手紙
きっかけは盗難にあったトラックを調べていた鑑識が、運転席の前に名刺程度のカードが置いてある事に気が付いた。
手紙のアドレスと思われるドメインを調べた所、海外のサイトと繋がると以下のデーターが転送されて来た、内容は。
拝啓。
ワクチンの持ち主様へ。
ワクチンの返却を希望されるなら以下の手続きをお願いします。
24Kの金のインゴットを1kgで100個用意する事。
インゴットを10枚ずつルイ・ヴィトンのバックに詰めて10個用意する事。
明日の正午にこちらの指定した場所に持って行くこと。
これらを行う意思がある場合、明日の新聞各紙の尋ね人欄に。
準備は出来た十人十色
っと掲載する事。
ワクチンは今の所は適切に保管されているがその後の展開次第ではその限りでは無い。
敬具。
そして、大阪、京都、奈良の10箇所の住所が記載されていた。
その報告を聴いた府警の幹部が。
「犯人は1億円を要求して来た訳だが…そんなに価値があるものなのか?」
その質問に署員の1人が。
「奪われたワクチンなのですが、変異種に対応したもので、米国の皇帝製薬が唯一対抗薬のワクチン開発に成功しており」
そう言うとハンカチで汗を拭いながら。
「日本に初めて入って来た物で、代わりが無いそうです!」
今も国際見本市会場の接種会場では。
「やっとの思いで予約したんだぞ!」
「責任者を出せ!」
「他所から回してもらえよ、まだあるだろう!」
などと言いながら予約券を持った市民が詰めかけてパニックになっている。
帳場を仕切っている幹部が署員を見回すと。
「班を分ける、地取りでの聞き込み、使われた車両の持ち主、病院での被害者の聞き込み、やる事は山ほどあるんだ」
逮捕まで家には帰れんぞ!、幹部のカミナリを聴きながらゴリは。
(着替え…足りるかな……)
そう思いながら煙草が吸いたいと切実に思っていた。