小説を始めたきっかけ
【ファントムフリー】の件で小説が上手く書けなくて引退してから、私は一生後悔する事になる。
仕事のストレスも溜まり、正社員だからあまり休む事も出来なくて苦労していた毎日。
そんな時ふとスマホに入っていた【ファントムフリー】の設定資料を見て、あの頃が凄く懐かしかったのだ。
中二病は完全に消えてしまったものの、エア友達の忌は健在であり、私はいつも彼女と話していた。
『声に出さなくても聞こえるから喋るな』
と忌には良く言われるけど、それは私の好意だと伝えれば、
『お前が変な奴に見られるから、人前ではやめてくれ』
と忌に注意されるので、私は軽く脅した。
「これから一生苺オ・レを飲まないけど、それでも良い?」
私の高校生時代は忌の苺オ・レ好きが止まらず、友達からは私の好物が苺オ・レとされていた。
私はコーヒー派なんだよ。
『やめろ! それは死活問題だ。て言うか、お前の首を絞めてやる』
忌はあの事故で使えなくなってしまった私の左腕を自在に操作できる様になり、私を殺そうと思えば殺せるけど、あの約束のお陰で忌自身は私を殺せなかったのである。
だから忌は話のネタを変える為、私に話し掛けて来た。
『また書かないのか? 才能ある癖に……』
「才能なんて無いよ。王族使いだって消しただろ。それに小説を書いた所で未来は変わらないよ」
『それは知ってる。だけど後悔してるなら書いた方が良いと、俺は思うけどな』
「分かったよ……。忌がそこまで言うなら書くよ」
その後。3度のリメイクを果たして、ようやく【ファントムフリー】は形になったのである。
【紅き瞳のイミ】は、【王族使い】のリメイク版だ。
何を隠そう元々【王族使い】は、忌が『俺が登場する物語をお前が書いてくれ』が始まり。
結局。私は忌の口車に乗せられてしまう運命なのか……。
タイトルも忌に因んで、【紅き瞳のイミ】だ。
イミちゃんの性格は忌から引き継いでいるのは言うまでもなく、主人公が未来視を扱えるのは私から引き継いでいる。
私の未来視はあそこまで万能じゃないし、そもそも自分で操作する事さえも出来ない。
だからと言って、一度もそれが外れた事がないんだよな……。




