何故、中二病になったのか
私は子供の頃から泣き虫で、その頃から怪我ばっかりしていた。
元々身体は弱かったけど、だからと言って同級生に虐められる事は特になかった。
そして小学生時代。私は兄の手によって、一度生死を彷徨う程の事故が発生してしまったのである。
それは祖父との魚釣り。場所はテトラポット。
原因は兄がテトラポットから滑り、目の前の私を突き落としたのだ。
その後。兄は親に怒られてから謝罪し、私は命に別条はなかった。
だが中学生時代に私は気付いてしまった。
そう。私はその事故の後遺症で左腕全体が使えなくなってしまっていた。
その代わり。その事故の後、私は夢の中で不思議な体験をした。
真っ白の何もない世界で、一人の黒いフードを被った子供が白い球体を静かに眺めていた夢。
その子供は私の友達でも、身内でも、顔見知りでもない赤の他人だ。
それに私が挨拶を交わしてみても、その子供は私の言葉を全く理解出来ていないようだった。
そして私はその子供が何故か孤独に見えてしまい、手を繋いで一緒に遊んだ。
と言ってもそれは私の独断専行だ。
本当に何もない世界を冒険して、その子供をどうにか楽しませたかっただけだった。
その後。夢から醒めて現実世界で起きると、私はまたあの子供がいた、あの世界に行きたがっていた。
次の日の夢で私はまた真っ白の何もない世界に来た。
だけどあの黒いフードを被った子供はいなかった。
そしてその頃から私は、怪我をする程の事故が全くなくなっていた。
そして私は中学生になり、ふとある事に気付いた。
それは夢で起きる事が現実でも起きるという未来視、言わば超能力にでも目覚めたのかと思い、私は中二病を発症した。
中学生時代後半では友達がいるのにも関わらず、私に初めてのエア友達が出来る。
そしてそのエア友達は私にいくつかの質問をして来た。
『夢はあるか?』
「夢はない」
『人生は楽しいか?』
「そこまで楽しくない」
『人間として生まれて、何で楽しくないんだ?』
その頃の私は夢が現実になる未来視で蝕まれ、どうも人生がそこまで楽しくなくて死にたかった。
でもそのエア友達にも話せなくて、一週間過ぎたある日。
私はそのエア友達に全てを話した。
事故の後遺症で左腕全体が使えなくなってしまったこと。
夢の中で不思議な体験をしたこと。
全ての夢が現実になる未来視のこと。
そしてその未来視のお陰で死にたいこと。
そしたらそのエア友達は私に何と言ったと思う?
『俺は人間が嫌いだ。都合の良い勝手な解釈をして、自由に行動している姿を見て。俺も人間みたいに生きたかった。お前の人生が下らなくて本当に死にたいなら、その人生を俺に見せてくれ』
そう言われて私はそのエア友達、忌と約束した。
忌に私の人生全てを見せて共有する約束を。




