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いつも読んでくださってありがとうございます!

「私は水本沙紀の母親の水本美紀子と言います。いつも娘がお世話になっています」


美紀子さんがこの生徒会に来訪してきた。僕は何が起きているのか分からない。けど、いい予感はしなかった。


「沙紀ちゃんのお母さまでしたか。いつも娘さんにはお世話になっています。私は生徒会会長の御堂彩華です」


彩華さんが代表してあいさつをしてくれる。


「副会長の岸田凜です。今日はどういったご用件でいらっしゃったんですか?」


凜さんが彩華さんの隣で美紀子さんに尋ねる。


「少し長話になりそうなので、座っても?」

「あっ、はい、どうぞ」


僕の正面に美紀子さんと松山が座る。一瞬美紀子さんが僕を見る。その視線は昔の蔑みの視線と同じだった。


「喉が渇いたのでお茶でもいただけるかしら?」

「は、はい」


明らかに僕に言っていた。口調は穏やかだが、気が利かない僕に怒っているのが分かる。お茶を汲みに沸いてあったポットからお湯を出して、湯飲みにいれる。が、


ガシャーン


「っ!」


あまりの緊張で僕は来客用の湯飲みを割ってしまった。


「す、すいません」

「いいよいいよ。それよりアッキー大丈夫?」


花蓮さんが僕を覗き込むように僕を見てきた。心配をかけてしまった。


「どんくさい子(ボソ」

「っ」


小さい音。けれど僕だけには絶妙に聞こえてきてしまった。聞こえなかった振りをしようと僕は割ってしまった湯飲みの破片を集める。


「それで今日は何のようなのかしら?忙しいから早く帰ってほしいのだけれど」


沙紀が美紀子さんに問い詰める。さっさと用事を言って帰れといった雰囲気だった。


「沙紀、母親に対して、その口調はよくないんじゃないか?」

「クソばば、じゃなくて、母さんを相手にしている暇はないの。さっさと用件をいいなさい」


沙紀は松山を丸っと無視。美紀子さんに早く続きを話せと強い口調で言う。


「そうね。それじゃあ単刀直入に言わせてもらうわ」


美紀子さんは一拍置いた。そして、


「貴方たちは生徒会にふさわしくありません」

「「「「は?」」」」


笑顔でそんなことを言ってきた。湯飲みの破片を片付けていた僕の手も止まってしまった。


「ええ~と、厳しいお言葉ですが、どのような点でですか?」


彩華さんがアルカイックスマイルを維持しながら美紀子さんに尋ねる。


「はあ~、本当に無自覚なのね。この学校の生徒会長ってこの程度なのかしら・・・本格的に夫に相談しなければならないのかもしれないわね・・・」


これ見よがしにため息をつく。これには生徒会の面々も流石にイラついたらしい。水本家は人をキレさせる天才なのかもしれない。


「その子よ」

「え?」


僕が指を差される。ここで僕の話が出てくるとは思わなかった。


「そこの岩木明人君が私の息子の優斗よりも劣っていると判断されたことが何よりもおかしいことでしょう?」


生徒会の先輩たちは全員固まってしまった。が、いち早く沙紀が回復した。


「何を言い出すかと思ったら、そこの愚兄が明人よりも優れていいるですって?」

「ええ。後、優斗君に向かって愚兄なんて言うんじゃありません」

「そんなカスのことはどうでもいいのよ」

「なっ」

「さっさと理由を言いなさい」


松山が愚兄と言われてショックを受けているが、沙紀にとってはどうでもいいらしい。


「はあ、本当に口が悪くなって。これもこの生徒会にいるからかしら・・・」

「この!」

「はいはい、沙紀。チャック」


由紀さんが沙紀の口を抑える。


「私としては明人君を庶務に任命するにあたって、厳正な審査を行ったつもりです。明人君は学年一位の成績をおさめ、優君、じゃなくて優斗君との戦いに勝って、今この場にいます。現に誰よりも活躍してくれていますよ」


彩華さんが淡々と美紀子さんに言う。が、


「学年一位ね~、それは沙紀から教わったからでしょう?それに厳正な審査と言っても、え~と確か生徒会の三人に審査してもらったのよね?」

「そうだよ、義母さん」


沙紀が松山に唾を吐きそうだった。ちゃんと親子関係を築けているのか・・・


「その三人の審査も実は賄賂を使ったんじゃないの?」

「「「は?」」」


予想外過ぎて、僕を審査した三人は驚きを通り越して呆れていた。


「書記の勝負だって、議事録をすべて覚えたとか岩木君が言ったらしいけど無理にきまっているじゃない」


美紀子さんは由紀さんを見た。


「広報の仕事もそう。この子は気を使えないわよね?現に私が入ってきてからも全くお茶を用意するといった素振りを見せなかったじゃない」


美紀子さんは花蓮さんを見た。


「最後は副会長戦で生徒会のストッパーとして批判の役割を担うだったかしら?どんくさい岩木君がそんな鋭いことをできるわけがないでしょ?」


美紀子さんは凜さんを見た。


「それに、この子は四月中、ずっと寝ている不良だったらしいじゃない。そんな子がたまたま一位を取ったくらいで、ずっと品行方正で模範生であった優斗君が選ばれないなんておかしいわ」


沙紀と彩華さんに向かって言いきった。


僕としては言い返したい箇所がたくさんあった。それでも美紀子さんに滔々と言われてしまい、僕に言い返す気力はなかった。


「それで何が言いたいんですか?」

「簡単よ。岩木君をやめさせて、優斗君を生徒会に入れなさい。それができなかったら、生徒会を私が推薦した人間に入れ替えてもらおうかしら」

「ちっ」


沙紀が舌打ちをする。松山は僕を下品な視線で見てきた。さっき自動販売機で言っていたのはこういうことだったのかと。


「もちろん優斗君をいれてくれるんだったら、まだ人を見る目があったとこのままの体制でやってもらうわ」


完全な独裁。美紀子さんは理事長夫人としての権力を全力で行使しようとしてきた。


「なるほど、生徒会の存続を願うなら明人君をクビにした方がいいですね」

「ええ、物わかりの良い子は好きよ」

「っ」


まぁ当然だよな。僕がいなくなれば解決するんだから。この場所は居心地が良かったけど、仕方がない。


美紀子さんも彩華さんが物わかりの良さそうな子だと分かって笑顔になる。


「そうですね」

「それじゃあ岩木君をクビにする方向で「んなわけねぇだろタコ」え?」

「「「「え?」」」」」


松山と美紀子さんは固まった。僕たちもだ。声のした方を見ると、彩華さんが深い笑顔をしていた。


「冗談も休み休みにしろ。てめぇらの気色悪い陰謀と思い込みに巻き込まれてやるほど私たちは暇じゃねぇんだよ。さっさと帰れやモンペ&カス」


右手で作ったぐっとサインを下にして彩華さんは言い切った。



『重要なお願い』

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[一言] この糞親子さっさと退場して欲しい
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