向けるように、身を回し落ちてくる。そして、互いの体が重なる。その瞬間ソファと床が消える。後ろに回る体で見える地面は真っ青な海、さらに体が回れば薄っすらと観客席も見えるだろう。
そうして体を回し海面に足を向かせる。ちょうど足元にある3つの円のうち右端に私は落ちるだろう。現実でこのまま降りれば骨折待ったナシだろうがここは仮想世界。海面1メートル手前で制動がかかる。そして円の中に降り立つ、白衣は軽く羽ばたき髪もまた同様に舞い上がる。すぐ後に左端の円に特撮のヒーローの登場シーンのように拳を海面に打ち付けるようにしてまた一人降り立つ。続くようにして真ん中の円に特大の水しぶきをたてて最後の一人が降り立つ。飛沫が収まると同時に私を含む三人の頭の上にSABの文字が浮かぶ。私の上にはB、ヒーロー着地の人の上にはA、飛沫の人の上にはSが、それは見慣れたランクの表示で、一拍置いて三角を作るよう配置された円の中央に1stの表示が現れ、遠く見える観客席から歓声が聞こえる気がする。遠くではSABと2ndの表示がでているのが光の柱でわかる。
耳元でこれまた聞き慣れた声が聞こえる
『全艦合戦準備!』
その声に合わせて遠くの歓声が聞こえるほどに大きくなり、俺の鼓動も大きくなる。どうやら他の二人も同じようで、目の前のタイマーがなければすぐさま武装して走り出すだろう。歓声の高鳴りから相手方が武装演出をしているのが分かる。今回の相手は艦種だけは聞いて来ている。曰くSランク 弩級戦艦 Aランク 航空戦艦 Bランク 潜水戦艦
といったように相手は戦艦で固めている。そうして、考えているうちに目の前のタイマーがゼロになる。
さて、武装だ。コートの左右にぶら下がってる船の模型のうち大きい方を掴み、それを目の前に持ってくる。途中でその模型を囲む表示が目まぐるしく変わる。まず手で掴み軽く引く、すると模型の周りに固定の表示が映るさらに引くと、固定解除、展開待機の表記に変わる短いがこの表示が俺の自信作だ。そうして俺は模型を右手で前に突き出す。周りではヒーロー着地は腰のカードホルダーからカードを射出して掴み船の絵が描かれた面を正面に向け、飛沫は両腰の剣に手を添える。簡素だがその動きには美を感じる。そして一斉に合言葉と最後の動作を行う。歓声はその瞬間を待ち切れないと言わんばかりに大きくなっていく。
「抜刀!」飛沫はその声と同時に腰の8振りの剣を高速で抜き放ちそのまま前に投げる。前に投じられた剣は緩やかな半円を描きながら交差し、8隻の小さな駆逐艦の形をした護神艦へと変わる。それは飛沫の後ろで再度交差し円を描くように飛沫の周りに体を置く。それと同時に飛沫の両手に先程投じた剣に似たものが出現する。ただ、それは柄から先の剣が4つづつの異常なものであった。
「変身!」ヒーロー着地はその声と同時に腰正面のベルトにカードを入れる。カンカンカンと言う鉄を打つ音とともにヒーロー着地の体が、四角い鉄人形になったかと思うと、ハンマーで打つようにしてその体を形作る。最後に空から降りてきた巨大な錨がヒーロー着地を打ちパット見潰されたような見た目になると、降ってきた錨を吹っ飛ばして、手に錨をもった仮◯ライダーのような姿で現れる。吹き飛ばされた錨の破片はヒーロー着地の横で先端が錨のようになった重巡洋艦の形をした護神艦を作った。
「展開!」俺はその声と同時に手の模型無造作に放る。放った模型は展開待機の表示を展開へと変え、海面直前に空中で止まると水面に波紋を一つ立てて光の破片となる。それは数を増し形を変え、私の両隣に左右対称の形をした防空戦艦の形をした護神艦を作る。そして、最後に手に何とか持てる大きさの銃身が2本ついたレールショットガンを形作った。
俺の武装完了をもって、司会が言う
『全艦の武装完了を確認しましたのでこれより第10回タイトル戦を開始します!』
『全艦機関始動!目標を殲滅せよ!』
その声で、歓声は最高潮を迎えそしてピタリと聞こえなくなる。開始に伴ってミュートが入ったのだろう。「作戦は前回同様、私が潜水戦艦の相手をする。ストライカーは弩級戦艦の相手を、フォートレスは航空戦艦の相手を」
「30分で決めるぞ」
「「了解」」
飛沫の指示と同時に動き始める。ストライカー、飛沫、フォートレス(俺)の順で縦列陣形を組んで前進していく5分ほど経った頃に自身のレーダーに一隻の艦影が映る。
「目標を発見。それと、おそらくこっちも見つかった」
レーダーには進路を別々の方向に変えつつある二隻の影が映っていた。
「気を引き締めろ敵機のお出ましだ!」
飛沫のその声と同時に俺の前からストライカーが右に、飛沫が左に進路を変えて居なくなる。前方が空いたことを確認して、手に持つ、銃身に電光を纏うショットガンを構え、遠くに見える黒の点に向ける。その状態で右手を一瞬離してショットガンの右側に表示された、secと単位のついた2つのメーターを操作してすぐさま構え直し、撃った。すぐさまメーターを操作し直し二発目を撃つ。雷とともに、2発の砲弾が空を行く。タイミングのズレた2発の砲弾はそれぞれのタイミングで炸裂する。先に黒の点に近づいた1発目の砲弾が点まで100mほど離れた地点で爆発しすぐさまより広い範囲で爆発が起こるのがみえる。2発目も同じように炸裂し、点の数を大きく減らす。2発の砲弾の炸裂を見届け点が残ってるのを確認した2人から野次が飛んでくる。
「クソエイム」「対空砲道やり直したら?」
純粋な暴言と艦砲で敵機を撃ち続けるだけのクソゲーの名前が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
黒の点はその形がレーダーにしっかりと映る距離に近づいていた。ここまで来ると砲身の動きが見えてしまうので当たらなくなる。故に護神艦から点の数だけのミサイルを発射し目を閉じ集中する。まぶたには鳥のような形をした敵機とこちらのミサイルを表す棒が立体の形で見えていた。鳥は迫る棒を回避するために、多数の熱源をばらまきランダムな機動を描くが、棒はその動きを正確に追い当たる。目を開けば空に黒の花が点の数だけ咲いていた。それを見ていた2人から再びやじが飛ぶ。
「「最初からそうしろよ」」
うっせ!けっ!
俺は不運だ、俺はアバターを作る技術がないから、ゲーム側のシステムを使ってアバターを作った。そして、そのアバターを使った初の試合で優勝した…やっぱ運がいいかもしれない。
今日で10回目のタイトル戦だ。彼らとはまだ7回目の共闘だがよくやれていると思う。なにせ、イロモノしかいないのに戦闘時間の記録短縮を繰り返しているからだ。毎度面倒な相手を私がかってでているだけはあると思う。今までの勝利の立役者は私だと言っても過言ではないだろう。たった今来襲した敵機を砲撃とミサイルで吹っ飛ばしたやつの艦種を聞いた時なんて、こんな味方でどうやって勝てって言うんだ!?と思っていた。多分誰だって艦種何って言ったら「防空三胴戦艦です」って返ってきたら「は?」って聞き返すと思う。ただ、
「くらえ!!!!」
たった今視界の端でターンから急制動をかけて後部を浮かせ慣性を使った高速前後反転から相手弩級戦艦の51cm方を弾いて、その錨のような装甲で戦艦の横っ腹を合切てるやつの艦種と戦い方を聞いたときのほうが驚いた。なにせ、艦種何?で「装甲高速巡洋艦だ!」なんて言われたら、高耐久と速度を活かした格闘戦をすると思うじゃん!なんでまじもんの格闘戦してんだよ!ここ海上ぞ!?なぜそんなキショい動きができるんだ!?頭が痛くなるぞ…おや?足元に影が
僕は不運と幸運そのどちらでもないと思う。今日の大会だって、一人で何十何百と練習して獲得した、優勝を守るためにアバターの改良と戦術を磨いてきている。
僕は時々変態機動をとってる僕よりまともアピールしてる彼女のほうがイカれてるんじゃないかと思う。
なにせ、彼女がアバターを改変したところと練習しているところを見たことないのだ。それでSランク1位を維持しているというのだから、人外だ、今だって敵の奇襲が完全に決まったはずなのに、かすり傷だけで済まして、護神艦と共に潜水戦艦を襲っている。今タコ殴りに遭ってる敵は第8期大会から、参加していたが、いつも微妙な順位で終わっていた人で、今期は、今までの潜水→魚雷攻撃→機関破壊→浮上→砲戦と言う戦い方から大胆に潜水→魚雷攻撃→衝角による突貫→浮上→砲戦と、変化していてそれが見事に刺さっていた。ただ今回は突貫相手が悪かった、三胴艦のフォートレスさん相手なら完璧に決まったろうが、ただの駆逐級指揮艦相手では良くて局所的に装甲を歪める程度しか起こせないだろう、ただし今回その相手はコンダクターさんだ、あの人は何を思ってか、指揮艦定石の装甲ではなく機関を強化しており、基本的に接岸用に使われるスラスターなんて、転覆を起こしかねないレベルの緊急回避に使用できる出力になっている。今もそれを使って真下から奇襲を仕掛けた潜艦を横にスライドして避けてみせた。そこからの動きは反射でやってるレベルの速度で、周囲に展開していた護神艦を使って、潜水用に防護されていた主砲防護機構の駆動部をピンポイントで破壊すると言う曲芸でもって主砲展開を妨害している。当然大事な部分なので装甲で厳重に守られているのだが、コンダクターは主砲を異常なレベルで貫通力に特化させており150mmの鋼鉄板を20度の角度から貫通すると言う。それも駆逐艦レベルの口径でだ。当然相手もバカではないので、再潜航によって離脱しようとするも突貫を避けたあとそのまま、張り付くように攻撃を加えて、常にどこかに損傷を出すことで潜れないように妨害している。
おっと危ない、やはり弩級と付くだけあって耐久力が尋常じゃない。
戦闘はいつものように進んだ、途中相手のフォームチェンジによって俺が轟沈仕掛けたが間一髪のところで相手を撃沈した二人の援護によってなんとか沈まずに済んだ。
記録は28:36.4だった。
そうして、戦闘を終え広場に集まった俺達は、別れの言葉を告げてメニューを呼び出し、退出のボタンを押す。
その後そこに残ったのは退出の意を問うメニューだけであった。
誰か文才と語彙力を下さい。