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「バルト、婚約破棄です。娘と別れなさい。ヘレンナはロミリオと結婚してもらいます」


「バルト君、ヘレンナとは12歳差ではないか?貴族学園淑女科を卒業したヘレンナとは釣り合いが取れない」


「そうよ。私は最初から嫌だったの。孤児出身でしょう?」



 俺はバルト、今年34歳のおっさんだ。

 しかし。


「それを承知で、10歳のお嬢様と22歳の私とを婚約を結ばせたのでしょう?」


「あら、ちっともこのコロンナ商会は大きくならないじゃない」

「バルト君、貴族学園経営科で学んだ私に任せて身を引きなさい。私のプランで大きくしてみせます」


「では、引き継ぎは?」


「いらないわ。すぐに、そうね。その服は商会のものよ。置いて行きなさい」


「そんな」


 嫌な予感はしていた。ついにこの日が来た。

 お嬢様が貴族学園を卒業して結婚のはずが伸びに伸びて、新入商会員のロメリオと婚約。


 お嬢様と同年齢だ。多分、学園で知り合ったのだよな。



「任せて下さい。私は貴族の出です。あのピニャーテ家の女当主とも親交があるのだ」


「まあ、すごいわ」

 俺、バルドはたったいま元商会員になった。

 俺が、22歳の時に10歳のお嬢様と婚約を結び。コロンナ商会に入った。

 いうなれば、斜陽の商会を立て直せ。その代わり嫁をやるということだ。


 当時、お嬢様の父親でもある商会長がなくなり。女当主となった母親は商売に疎かった。

 だから、当時、イケイケの商人だった俺に目星がついたというわけだ。


 孤児出身だった俺に選択の余地はない。今は亡き義父のすすめで婚約を結んだ。


 12年間頑張った。

 しかし、この仕打ちだ。

 仕立て服は一着、それも取り上げられた。





 ・・・・・・




 俺は冒険者ギルドで登録し、薬草探しになった。F級だ。

 主に、近場の森で最低ランクの傷薬用の薬草を探す。


 もう、宮仕えはまっぴらだ。

 人に左右される。


 一人の方が気楽だ。



「ふう。これだけにしよう」


 籠一杯に積み込み。冒険者ギルドで買い取ってもらう。



「大銅貨5枚(5000円)になります・・」

「有難う」



「うわ。ズルイ、俺たちよりも高い!」

「多く取っているのに!」


 子供達が騒ぎ出した。親のいないストリートチルドレンだ。

 受付嬢が説明してくれた。


「バルトさんは丁寧です。きちんとハサミを使っています」


「手じゃだめなのかよ?」


「俺はバルト、君は?」

「トムだい!」



 教えてあげた。何でも2年間やっているが、


「俺も冒険者ギルド発行の手引き書程度のことしか知らないよ」

「・・・うん。俺、文字読めない」

「そうか。なら、教えてやる」


 あの女商会長は文字を読めるのに、取り決め書や契約書を読まずに、いつも、苦労していたな。

 この子は好感が持てる。

 いかん。過去の話だ。俺は冒険者だ。



 それから、ストリートチルドレンたちが集まり。

 一種のギルド内ギルドみたいになった。



「いいか。群生地を見つけても、独り占めにしない。小さい子だからって手間賃を差別しない。

 その代わり。お前が収穫無いときは、分け与える。いいか?」

「「「はい!」」



 子供は素直だ。そう言えば・・・。昔は子供を助けたことがあったようなないような。

 ストリートチルドレンを教育し、商会員にすれば、信頼のおける部下になる。

 信頼の出来る部下がどれほど有難いことか・・・義父の教えだ。



『今日からコロンナ商会に所属になるロメリオです・・・大丈夫です。教えはいりません』


『しかし、ロメリオ君』

『様付けをして下さい。私は貴族ですよ』



 いかん。いかん。過去を思い出すな。過ぎた話だ。


 しかし、少し、金になると、他の冒険者が嗅ぎつけてきた。

 それも、C、D級のうだつの上がらない冒険者たちだ。



「俺たちが守ってやるからよ。売り上げの半分を寄越せ」

「「「ヒヒヒヒヒ」」」

「ここは危険だな。人さらいがでるかもよ」



 お前らがさらうのだろう。


 俺は、このとき、何故か知らないが、拒否をした。


「半分も取ったら、子供達の食事もままならない。今でもギリギリだ。俺をどうにでもしろ。その代わり子供達に構うな」



 このまま毎日、安宿で暮らし。独りで過ごすのは嫌だ。


「おっさん!」

「バルトさん」


「ああ、そうだな。明日、このゴラン様と決闘をしろ。いいな?」



 ああそうか、冒険者がもめたときの決着方法は決闘だ。

 剣は研修でやったが、あいつの方が強そうだ。




 ☆夜、酒場



「ゴランの兄貴、明日決闘ですぜ。もう、お開きにしましょう」

「あ~、ヒック、俺があんな奴に、もう一軒行くか『おい、気をつけろ』」


 ドカ!


「・・ヒドイ。そちらからぶつかってきたのじゃないですか・・・」


 ゾロゾロゾロ~


「兄貴、囲まれています」


「さあ、さあ、亭主、我は王国騎士団マックス。平民に無礼を働かれた故に成敗をする」


 チャリン♩


「ヒィ!」


「そやつらの飲み代だ。受け取っとけ」

「外に連れ出すぞ!」

「「「オオ!」」




「やあ、やあ、遠からん者は音にも聞け!我は王国騎士団長子息マックス・ウェーバー!近くの者は輪を作り決闘の見届け人になれ!」



 ドカ!バカ!ゴキ!


「やめろ、やめてくれ!」



 ・・・・




「やめて、ください・・・」

「アハハハ、お前の収入の半分を献上したら考えてやらんこともないけどな」


「ヒィ、そんな非道な!」

「冗談だ。これにこりて非道なことはするな」




 ・・・・・・・





「・・大変だ。ゴランの兄貴たち、昨日、騎士団の奴らにカラまれて、全身に怪我を負っている・・」

「冒険者パーティーゴラン進撃団、壊滅だ」



「まさか、あのさえないおっさんが?騎士団を動かした」

「元商会員だろう?コネでもあったのか?」

「騎士団を動かしたのか?いい気分に酔っ払っているゴランに迷わずぶつかってきたと言うぞ」



 決闘はうやむやになり。

 この件はギルマスが速やかに動いた。



「若手冒険者を交代で見張りにつける・・中抜き禁止だ」


 孤児出身の冒険者や、クランの若手冒険者が薬草の森の見張りにつくことになった。





 何故、この街に王国の騎士団がいたのか。次の日に分かった。


「ごめん。ギルマス殿はおいでか?」

「・・・まさか!王宮の騎士団?」

「研修の時に世話になった。実は、お忍びで、殿下がこられていてな。警備と案内人を所望する」


「なら、『群狼』のアルキデスとルーディが適任です」


「そうだ。外縁の警護は『群狼』の方でいい。案内役は・・・おお、あの方がいい」


「バルト・・・ですか?」

「ほお、バルト殿と言うのか。一日金貨一枚だ」



 何故、俺が?意味が分からない。王太子殿下の案内役になった。

 周りには、王国騎士団と、殿下の側近、外縁には、冒険者ギルド1番のアルキデスとルーディさんが指揮を執っているクランがいる。


 どちらも20代半ば、俺は、その時、希望に満ちあふれていた。いかん。いかん。過去を思い出すのはやめよう。



「バルト殿、あの串焼き屋の中で値段が大きく違うが理由はあるのか?材料とかの違いか?」


「はい、材料と腕が違います。美味しい串焼き屋は値段を倍にしています。そうすることで激安が売りの串焼き屋と差別化して共存が出来ています。それか・・・下品かもしれませんが」



「いらっしゃいませ!」



「売り子の女性で差をつけています」


「ほお、バルド殿は博識だな」

「とんでもございません」


 何故、これで感心するのか分からない。



「あそこの屋台の鯖バーガーとは?」


「はい、貧乏人は肉が食べられません。ですから、魚で代用する方法が最近出回りました」

「美味いのか?」

「皆、食べたら、う不味いと言います。長旅を経験した者はクセになるそうです。塩気が強いですね」


「ほお、食べて見よう。バルト殿も」



 ・・・・



「「「う不味い!」」」


「アハハハハ、皆、そういうよ」

「ご婦人、面白いな。ハハハハ」



「ところで、バルド殿は孤児達を助けていたと聞いたが?」

「ほお、感心だな」


「いいえ。私も孤児出身です。義父に助けられました。ほんの少し恩を返したつもりです」


「謙虚だな」



 案内は終わった。


 ギルマスから感状をもらった。



「バルト殿、王太子殿下がご満悦だ・・・・」

「恐縮です」


「・・・・でだ。この功績で、子爵に任じるとの内定だ」


「はあー!」


 思わず声に出た。王宮役人の役職名のようなものだ。

 この場合は名誉職。領地なし。


「意味が分かりません。数時間、おしゃべりをしていただけです」


「俺も分からない。ただ、幸運を逃す理由にはならないぜ」


 そうだ。そうだよな。それで、昔は、俺だって・・・


 いかん。いかん。また、過去を思い出す。




 ・・・・・・・



「はあ」


 下賜金をもらった。

 小さな家を買う。


 子供達はトムを中心にまとまった。


 俺は変わらずに、薬草を探す。中級者の森にいってランクをあげるか。

 遅いけどキャリアを積まなければならない。


 つもりが。


「バルト殿!指命依頼だ!」


「はあ?!薬草探しの俺が!」


「断れないぞ。ピニャーテ家からだ」


「あの・・王太子妃を出した」

「そうだ。王太子妃の姉に当たるマリカ・ピニャーテ様だ」


「何ですか?薬草探しですか?」


「こっちに来い。依頼主の執事が来られている。直接、依頼内容を話してもらう」



「バルト様、依頼内容は令嬢のエスコートです」


 本当に驚くと声がでない。やっと、拒絶の言葉を口に出来た。


「無理、服は何とか揃えられるが貴族のマナーは全然です」


「ですから、服、装飾品、マナーの講師、全てこちらで用意します」


「はあ」


「バルト様は冒険者なのですから分かるはず。こちらが出来るように段取りした依頼、破格の条件なのですよ」


「分かりました。契約書を拝見させて下さい」


「なっ」


 また、声が出た。訓練期間中も一日金貨一枚だ。


 嫌な予感と高揚感が生じてきた。これは商人時代、投機の予感。値が上がる商品を見つけたときだ。

 商品?まさか、俺の値が上がっているのか?



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