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128 人間辞めてる?

 オフィスエリアにあるイトウのラボで、ヒイラギを同席させた僕は自分の手をにぎにぎしながら結果を見た。


「うーむ、まだダメか」

「いやぁ、すまないねぇ」


 外付け【偽装】スキルで僕の内外データ(ステータス)まで見えちゃったわけだけど、イトウが改良中の鑑定機では、そこまでは見えなかった。


「対応する魔法陣とか、その文言・文様とかがわかればいいんだけどね」

「そういうのまでわかる、高性能鑑定機が教皇国にあれば、かっぱらってくるよ」

「よろしゅう~」


 イトウの鑑定機で見えたのは、以下の状態。



ショーディー

年齢:7  性別:男

クラス 迷宮建築家ラビリンスクリエイター  状態:健康

レベル 52

スキル 【環境設計】



そして、僕が【偽装】スキルで自分を見た時の状態。



((転生者)) ショーディー(((善哉翔)))

年齢:7  性別:男

クラス 迷宮建築家ラビリンスクリエイター  状態:健康

レベル 52

スキル 【環境設計】((迷宮の創造と運用が可能))

     ((【偽装】発動中))


体力 2030/2030

魔力 800/800

筋力 390

知力 1860

敏捷 240

耐久 638

精神 500 ((8700))

器用 480

幸運 299


頭 なし

胴 令息の服・上

脚 令息の服・下

足 革のブーツ

装飾 すごくかっこいいドラゴンのネックレス ((義侠なる幻影竜の首飾り))

武装 なし



 となっている。

 精神が馬鹿みたいに高いのは置いておいて、そこそこ無難と思えるステータスだ。まだ他人と比べたことがないので、実際はどうかわからないけれど。


「何回見ても、この精神力は、人間やめているみたいだよね。ミストの攻撃が効かなかったのって、実はステータスのゴリ押しだった?」

「まあ、魔王とか恐怖の大王になってもいいかなって思えるからね。ライシーカの野望さえなければ、常々滅びればいいとか思ってるし。カルマ値みたいなのがあったら、間違いなくカオス側だろうよ」

「ボスは滅びろと思っていても、同時に反対の思考を精密に、建設的に働かせられる。この世界の人間からすれば、変態的理性を含めた数値なのかなぁ」


 僕が書き出したステータスのメモを見つつイトウが失礼なことを言うけれど、僕自身もなんでこんな数値なのかはわからない。


「大抵の人なら、頭の中で感情とは反対のこと考えるくらいできる……と思うよ?」

「少なくとも、この世界の人間じゃ、できない方が多い。ボスが稀人なせい?」

「クラスやスキルに付随する効果、だとは考えられませんか?」

「あー。たしかに、器用さや敏捷性が上がるようなスキルあるもんな。【環境設計】って、つまりド外道ダンジョン創っていいよってスキルだったり?」


 僕の例えに、言い出したヒイラギが苦笑を溢した。僕が魔王プレイ全開で、鬼畜難度な殺意と嫌がらせマシマシなダンジョンを創るとでも思ったのかもしれない。まあ、いずれは創る予定だけど。


「高すぎる数値の謎は置いておいて、クラスやスキルを他人が見ても、このステータス値なら、僕の出身やスキルの建前から、不審がられないんじゃないかな。どう?」

「レベルがすでに逸般人だし、他のサンプルがないから断言はできないけど、私は大丈夫だと思うな」

「俺もいいと思いますよ」


 僕はスキル【環境設計】を、一般人に対しては「望んだ結果をもたらすための知恵」という風に説明している。前代未聞のスキルで、教皇国も誰も詳細を知らないから出来ることだ。

 筋力や敏捷が低くても、体力・耐久・精神が高いのは、「武術の才はないが、ブルネルティ家の子供らしい頑丈さ」って感じで納得させられるだろう。


「レベルごと偽装してもいいけど、他人のステータスを見られないから、加減がわからないうちは、下手なことしない方がいいかなって」

「ボロを出しかねないもんね」


 イトウ、一言多いよ!




 ステータス確認のあと、いくつか【偽装】スキルの検証をしたら、新調した武器を持って、いよいよ旧ニーザルディア領の探索再開だ。

 従者たちの首元、胸元には、僕が用意したブローチがあり、苦労して作って良かったなぁと思う。


「害獣やミストの様子も見たいから、端っこから普通に街道を行くよ」

「かしこまりました」


 ソルがエースの手綱を持ち、スハイルがその隣で警戒。僕とハニシェは箱車の窓から外を眺めることになった。周囲は相変わらず枯れた荒野が広がるばかりで、大地も広ければ空も広い。


「坊ちゃま、この辺りに農村などはなかったのでしょうか?」

「どうかなぁ。古い地図によると、ボーゾン家の領地だったらしいけど」


 ボーゾン家は、現在のエル・ニーザルディアで侯爵の地位を持っている。きっと、大勢の貴族や王族の生き残りを、カルモンディ渓谷へ逃がしたのだろう。


「伯父上に聞いたんだけど、カルモンディ渓谷が塞がったのって、三年前の大嵐で山崩れがあったからなんだって。それ以前は、害獣がいっぱいいて、通る人もいなかったみたい」

「三年前……そんなことがあったんですね」

「なんか、一時はオルコラルトとエル・ニーザルディアの国境が使えなくなるくらい、凄い水が流れてきたんだってさ」


 カルモンディ渓谷は、どうやら元は氷河の通り道だったみたいだ。削られた岩盤の上に土が積もっていったのだけれど、そこに生えていた木が枯れてしまったので、支えきれなくなったらしい。


 カルモンディ渓谷の上流……つまり、旧ニーザルディア領と、エル・ニーザルディアに挟まれた地域は、オーファリエという小国で、ライシーカ教皇国への道がある。

 オーファリエの国土は大きくないが、エル・ニーザルディア以上に希少な鉱石の産地であり、なにより燿石の一大産地として有名だ。教皇国で作られる道具に使われている燿石の約九十パーセントが、オーファリエ産らしい。


(当然、魔法使いもいなければ、稀人召喚も行われていない、と)


 グルメニア教の教典によると、オーファリエは稀人の恩恵を受けられない忌地であるとされ、忌地の人々を救うために、ライシーカが燿石の活用法を編み出した、となっている。


(物は言いよう、だな)


 ライシーカの都合がよいように、この世界が辿った歴史そのものを改変しているようだ。


(……待てよ。この世界は元々、魔法が発展するよう創られていたはずだ。それなのに、なんでこんなに燿石がいっぱいあるんだ?)


 もちろん、抗魔力物質として、いずれは発見されたかもしれない。だけど、石炭のようにザクザク掘れる必要はないはずだ。ライシーカの超技術があれば、きわめてエネルギー効率のいい物質なのだから。


 だがもしも、伝えられている事実の、時間が前後していたのだとしたら?


 思惑と、事象が、逆だったならば?


(燿石活用のために、オーファリエを忌地にした?)


 僕が急に身動ぎしたせいで、ハニシェが驚いてしまった。


「坊ちゃま?」

「なんでもないよ」


 僕は座席に深く座り直し、冷や汗が滲んでいそうな首筋を撫でた。


(まさかな。この惑星を構成する物質にまで手を出せるなんて……)


 ありえない。

 ありえないとは思うのだが、燿石をばらまくことで召喚された稀人の命を削り、短いスパンで召喚儀式を行うことができる。


 それはつまり、この世界の魔力消費を進めることと、符合するのだ。


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