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いつも読んでくださってありがとうございます!
「今日は何か食べに行かない?」
「あら?どういう風の吹き回しかしら?」
「いや、ただ単に夕飯の準備をするのがきつくて・・・」
「そうね・・・」
僕たちは激務を終えて、家路についていたが、もう何かを作る気になれない。
「沙紀は何か食べたいものとかある?」
「う~ん、そうね・・・」
あごに手を添え、探偵のように考える。しかし、あまり思いつかないらしい。
「どれが一番明人と食べさせ合いっこができるかと考えていたのだけれど、中々思いつかないわね・・・」
「外でそれは勘弁してください・・・」
(沙紀らしいっちゃ沙紀らしいけど・・・)
どうするかなぁと考えていると、ラーメン屋が見えた。しかも≪激辛ラーメン≫というのぼりがついていた。
僕は名案を思い付いた。ラーメンだったら沙紀と食べさせ合いっこをすることはないのではないだろうかと。
ラーメンでそういうことをするなんて聞いたことがないから、これなら食べることに集中できる。激辛とついているが幸いなことに僕は辛い物が苦手じゃない。
「沙紀、あそこのラーメン屋に行かない?」
「ん?」
沙紀がラーメン屋を見た。そういえば断られることを全く考えてなかったけど大丈夫だろうか。
「いいわよ」
幸いなことに沙紀は快く快諾してくれた。
「よかった・・・」
「何が?」
「いや、断られるんじゃないかと」
嘘は言っていない。
「まぁ普通の女だったら断っているわね。私は明人が好き好き大好きだからどこに行こうがついていくつもりなの」
「そ、そう///」
普通に照れるからやめてほしい。僕たちはそのままラーメン屋に入った。
「いらっしゃい!何名様で?」
「二人です」
「お座敷のほうにどうぞ!」
僕たちは店員に促されるままに座敷に座った。掘りごたつになっていて足をそこにいれる。足を伸ばせるので個人的に掘りごたつは好きだった。
そして、メニューを見る。が、どれも辛いものだらけだった。辛子が入ってないのが一つもなかった。
「そういえば沙紀は辛い物は平気なの?」
「そうね。好きな部類に入るわ」
「よかった。嫌いって言われてたらどうしようかと思った」
僕はほっと一息つく。沙紀は苦笑した。
「そもそものぼりが出ているのだから、嫌いだったらその時点で言っているわよ」
そう言われてしまえばそうだ。僕と沙紀は一つしかないメニュー表を一緒に見る。
「僕はこのおススメの【激辛担々麺】でいいかな」
「私は【北極ラーメン】でいいわ」
「え?それって一番辛いやつじゃ・・・」
「ええそうよ。私好きなのよ」
「そ、そうか」
沙紀は僕よりも辛口党らしい。
「それなら店員さんに頼もうか」
「ええ」
僕は店員さんを呼び、そして、注文をしていく。お冷を持ってきてもらって僕と沙紀はラーメンができるのを楽しみに待つ。
沙紀も僕も疲労困憊なのか口数は少ない。スマホを眺めて時を待つ。
「っ~~」
僕の足を何かが撫でていた。犯人はもちろん沙紀だ。ニーソで僕の足を撫でられるが、その感触に僕は声が出そうになる。
「沙紀、や、めて」
当の本人は涼しげな表情をしながらスマホを見ていた。見えないところでは手を出す、いや、足を出してきているのに、上は完全なポーカーフェイス。
周囲からしたら僕の様子がおかしいと思われているのだろう。すると、僕のスマホが震えた。
「感じている明人、可愛いわよ?」
沙紀を見ると一瞬ニヤリとしたのが見えた。僕はそのままラーメンが来るまでいじられ続けた。
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「はあはあ」
「・・・明人どうしたの?お腹でも痛いのかしら?」
(どの口で言ってるんだよ)
流石に食事中に攻撃を仕掛けてくる気はないらしい。僕は疲労困憊だった。
「はあ、大丈夫だよ。それよりもラーメンを頂こう」
「そうね」
僕たちは激辛ラーメンに手を付ける。うん美味い。舌の上で辛さの花火が弾けて痛い。だけど、その中に旨味があり、辛さと旨味が絶妙にマッチしていた。
僕は一瞬で汗まみれになった。それでもラーメンを啜る動きは止まらない。
「明人、これを使いなさい」
「ん?」
前を見ると、沙紀が僕にハンカチを差し出していた。当の沙紀は【北極ラーメン】を食べても全く汗をかいていなかった。
辛さに強いというのは本当らしい。
「ありがとう」
「ええ」
僕と沙紀の間にはラーメンを啜る音だけが支配した。
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「ふぅ、美味かった」
僕はお腹いっぱいになった。美味しいものを食べられたので満足感でいっぱいだった。
「そう。良かったわね」
沙紀が僕の方をみて微笑んでいた。沙紀はまだ半分くらいしか食べていなかった。
「沙紀、ゆっくり食べてもらっていいからね。僕はいつまでも待つからさ」
僕はそういってスマホを取り出そうとするが、
「いえ、もうお腹いっぱいで・・・」
沙紀は申し訳なさそうに言ってきた。まあ女の子にあれだけの量を食べさせるのは酷か。
「それなら残し「明人、食べてもらえないかしら?」え?」
沙紀は僕のセリフを遮って、僕にラーメンを食べてくれと提案してきた。僕はその真っ赤な北極ラーメンを見て、うろたえる。
「残すと、料金が倍になるらしいのよ・・・だから食べてもらわないと」
「マジか・・・」
沙紀が指を指した方向を見ると、確かに書いてある。
「それなら食べないとだけど、辛そう・・・」
「一口食べてみたら?」
「うん」
僕は麺を一つ啜る。
「っ~~~~~」
(痛い痛すぎるわ!!!!)
辛いとかそういう次元じゃない。もう爆弾を口の中に放り込まれた気分だ。正直これはヤバイ。これを半分喰ったって沙紀は化け物じゃないか。
「何か失礼なことを考えていそうね?」
「いや、別に」
これは料金を倍払うしかないような気がしてきた。僕が覚悟していると、沙紀が名案を思い付いたかのように、言ってきた。
「それなら、私が辛さを軽減する方法を実践してあげるわ」
「そんな方法があるなら早く教えてくれ・・・」
僕は恨みがましく沙紀を見る。僕の視線をどこ吹く風と受け流し、沙紀はラーメンをお玉に乗せる。そして、フーフーと冷ます。そして、
「あ~ん♡」
あ~んをやってきた。
「・・・沙紀、それじゃあ味は変わらないよ」
僕は冷静に返す、が、理屈が通じないのがお姫様。
「今回は特別。私がフーフーしてあげたんだから辛さは半減しているはずよ」
本気でそう思っているらしい。物凄く笑顔だ。
「いや、だけどさ「もう!じれったいわね!」んぐ!」
そのまま口にお玉ごと突っ込まれた。僕はそのまま咀嚼した。
「どう?甘くない?」
沙紀は僕に聞いてきた。そんなバカなことがあるかと言おうと思った。
「・・・・辛くない」
「でしょう?」
悔しいことに沙紀の言うとおりだった。そのまま僕は沙紀に食べさせてもらってなんとか感触できた。
「あの空間見てると激辛ラーメンがスイーツになるんだが・・・」
「リア充爆発しろ!」
「一番辛いやつを頼む!口の中が甘ったるくて仕方がない」
「これからはリア充の出入りを禁止しようかな・・・」
そんな声は僕たちの耳にはまったく入ってこなかった。
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