空港
青森から大阪に飛ぶ国内線の中に1人の男の姿があった。
身長は170センチでやや痩せ型、身につけている服装は目立たず、人混みの中で見失うのを前提とした様な服装。
歳の頃は40代か50代、短髪で頭に白毛が混じっている。
伊丹空港への短いフライトを終えると男は伊丹空港と阿倍野橋間のリムジンバスに乗り込んだ。
20分に一本出ているバスは乗客もまばらだ、非常事態宣言の為か人の移動は少ない。
これが諸外国だと、街角に軍や警察が出て武装した市民との睨み合いが日常の国もあると言うのに。
バスが阿部野橋に着くと男はJR環状線に乗り込んだ。
各駅停車の電車が鶴橋駅に着くとホームに降り立つ。
大阪の鶴橋駅に降り立つと独特の臭いがする。
ここは焼肉屋の比率が高い……そして在日の多いコリアンタウンでもある。
大阪生野区、日本で1番外国人の比率が高くその数は東京のおおよそ2倍。
そのほとんどが在日朝鮮人、コリアンの2世や3世世代。
日本の学校とは別に在日朝鮮人学校を作り。
制服にチマチョゴリを着て朝鮮人のアイデンティティを育みながら日本で暮らす。
日本に帰還すれば良い。
そんな声を無視してまでも公立と政府が認めない学校に子供を通わせる在日の人達には。
日本は母国と言う考え方は無い。
生野区にある府営の集合住宅。
日本の税金を使い、コンクリートで出来た5階建ての集合住宅。
しかし日本人は住めない。
在日の人達は安い家賃で入れるが日本人はお断り、そんな住宅の一つD棟の501合室。
エレベーターの無い集合住宅の5階まで上がると1番端のドアのチャイムを鳴らす。
中から反応があった。
ドアチェーンを掛けたまま長身の男が顔を出すと北の言葉で。
『ケン中尉?』
そう小声で尋ねて来た男の右手が身体の後ろに隠れているのを確認しながら頷く。
チェーンが外されて招き入れられた。
中に入ると長身の男が左手で器用にドアチェーンを掛けて施錠する。
その右手にはブローニングハイパワーが握られていた。