南部
ゴリが病院から退院して来てから最初の夜、緊急連絡が回って来た。
「八尾警察署の管轄で発砲事件発生!」
署内の警官に非常線の通達が走る。
「各員、拳銃と防弾チョキを装備せよ!」
ゴリ達は地下にある装備課に向かうと、番号の書いたプラスチック製のカードを手に取る。
警察署では拳銃は地下に保管されている、勿論のこと制服警官も同じだ。
カウンター越しにカードと拳銃の交換を行うと隣の部屋で防弾チョキのサイズを合わせる。
「ゴリさん…動いて大丈夫なんですか?」
一条 愛がSサイズの防弾チョキを探しながらゴリに声を掛けて来た。
「湿布貼ってりゃ問題無い!」
LLサイズの防弾チョキに腹を収めながら腰のベルトにホルスターを通す。
最新式の装備とは違った、ゴツくて年季の入ったホルスターは。
元は黒かった皮が剥げてテカテカに光っている。
そのホルスターに収まる拳銃はSAKURAでは無かった。
ニューナンブM60、その中でも制服警官用の長銃身タイプの最後の世代で日本全国でも現存する数が少ないタイプだ。
「まだ残ってたんですか!」
愛が目を見開きながらマジマジと見つめる。
「コイツで無いと当たらんのだよ」
ニューナンブの長銃身タイプはシングルアクションで撃った時にその性能を発揮する。
25メートルで5センチ以内のグルーピングを叩き出す猛者が現れる性能は伊達では無い。
ゴリはニューナンブの弾倉が空なのを確認すると、腰のホルスターに収めてから自然体でリラックスする。
部屋の壁には着けた装備を確認する為に、全身が映る鏡が置いてある。
その前まで来ると右手がホルスターに伸びた。
抜きながら撃鉄を起こすと銃身がホルスターから出た位置で前に向ける。
愛の目には、ゴリの右手がブレるとカチリっと撃鉄の起きる音がした瞬間、銃身が前に向いていた。
この間わすか数秒、長銃身タイプなのにだ。
数回繰り返して感覚が掴めて来ると、ゴリは弾倉に5発の38スペシャルの実弾を詰め込む。
ホルスターにニューナンブを仕舞うと、愛に行くぞと声を掛けながら部屋を出る。
南部と名が付く拳銃が日本で生まれて1世紀以上。
最後の南部が今宵、夜の街に出る。




