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僕らは第二音楽室に案内された。そこには軽音楽部だけてはなく、美紀子さんもいた。
「遅かったわね」
「ちょっとごたついてね」
松山に美紀子さんが声をかける。その会話から二人がぐるだということも分かった。
「沙紀だけでいいって言ったじゃない」
美紀子さんは少し不満そうに言う。先日大喧嘩した僕らと鉢合わせたくないのは当然の心理だ。
「ごめんごめん。御堂さんがどうしても俺の歌声を聞きたいって言われてさ」
「そういうことで~す!こっちはボーカルに難ありなので、ぜひ聞かせて欲しいです!」
彩華さんはとても笑顔だ。
「あなたね・・・先日あんな失礼なことをしておいて、それはないんじゃない」
「はい!その点に関しては誠に申し訳ありませんでした。今度、お詫びをさせていただきます」
彩華さんが直角になるまで頭を下げる。
「・・・ふ~ん反省しているようね」
「はい。本当にすいませんでした」
「・・・以後気を付けなさい」
「はい」
美紀子さんも謝ってもらえて自分の面子が保てたのが嬉しかったのだろう。優越感に浸った表情をしている。
「まぁそちらのボーカルは沙紀と、岩木君だったかしら?沙紀は私の娘だから問題ないとはいえ、彼のせいで失敗してしまうのは目に見えているわね」
隣にいる沙紀は笑顔でいるだけだ。特に何かいうわけでもなくただただ笑顔。逆に不気味だった。
「それじゃあ聞かせてあげましょう。みんな準備はいい?」
「「「はい」」」
美紀子さんの音頭で軽音楽部と松山が準備に入り、演奏が始まった。
ベース、ドラム、ギターとギター兼ボーカルの松山の四人組だ。
「うまいわね・・・」
ベース、ドラム、ギターのうまさが半端ない。うちの超人達がどれだけ天才だろうと、二年、三年、かけて演奏をずっとしている人間の凄みは半端なかった。
沙紀のつぶやきが通じたのか松山が沙紀の方をみてウインクをしてきた。
「お前じゃねぇよ・・・」
沙紀は小声でツッコミをいれる。沙紀のつぶやきはとなりにいる僕くらいにしか聞こえないはずだが、耳がいいのもいいことばかりではないんだなと思った。
ただ、松山の声が邪魔だ。
他の人たちの演奏を邪魔するような、とにかく声が大きい。良い声なのは確かなのだが、そんな大きい声で歌わなくてもいいだろう。
しかも所々音が外れている。これじゃあ聞いている方を不快にさせるのではと思ってしまう。
もしかしたら沙紀がいるから、力が入っているのかもしれない。美紀子さんを見ると、若干目元を抑えていた。
そのまま音楽が続き、軽音楽部の演奏は終わった。
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僕らはパチパチと手を叩いた。
結局、超絶技巧は松山によって破壊されてしまっていた。まぁそれでも悪くなかった。すると、美紀子さんが出てきた。
松山のことを注意するのだと思う。本気を出していないとはいえ、やり過ぎだと思う。
「あんたたち!もっと優斗君の声に合わせなきゃダメよ?せっかくの美声が無駄になってしまうじゃない」
「え?」
僕は驚愕で声が出なくなった。松山じゃなくて軽音楽部の人を怒るのかと。
「す、すいません」
「全く・・・これじゃあ優斗君がかわいそうだわ・・・」
やれやれとこれ見よがしに見せてくる美紀子さん。明らかに怒るポイントが違うと思うのだが
「いやぁ素晴らしい演奏でしたね~」
彩華さんが会話に割り込む。
「全然よ。貴方たちにはレベルが高く感じられるだろうけど、これじゃあパーフェクトにはほど遠いわ」
本気で松山が良くて演奏が悪いと思っているようだ。
「私の伝手で外部から呼んでこようかしら・・・」
「「「っ」」」
軽音楽部の人たちが苦虫を嚙み潰したような顔をする。
「それが良いと思うよ。正直、俺にレベルが合っていないように感じる」
「い、いや、松山君が自己主張が強すぎるよ!!」
「そうだそうだ!明らかにおかしい!演奏をちゃんと聞けよ!」
「私もそう思います!!」
三人が松山のせいだと言う。
「貴方たち・・・自分たちが下手だからってそれを優斗君になすりつけるってどういうことなのかしら・・・親の顔が見てみたいわ」
「いや、それは」
「それに演奏っていうのはボーカルを引き立たせる道具にすぎないでしょ?生意気なことを言ってないでさっさとうまくなりなさい。一週間しかないのに何をやっているんだか・・・」
「っ」
「何?反論するならあなたたちをクビにするわよ?」
「・・・ごめんなさい」
昔の僕を見ている気分になる。こうやって強権を使うのが美紀子さんやり方だ。
「聞き惚れたわ。素晴らしい演奏でした」
「そうね・・・」
「こりゃあ勝つのが厳しいね・・・」
「ん、端的にヤバイ」
生徒会面々から拍手喝采が軽音楽部に送られた。僕もつられて拍手をする。
「そ、そうか///」
「ええ。素晴らしかったわ」
「当たり前だろ。演奏の酷いところは俺がカバーすればなんとかなる。なあ美紀子さん?」
「ええ、そうね。そちらの生徒会も中々見る目があるじゃない」
松山と美紀子さんは褒められて喜んでいる。
「ええ、本当に素晴らしい演奏でした!ね、明人君」
僕に彩華さんが話を振ってきた。
「は、はい。演奏は凄かったです。ボーカルはもっと練習しないといけないと思いますが」
「「は?」」
僕の言葉に美紀子さんと松山が固まった。
「え、え~と岩木君。あなた今、ボーカルが劣っていると言ったのかしら?」
「あっ、はい。だけど、軽音楽部に入って日が浅いのでまだまだ音程やら声の高さも未熟ですが、改善できる箇所はあると思います」
すると、ぼくの言葉に美紀子さんと松山は大爆笑を始めた。
「聞いた?優斗の歌が未熟ですって(笑)」
「そんなわけがないだろうが。俺じゃなくて演奏が酷いんだよ」
「ええ。生徒会の皆さんは大変ですね(笑)こんな音楽が何かも分かっていない子がいたんじゃ(笑)」
僕は馬鹿にされているらしい。僕の音楽感が悪いのかとわりとショックを受ける。
「それじゃあこちらも練習があるので、出て行ってくださる?私たち、こう見えて忙しいのよ」
「はい、貴重なお時間ありがとうございました!」
彩華さんの号令で僕らは教室を出た。
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「いやぁ、想像以上だったね」
「そうね」
「うん」
「ん」
「ですね」
女子たちは僕では預かりしならない何かをわかっているらしい。僕は美紀子さんに馬鹿にされたのがわりと心臓にぶっ刺さっていた。
「いやぁ優君があそこまで酷いとは思わなかったよ。あのおばさんがいるせいで余計に人の言うことに耳を傾けなくなっちゃったんだね~」
「そうだね~サキサキのお母さんってヤバいね」
「すいませんうちのゴミ母が・・・」
「むしろ沙紀が心配よ。あれが母親って・・・同情するわ」
「同感」
廊下で好き放題いいまくる生徒会メンバー。
「明人の一言。めちゃくちゃ面白かった」
「え?」
由紀さんが僕の方を見てきた。
「あそこでナチュラルに煽れるのが明人君の面白いところだよね~」
「私は笑いを堪えるのが大変だったよ」
僕はまた何か変なことを言ってしまったのだろうか。
「明人、貴方のことだから、あのババアの言うことを気にしているんでしょ?」
「うっ」
図星だ。
「あのババアのいうことは基本的に嘘。むしろ明人の言うことの方が正しいのよ」
「そうなのか・・・?」
「アレが可笑しいのは事実だし、演奏が素晴らしいのも事実。私の彼氏なんだからもっとしゃんとしなさい」
「う、うん」
「最後の惚気いらない」
「非モテはだま・・・すいません何でもないです」
沙紀は最後まで言葉を言わずに黙る。先輩方の笑顔の圧力に屈したようだ。
『重要なお願い』
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