身元
射殺された2人の襲撃班の身元は運転免許証からすぐに割れた。
大阪府警に連絡して自宅と会社に家宅捜査の要請をする。
青森県警本部長を横目で見ながら、公安五課の面々は2人の写真を見比べていた。
「違うな…歳が若すぎる……」
追っていた顔の無い男とは違う男達だと確認すると。
「大阪へ移動する」
そう言うとその場を後にした。
青森から大阪までは高速道路を使えば13時間あれば着く。
後部座席の窓と後ろのハッチの窓を塗りつぶした公安五課のハイエースは一路大阪へ向かった。
ハイエースの運転をしている部下が。
「大阪で何から当たります?」
着いてからの行動を確認すると。
「最初の襲撃班は身長180センチを超える大男だ、奴じゃ無い」
車内のメンバーが頷くと。
「金を強奪した奴らの中に1箇所だけ成功したのが居る」
他の場所と違って、そこだけは野次馬が居なかった。
「もしもだ…金を受け取ったのが犯人だとすると」
撃たれた警官が奴を見ている可能性がある。
「交代で仮眠を取れ、大阪に着いたら直ぐに動く」
青森でのワクチン強奪犯の逮捕が報道されたのはその日の午後、そしてそれを病院で見たゴリは。
「退院させてくれ!」
病院の看護師に直談判すると、巨大な浣腸器と見間違いそうな注射器を持った看護師が。
「三本打ちます?針もぶっといですよ?」
怖い笑顔で、ゴリの目の前で注射器を振りだした。
ゴリが青い顔で後ずさると。
「今すぐベッドに帰りなさい……お尻に打ちますよ?」
そう言われてゴリは、回れ右して病室に飛び込んだ。
「横暴だ!…課長に連絡して」
看護師に見つからない様にスマホの電源を入れると上司に連絡する。
「ゴリさんか?検査が終わるまでは出てくるなよ?」
そう言うと、返事も聞かずに通話が切れた。
「天は我を見放した…」
そう言うとゴリは布団を被って不貞寝しだした。
翌朝、朝食が終わって検査待ちの時間に面会が来た。
「スンマセンなこれから検査なのに」
少しだけ付き合ってください、そう言うと男は、スーツの内ポケットから写真を取り出した。
バスに乗り込もうとする男のスナップ、白髪で短髪、背は170くらいかボストンバックを片手に持っている。
「見覚えはありませんか?」
そう聞く男の声を聴きながら、ゴリは右手の人差し指と中指を写真に持っていく。
平凡な顔だ、特徴も何も無い。
すれ違えば5分もすれば忘れる様な顔。
しかし、その中で。
目付き、しっかりとした意思が見える目付き。
何処かで見た記憶のある。
目付き。
ゴリは指で目元以外を隠すと、再びマジマジと見る。
ゴリの記憶が蘇る。
内調五課の面々が見守る中、ゴリがポツリと言い出した。
「…こいつだ……」
そう言うと顔を上げてから。
「俺の腹を撃った後に…笑ってやがった野郎は」
こいつだよ!そう言うと顔の無い男の写真を指さした。




