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「おい、岩木」
「何?」
放課後、松学祭がもう一週間前に迫っている中で、松山に話しかけられた。
「今日、俺が歌っているところを見せてやるから、沙紀に第二音楽室に来るように言っておいてくれ」
「いや、僕ら忙しいんだけど・・・」
「は?お前が忙しいわけがないだろうが。それに俺は沙紀に疲れを取ってほしいから、俺の美声を聞かせてやろうと思っているんだよ。さっさと沙紀に伝えてこい」
なんて一方的に言われてしまった。松山はそのまま第二音楽室の方に向かったらしい。
「まぁ伝えなくていいか・・・」
沙紀に伝えると嫌な顔をされそう。それに僕らは暇じゃない。有志の準備はもちろんだが、他にやることがたくさんあるのだ。
とてもじゃないが、松山の下に行くのは時間の無駄だ。僕はスルーすること覚えた。
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「きっつい・・・」
花蓮さんが机に突っ伏す。あのいつも元気いっぱいの花蓮さんが、だ。
「同感」
由紀さんもだ。先輩方でもやることが多くてキツイらしい。
(生徒会の超人たちですら参らせる量ってどうなってんだよ・・・)
まぁそういう僕も疲れてはいるんだけど、あの一か月を乗り越えた僕にはなんとかこなせる量ではあった。
「明人、体力、お化け、いてくれて、サンキュー」
由紀さんは机に突っ伏しながらぐっとサインを僕に向けてきた。僕はハイと軽く頷いた。こういう時にどうこたえるのが正解なのだろうか。
「そうでしょそうでしょ!明人君を見つけた私を崇め奉れ!」
彩華さんが胸を張る。僕以外の人が彩華さんの言い分に腹が立っているらしい。
「明人を一番最初に見つけたのは私です。そしてテストが終わった瞬間に生徒会にぶちこむ予定でした。なので私が一番です。残念でした。」
「私も大概な言い方したけど、沙紀ちゃんのいい方が一番イラつくね☆」
うんうんと頷く。もちろん僕もだ。
「ちょっと!彼女が傷つけられているんだから、私を庇いなさい!そして、私の頭を撫でて癒やしなさい!」
「後半が願望の垂れ流しなんだよなぁ・・・」
沙紀の相変わらずの沙紀っぷりで癒される。なんか生徒会にいるときは沙紀の残念な姿が見れるから新鮮だ。
「ん?何かしら?」
「いや、生徒会でいじられている沙紀って可愛いなって」
「ちょっ///」
「あっ」
沙紀が照れる。僕も自身の恥ずかしい言葉を思い出して赤くなる。
「はいはいご馳走様でしたぁ~」
「初めて明人を斬りたいと思ったわ」
「砂糖を口につっこまれた気分だよ」
「私はこの寂寥感とイラつきを怒りに変えて、仕事を終わらせる」
「「っ」」
先輩方の言葉で現実に戻る。やさぐれたその顔つきに僕たちはまた恥ずかしくなった。なんて居心地が悪い空間なのだろう。
誰かこの空気を変えてくれ!
「失礼します」
ガラっと生徒会室が開く。そこには松山がいた。
「優君どうしたの?また迷惑でもかけにきたの?」
彩華さんがイライラしながら、松山に声をかける。すると、松山はあざ笑うかのように、
「ふっ、好きな男に絡んでもらいたい女子小学生かよ。御堂さん」
と言った。
彩華さんの眉間がブチ切れる音が聞こえた。
「それより岩木、お前沙紀に伝えなかったのか?」
「あっ」
わざと忘れてた。
「は~、これがうちの学園の庶務かよ。本当に今の生徒会役員は使えないな」
やれやれのジェスチャーを取る。彩華さん以外の生徒会役員が全員キレた。そんなことを知らずに松山は沙紀に話しかけた。
「沙紀、疲れてるだろ?」
「ええ、どっかの誰かさんのせいでね」
「おい、岩木・・・もっと沙紀をちゃんとサポートしろよ。全く・・・俺なら沙紀の負担を取れるのに・・・」
「お前のせいだよカス野郎」
「だそうだぞ?」
(会話が酷くかみ合わない・・・)
松山は自分への悪口を全部僕へとなすりつけてきた。
「沙紀、今から俺が癒やしてやるから第二音楽室に来い」
「遠慮します」
「遠慮すんなって。俺たちの仲だろ?」
「由紀さん、肩を揉んであげましょうか?」
「ん、お願い」
「あっ、サキサキ!私もお願い!」
松山と会話する価値がないと思った沙紀は逸らすどころか松山を亡き者にした。流石の松山も無視されてしまったら沙紀と話すことができない。
そうなると、標的になるのは、
「おい岩木!余計なことをすんな!」
(ですよね~)
僕に標的が変わるのだ。こういう時は嵐が過ぎるのを待つしかない。と思っていたが珍しく凜さんが声をかけた。
「それで松山くんは何の用があってきたの?」
凜さんは僕の方を見ていた。たぶん助けてくれたのだろう。
(良い人すぎる・・・)
僕が感謝していると、
「僕らの腕前を見せてあげようと思いまして」
「腕前ってバンドのこと?」
「ええ、そうですよ」
意味が分からないという顔をしている凜さん。
「僕ら、いや、僕がボーカルをやるのです。しかも美紀子さんという最高のボイストレーナーを携えてね。だから、僕がどれだけお遊戯の生徒会と差があるのかを教えてあげようと思いまして」
「な、なるほどね」
(要するに舐めプか)
まぁ松山の声は普通に聞いていても全然いい声だと思う。だから歌がうまいのはなんとなくわかる。
「それいいじゃん!ぜひ教えて欲しいな~」
彩華さんが笑顔で言った。さっきまでキレていて一言もしゃべらなかった彩華さんだったが・・・いや、なんか企んでいる時の顔をしている。
「ふっ、仕方ないなぁ。本当は沙紀だけに特別に聞かせるつもりだったけど、そこまで頼まれたら、みんなに聞かせてあげるよ」
「うん、ありがとね~」
僕らは敵地である第二音楽室に向かった。
『重要なお願い』
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